日本:水素・アンモニア発電の商用インフラ整備の現状と展望
日本は2050年カーボンニュートラル達成に向け、水素とアンモニアを次世代の主要エネルギー源として位置づけ、その大規模な商用インフラ整備を加速させている。政府は「水素社会推進法」に基づく支援や官民連携による巨額投資を通じて、製造、輸送、貯蔵、利用に至るサプライチェーンの構築を推進。特に発電分野における脱炭素化は喫緊の課題であり、水素・アンモニア発電の商用化に向けたインフラ整備の進捗は、日本のエネルギー安全保障と経済成長の両面で極めて重要な意味を持つ。
水素発電インフラの進展と商用化への動き
2026年4月16日現在、日本における水素発電インフラの整備は着実に進展している。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2026年度「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業」の第1回公募を予告しており、水素製造・輸送・貯蔵・利用の各段階における技術開発を支援し、サプライチェーン全体のコスト低減と効率化を目指す方針だ。特に、水素製造コストを2030年には30円/Nm3、将来的には20円/Nm3以下にすることを目指している。
具体的な取り組みとしては、日立が東京都の公募事業「地産地消型水素ステーション導入促進に向けた共同検討事業」に採択されたことが挙げられる。これは地域における水素エネルギーの利活用を促進する重要な一歩となる。また、日本水素エネルギーは液化水素サプライチェーン構築に向けた第三者割当増資を実施し、液化水素の安定供給体制確立に向けた動きを加速させている。
水素ステーションの整備も進んでおり、2026年時点で全国に約160箇所が稼働している。政府は2030年までに1,000箇所程度の整備を目標に掲げ、普及を後押しするための補助金制度も継続している。世界の電解水素製造供給側市場は、2026年から2032年にかけて年平均成長率(CAGR)20.8%で成長し、2032年には約1,000億米ドルに達すると予測されており、日本もこの成長市場の一翼を担うことが期待される。
アンモニア発電インフラの現状と商用化に向けた課題
アンモニア発電インフラの整備も、商用化に向けた具体的な進捗を見せている。株式会社JERAは、米国における低炭素アンモニアの製造・販売事業に対する融資を受け、日本向け大規模低炭素アンモニアバリューチェーンの実現に向けた取り組みを進めている。これは「水素社会推進法」に基づく拠点整備支援制度における低炭素水素等供給等事業者への認定を受けたものであり、安定的な燃料アンモニアの確保に貢献する。
発電分野では、JERAが碧南火力発電所において、2020年代後半に石炭火力発電でのアンモニア20%混焼を開始し、2030年代には専焼を目指す計画を推進している。これは、既存の火力発電インフラを活用しつつ、脱炭素化を進める上で重要な戦略となる。
輸送インフラの面では、日本郵船がアンモニア燃料船の開発を主導しており、2026年度の就航を目指している。具体的には、2026年11月竣工予定のアンモニア燃料アンモニア輸送船の建造が決定しており、これにより燃料アンモニアの安定輸送体制が強化される見込みだ。アンモニア燃料船の日本市場は、2026年から2032年にかけて成長すると予測されている。
一方で、アンモニア発電の商用化には、燃焼技術の確立、サプライチェーンの構築、コスト競争力の確保といった技術的・経済的課題が依然として存在する。特に、アンモニアの製造・輸送・貯蔵における安全性確保とコスト低減が、今後の普及に向けた重要な鍵となる。
サプライチェーン構築と国際連携の強化
水素・アンモニアの安定供給に向けた国内外のサプライチェーン構築は、日本のエネルギー戦略において極めて重要な要素だ。NEDOは、2026年度「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業」の第1回公募を予告しており、サプライチェーン全体の最適化とコスト低減を目指す。
国際協力銀行(JBIC)は、米国における低炭素アンモニアの製造・販売事業に対し、JERAへの融資を実施している。これは、日本への安定的な低炭素アンモニア供給を確保するための重要な国際連携の事例であり、海外からの調達を強化する動きが加速している。
政府は、水素の導入量目標として2030年に年間300万トン、2040年に年間1,200万トン、2050年に年間2,000万トンを掲げている。アンモニアについても、2030年に年間300万トン、2040年に年間2,000万トン、2050年に年間3,000万トンの導入を目指す。これらの目標達成に向け、政府は今後15年間で15兆円規模の官民投資を呼び込む方針を示している。
国際的な連携も強化されており、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想を通じて、アジア地域における脱炭素化を推進し、水素・アンモニアのサプライチェーン構築を支援している。また、水素・アンモニアの国際的な取引を円滑にするため、国際標準化の取り組みも進められている。「水素社会推進法」に基づき、政府は水素・アンモニアの導入を加速させるための支援制度を整備し、国内外の連携を後押ししている。
Reference / エビデンス
- 2026年最新「水素活用について」後編 〜国内外の事例〜|TOHOBIZNEX
- 2026年度「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業」の第1回公募について(予告) - NEDO
- 2026年度「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業」の第1回公募について | 公募 | NEDO
- 日本水素エネルギー、液化水素サプライチェーン構築に向けた第三者割当を実施 - 新電力ネット
- 日立、東京都の公募事業「地産地消型水素ステーション導入促進に向けた共同検討事業」に採択(2026.4) - 株式会社グリーンプロダクション
- 電解水素製造供給側分析:世界の生産能力・販売量・平均価格動向(2026-2032) | YH Research株式会社 | プレスリリース配信代行サービス『ドリームニュース』
- 3兆円の巨額投資、日本が水素エネルギーに「国運」を賭ける理由 | 馮建棨 | ニュース
- [特集]JERA・低炭素アンモニアバリューチェーン構築への取り組み - 電気新聞
- 燃料アンモニアについて - 経済産業省
- 水素社会推進法に基づく拠点整備支援制度における低炭素水素等供給等事業者への認定について
- 価格差に着目した支援制度における低炭素水素等供給等事業者への認定について~初の日本向け大規模低炭素アンモニアバリューチェーンの実現へ~ | プレスリリース(2025年) | JERA
- 【日本】日本郵船、アンモニア燃料船開発を主導。2026年度の就航目指す。NEDOプロジェクト
- アンモニア燃料アンモニア輸送船の建造決定 | 日本郵船株式会社
- アンモニア燃料船の日本市場2026-2032:製品別・用途別成長傾向と企業戦略 | NEWSCAST
- アンモニア、e-メタン、SAF…次世代エネルギーめぐる苦闘。「水素社会」の実現には課題山積 - 東洋経済オンライン
- 2026年度「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業」の第1回公募について(予告) - NEDO
- 2026年度「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業」の第1回公募について | 公募 | NEDO
- 米国における低炭素アンモニアの製造・販売事業に対する融資 | JBIC 国際協力銀行
- 水素・アンモニア社会実装に向けた 当面取り組むべき課題
- 経産省「水素政策」をやさしく完全解説—目標、支援、サプライチェーン、使い道まで
- 水素・アンモニア政策について
- GX実現に向けた基本方針 参考資料
- 2026年最新「水素活用について」前編 〜国内外の動向・施策〜|TOHOBIZNEX