日本:ラピダスによる次世代半導体製造の勝算

2026年4月16日、日本の次世代半導体製造を担うラピダスは、政府からの巨額な追加支援と民間からの出資、そして具体的な技術開発のマイルストーン達成により、その実現可能性を大きく高めている。特に、2026年4月11日には、経済産業省による追加補助金決定と富士通からの製造委託発表、そして千歳解析センターの開所式が相次いで行われ、日本の半導体産業復権に向けた強い意志が示された形だ。

最新の進捗と政府・民間からの支援強化

2026年4月11日、経済産業省はラピダスに対し、2026年度の研究開発委託費として6315億円の追加支援を承認したと発表した。これにより、2022年度から2026年度までの研究開発面での政府支援は累計で2兆3540億円超に達する見込みだ。赤沢亮正経済産業相は、北海道千歳市で行われた半導体解析施設の開所式で、「これだけの血税も投入しているプロジェクトを必ず成功させる」と強調し、ラピダスが「国益のために必ず成功させなければならない国家プロジェクト」であるとの認識を示した。

この追加支援と時を同じくして、富士通がAI(人工知能)向け超低消費電力半導体プロセッサーの製造をラピダスに委託する方針を固めたことも明らかになった。 富士通が開発する1.4ナノメートル(nm)のAI半導体は、NVIDIAに依存しない「純国産AI脳」の実現を目指すものであり、日本の経済安全保障上の意義は極めて大きい。 経産省は、富士通と日本IBMが手掛けるAI向け次世代半導体の設計に対しても資金支援を行うことを発表しており、ラピダスへの製造委託を想定している。

また、2026年2月には、NTT、キヤノン、ソニーグループ、ソフトバンク、富士通など民間32社から合計1676億円の出資があったことも発表されている。 これにより、政府からの約1000億円の出資と合わせ、資本金・資本準備金の総額は約2749億5000万円となった。 この民間からの資金調達は、当初計画の1300億円を上回るものであり、ラピダス小池淳義社長CEOは「期待していた以上の皆様方からご支援をいただくことができた」と感謝を述べた。

技術開発のマイルストーンと国際連携

ラピダスの技術開発も着実に進展している。2026年4月11日には、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)がラピダスの2026年度の計画・予算を承認した。 承認されたのは、「2nm世代半導体統合技術・短納期製造技術(日米連携)」と「2nm世代半導体向けチップレット、パッケージ設計・製造技術開発」の2つのプロジェクトである。

2025年度には、北海道千歳市の工場(IIM-1)に設置された製造設備を用いてパイロットラインの稼働を開始し、300mmウェーハ上での2nm GAA(ゲートオールアラウンド)トランジスタ動作の検証からプロトタイプ開発を進めた。 そして、2026年2月には、初期顧客企業を対象に2nmプロセス用のPDK(プロセスデザインキット)の配布を開始し、GAAトランジスタの動作が実証されたと報じられている。 これは、ファブレス企業が2nm工程に合わせてチップ設計を検討できる基礎環境が整ったことを意味し、技術実証段階から実ビジネスへの転換を試みる局面に入ったことを示唆する。

ラピダスは、2022年12月13日に米IBMと2nmプロセス技術に関する戦略的パートナーシップを締結している。 この提携により、ラピダスの研究者と技術者は米ニューヨーク州アルバニーにあるAlbany NanoTech Complexに派遣され、IBMの研究者からナノテクノロジーを習得している。 IBMは2021年に2nmチップ技術を発表しており、7nmチップに比べて45%の性能向上または75%のエネルギー効率向上を見込んでいる。 この国際連携は、日本の半導体サプライチェーンのレジリエンス向上にも寄与すると期待されている。

また、2026年4月11日には、千歳工場に隣接する形で新設された「解析センター」の開所式が執り行われた。 この解析センターは、試作品の性能と品質を評価し、そのフィードバックを即座に工場の製造プロセスに反映させる施設であり、工場と同じ敷地内にあることで、歩留まり改善のサイクルを大幅に短縮できると期待されている。

量産化への展望と残る課題

ラピダスは、2027年度後半に2nm半導体の量産開始を目指している。 その後も、2~3年ごとに1.4nm、1.0nmといった次世代プロセスへのロードマップを確立する計画だ。 2027年度には、千歳市に第2工場の着工を計画している可能性も報じられており、これは2029年から1.4nm半導体などの先端製品の生産を目標に進められる事業だという。

しかし、量産化に向けては、歩留まり向上、顧客獲得、そして莫大な投資回収といった課題が依然として残されている。 2nm世代の半導体は、現時点ではAIやHPC(高性能コンピューティング)など、ごく一部の最先端用途でしか必要とされておらず、国内に大口顧客が少ないという現状がある。 また、TSMCやサムスンといった先行する大手ファウンドリとの競争も激しく、安定供給の実績、歩留まりの高さ、価格競争力といった要素で実績を築く必要がある。

ラピダスは、2031年度頃に営業キャッシュフローの黒字化、フリーキャッシュフロー黒字化を実現し、株式市場への上場を目指すとしている。 政府は2027年度までの支援総額が3兆円を超える見込みであり、この「国家プロジェクト」の成否は、日本の半導体産業の未来を大きく左右するだろう。 ラピダスは、枚葉方式やAI技術をフル活用することで、試作・改善期間を短縮し、ウルトラスピードを武器に差別化を図る戦略を掲げている。 世界中の一流の装置メーカーや材料メーカーが集まり、共同で研究できる仕組みを構築していることも、その勝算を高める要因となる。

Reference / エビデンス