政府・官民連携による海外展開推進の最新動向

日本の防災技術の海外展開は、政府の明確な方針のもと、官民連携によって強力に推進されている。2026年2月20日に行われた高市内閣総理大臣の施政方針演説では、令和の国土強靱化対策の一環として「防災技術やインフラを積極的に海外に展開していく」方針が明確に示された。

また、2026年3月には、災害対応の司令塔となる「防災庁」の設置法案と関連法案の改正案が閣議決定された。これにより、徹底した事前防災の推進と、発災から復旧・復興まで一貫した災害対応体制の強化が図られる。 特に、経済安全保障推進法の改正案も同月に閣議決定され、経済安全保障上重要な海外事業を行う日本企業に対し、国際協力銀行(JBIC)による劣後出資など、国が資金面で後押しする新たな制度が設けられることになった。 これは、日本企業の海外ビジネスを資金面で支援し、技術的な優位性を築くことを目的としている。

官民一体となった取り組みの象徴として、内閣府が事務局を務める「防災技術の海外展開に向けた官民連絡会(JIPAD)」が挙げられる。2019年8月に設立されたJIPADには、2025年3月25日時点で製造、建設・エンジニアリング、調査・設計、商社、通信、保険など多様な分野から210を超える企業・団体が参加しており、官民が連携して日本の防災技術の海外展開を促進し、世界各国の防災能力向上を主導している。

最新の防災技術と海外市場でのニーズ

日本の防災技術は、その高度な信頼性と実用性から海外市場で高く評価されており、特に新興国を中心にニーズが拡大している。2026年3月27日にジェトロが開催した企業交流イベント「防災分野海外市場開拓(新興国)ラウンドテーブル」では、「平時でも使える防災製品」に大きな商機があることが示された。 災害が日本ほど多くない海外では、平時でも活用できる多用途性が製品選定の重要な要素となっている。中東やASEAN、インド、アフリカ、中南米といった新興国市場は活況を呈しており、日本の防災技術の輸出機会が拡大している。

具体的な技術事例としては、人工知能(AI)危機管理システム、災害対策音響機器、無人災害対応ロボットなどが挙げられる。 これらの「防災テック」分野は、2030年には約45兆円(約2,981億米ドル)規模に達すると予測されており、日本の技術が世界の防災市場を牽引する可能性を秘めている。 また、2026年4月17日には、日本気象協会と気象庁が「新たな防災気象情報」の広報活動を開始した。 2026年5月から運用が開始されるこの新たな情報は、河川氾濫、大雨、土砂災害、高潮に関する情報が5段階の警戒レベルと対応づけて整理され、住民や企業の避難・事業対応の判断をより分かりやすくするものであり、情報技術の海外展開の可能性も示唆している。

国際協力と具体的な海外展開事例

日本の防災技術は、国際協力の枠組みの中でも重要な位置を占めている。2026年3月には、災害リスク低減とレジリエンス向上を目的とした「第1回グローバルレジリエンスサミット」が設立され、国際的な連携強化が図られている。 また、2026年3月31日には、一般社団法人日本防災プラットフォーム(JBP)が、災害情報プラットフォームを提供するSpectee社のサプライチェーンレジリエンスイベントを紹介するなど、具体的な企業活動も活発化している。

個別の海外展開事例としては、株式会社地圏環境テクノロジーが2025年2月18日にマレーシア国立水理研究所(NAHRIM)と戦略的パートナーとしての協力関係を定める基本合意書(LOI)に調印したことが挙げられる。 同社は、統合型水循環解析システム「GETFLOWS」を活用し、マレーシアの早期洪水警報システムの精度向上や、ASEAN諸国の防災・水資源保全に貢献することを目指している。 過去の事例では、株式会社エヌ・シー・エヌがイタリアに耐震構法SE構法を提供し、地震の多い地域での安全な建築に貢献している。 また、アイディールブレーン株式会社が開発した世界一薄い免震装置「ミューソレーター」は、厚さわずか3mmで機器単体や設置エリアを免震化できる画期的な技術であり、国内外で活用されている。

海外展開における課題と今後の展望

日本の防災技術の海外展開には、依然として課題も存在する。海外市場の特性や社会課題を正確に捉え、現地のニーズに合致した製品開発を行うことが不可欠である。 また、防災用途に限定せず、平時でも利用できる多用途性を押し出した製品開発が、市場拡大の鍵となる。

今後の展望としては、国内外の連携強化がさらに進むことが期待される。2026年5月13日から15日まで東京ビッグサイトで開催される「自治体・公共 Week 2026」は、約350社が出展し、自治体・官庁・公共施設関係者が来場する日本最大級の総合展示会であり、国内外の防災関係者が交流し、新たなビジネスチャンスを創出する場となるだろう。 長期的な視点では、2025年9月に開催された「DBJ防災トランスフォーメーションフォーラム」で議論されたように、防災の産業化と国際ルール形成への挑戦が重要となる。 さらに、2027年のアジア太平洋防災閣僚級会議では、日本の先進的な防災技術がショーケースとして提示される予定であり、国際社会における日本の役割は一層高まることが見込まれる。

Reference / エビデンス