日本における小型モジュール炉(SMR)研究の国内現状と今後の展望

2026年4月16日、日本は脱炭素社会の実現とエネルギー安定供給の両立を目指し、次世代原子力技術である小型モジュール炉(SMR)の研究開発に注力している。政府の政策動向、主要企業の具体的な取り組み、技術開発の進捗、そして社会実装に向けた課題が複雑に絡み合う中、国内外のSMR開発競争における日本の立ち位置が注目されている。

政府のSMR開発政策とロードマップ

経済産業省は2026年4月8日、次世代革新炉開発ロードマップを発表し、SMRを革新型軽水炉と並ぶ重要な選択肢として位置付けた。しかし、同ロードマップでは、SMRの国内導入は短期的には難しいとの見解が示されている。これは、安全規制の整備や経済成立性、社会受容性といった多岐にわたる課題が山積しているためである。

政府は、2040年までの原子力比率目標達成に向けて、SMRが中長期的に貢献すると見込んでいる。特に、GX経済移行債などの資金支援策を通じて、SMRを含む次世代革新炉の開発を強力に後押しする方針だ。SMRは、その小型化とモジュール化により、建設期間の短縮やコスト削減が期待されており、将来的な電力安定供給の要となる可能性を秘めている。

主要日本企業のSMR開発動向

日本の主要企業は、SMR開発において国際的な連携を深めながら、具体的なプロジェクトを推進している。

三菱重工業は、政府の次世代革新炉開発における中核企業に選定されており、2027年度には実証炉の基本設計開始を目指している。同社は、主要機器を内蔵することで小型化を実現したSMRの概念設計を完了させている。また、三菱重工は、トラックに搭載可能なマイクロ炉の開発も進めており、2030年代の商用運転開始を計画している。

日立GEニュークリア・エナジー(GEベルノバ日立ニュークリアエナジー)は、カナダのダーリントン新原子力発電所向けにSMR「BWRX-300」の主要機器を提供しており、建設が進められている。さらに、2026年3月には東南アジアへのBWRX-300導入に向けた覚書を締結し、国際展開を加速させている。直近の日米首脳会談では、米国へのSMR建設投資として最大400億ドル(約6兆円)規模の投資合意が発表され、日立GEがその中心的な役割を担うことが期待されている。

IHIもまた、米国のSMR開発企業NuScale Powerへの出資を通じて、国際的なSMRサプライチェーンへの参画を進めている。

SMR技術の特性と国内導入への課題

SMRは、従来の大型炉と比較して、安全性、経済性、柔軟性において多くの技術的メリットを持つ。自然循環冷却システムや受動的安全システムなどの採用により、事故時のリスクが大幅に低減される。また、工場でのモジュール製造と現地での組み立てにより、建設期間とコストの削減が期待される。さらに、SMRは発電だけでなく、水素製造や熱供給といった多目的利用が可能であり、多様な産業ニーズに応えることができる。

しかし、2026年4月16日現在、日本国内でのSMR導入には依然として具体的な課題が山積している。最も喫緊の課題は、SMRに特化した安全規制の未整備である。地震などの自然条件への適合性検証も不可欠であり、日本の厳しい立地条件に対応できるかどうかが問われる。発電コストの競争力確保、社会受容性の向上、経済成立性の検証、そして限られた国土における土地利用の問題も、国内導入の障壁となっている。

国際的なSMR開発競争と日本の役割

世界各国ではSMRの開発・導入が加速しており、国際的な競争が激化している。米国ではNuScale PowerがSMR設計の初の設計認定を取得し、中国ではACP100の建設が進むなど、具体的なプロジェクトが進行中である。カナダでは日立GEのBWRX-300の建設が着実に進捗している。

日本企業は、これらの海外プロジェクトに積極的に参画することで、国際的なサプライチェーンにおける重要な役割を担っている。日立GEはカナダ、ポーランド、米国での取り組みを通じて、SMR技術の国際展開を主導している。IHIもNuScaleへの出資を通じて、その技術力を世界に供給している。2035年までにSMRの世界市場規模は、約1.5兆円から2.8兆円に達すると予測されており、日本がこの巨大市場で存在感を示すことは、経済成長とエネルギー安全保障の両面で極めて重要となる。

研究開発機関の役割と最新情報

日本原子力研究開発機構(JAEA)は、SMRを含む新型炉の研究開発において中心的な役割を担っている。JAEAは、高速炉や新型炉に関する国際情報の収集・分析を継続的に行っており、2026年4月10日には2026年3月分の新型炉に関する国際情報が更新された。これらの情報は、日本のSMR開発戦略を策定する上で貴重な知見を提供している。

周辺国の動きも活発化している。台湾の国家原子能科技研究院は2026年にSMR研究計画を始動し、最速で2035年にはSMR電力を供給する目標を掲げている。このような国際的な動向を踏まえ、JAEAをはじめとする日本の研究機関は、SMR技術の安全性、経済性、信頼性をさらに高めるための研究開発を加速させることが求められている。

Reference / エビデンス