世界経済見通しの下方修正と地政学的リスク

世界経済は、地政学的リスクの高まりと主要国の保護主義的な動きにより、減速の兆しを見せています。国際通貨基金(IMF)が2026年4月14日に発表した「世界経済見通し」では、2026年の世界経済成長率が3.1%に下方修正されました。 この下方修正の背景には、中東情勢の悪化が大きく影響しています。特に、4月13日に米軍がホルムズ海峡の海上封鎖を強行したことで、原油価格は高騰し、世界経済に深刻な影響を与えています。 この影響は日本にも及び、国内の精製所稼働率は過去最低の67.7%にまで急落しました。 世界貿易機関(WTO)もまた、3月19日に発表した予測で、2026年の世界財貿易伸び率が1.9%に鈍化すると指摘しており、世界的な貿易活動の停滞が懸念されています。

米国の保護主義政策と関税動向

米国は、保護主義的な貿易政策を継続しており、その動向は世界経済に大きな影響を与えています。米国通商代表部(USTR)は、16カ国・地域に対する構造的過剰生産能力に関する301条調査を開始し、その書面コメント提出期限が2026年4月15日に迎えられました。 これは、特定の国・地域の産業政策が米国の産業に不利益をもたらしていると判断した場合に、制裁関税などの措置を課す可能性を示唆するものです。また、4月20日からは、過去に課されたIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく関税の還付手続きが開始されます。この還付総額は1660億ドルから1750億ドルと推定されており、企業にとっては一時的な負担軽減となる可能性があります。 しかし、過去の「トランプ関税」の影響は依然として根強く、4月16日のロイター企業調査では、回答企業の22%が「今も負の影響を大きく感じている」と回答しており、米国の保護主義政策が企業活動に与える長期的な影響が浮き彫りになっています。

主要国の貿易政策と多国間貿易体制の課題

主要国の貿易政策は、多国間貿易体制に新たな課題を突きつけています。米国USTRが3月31日に発表した「外国貿易障壁報告書」では、欧州連合(EU)の炭素国境調整メカニズム(CBAM)の本格実施や、中国によるレアアース輸出管理強化が新たな貿易障壁として指摘されました。 これらの措置は、環境保護や国家安全保障を名目としながらも、実質的には特定の産業を保護し、他国からの輸入を制限する効果を持つと見られています。一方、多国間貿易体制の要である世界貿易機関(WTO)は、機能不全に陥っています。3月31日に閉幕したWTO第14回閣僚会議では、電子商取引に関する関税モラトリアムの延長合意に至らず、デジタル貿易の将来に不確実性をもたらしました。 この結果は、多角的貿易体制が「再設計局面」へと移行していることを示唆しており、国際協調の枠組みが揺らぎつつある現状を浮き彫りにしています。

Reference / エビデンス