南方:中東脱石油(サウジNEOM等)の技術基盤

2026年4月16日、サウジアラビアは石油依存経済からの脱却を目指す「Vision 2030」の中核として、先進技術を基盤とした経済多角化戦略を加速させています。特に、巨大都市プロジェクトNEOMの戦略再編、国家的なAI戦略の推進、そして広範なデジタルインフラへの投資は、中東地域の将来の経済構造を大きく変革する可能性を秘めており、その進捗と課題が注目されています。

NEOMプロジェクトの現状と技術的焦点

サウジアラビアの未来都市NEOMプロジェクトは、2026年4月15日から16日にかけて報じられた情報によると、戦略的な再編期を迎えています。公共投資基金(PIF)のヤシル・アル=ルマイヤン総裁は、NEOMのプロジェクトが「キャンセルされたのではなく、遅延している」と強調し、優先順位の見直しが行われていることを明らかにしました。特に、全長170kmの線形都市「The Line」については、2030年までに完成させる必要はないとの見解が示されています。

この戦略再編の中で、NEOMはAIインフラとグリーン水素プロジェクトへの注力を強化しています。AIはNEOMのデジタルツインやスマートシティ運営の基盤として不可欠であり、グリーン水素は持続可能なエネルギー供給の要となります。一方で、NEOM内のトロジェナや「The Line」に関連する複数の主要契約がキャンセルされたことも報じられています。これには、ダム、トンネル、鋼材供給に関する契約が含まれており、プロジェクトの規模やスケジュールが調整されていることを示唆しています。

物流面では、Port of NEOMが欧州の複合一貫輸送陸上橋(European Multimodal Land Bridge)と接続を強化し、地域貨物輸送の接続性を向上させています。これは、NEOMが単なる都市開発に留まらず、国際的な物流ハブとしての機能も担うことを示しており、その技術的な基盤強化が進められています。

サウジアラビアのAI戦略とデジタル変革

サウジアラビアは、2026年を「AIの年」と宣言し、グローバルなテクノロジーリーダーシップを強化する野心的な目標を掲げています。この宣言は、国家データ・AI戦略(NSDAI)の柱に基づいており、AI分野における人材育成、研究開発、そして投資の加速を目指しています。

AI関連投資も活発化しており、Microsoft、Groq、Salesforceといった世界的なテクノロジー企業がサウジアラビアでの事業拡大や投資を検討しています。特に、サウジアラビアはAI分野で約400億ドルを投資する計画があると報じられており、これは世界最大のAI投資の一つとなる可能性があります。デジタルインフラの面では、キング・アブドラ科学技術大学(KAUST)に設置されるShaheen IIIスーパーコンピューターや、Hexagonデータセンターなどの主要プロジェクトが進行しており、これらがAI研究とデータ処理能力を飛躍的に向上させることが期待されています。

脱石油に向けた広範な経済多角化と技術的側面

Vision 2030の全体的な目標は、非石油収入の増加と民間部門の拡大を通じて、経済の多角化を達成することにあります。2026年4月14日の報道によると、サウジアラビアは宇宙、ヘルスケア、エネルギーインフラの回復力といった分野で顕著な成果を上げています。特に、アルテミスIIミッションの一環として「シャムス」衛星が打ち上げられ、宇宙分野での存在感を高めています。また、観光部門では92.5億ドルの急増が見られ、エネルギーインフラでは日量700万バレルのパイプラインが復旧するなど、各分野で具体的な進展が見られます。

中東地域の地政学的リスクは、エネルギー転換の必要性をさらに高めています。紛争や不安定な情勢は、世界の石油需要を2050年までに20%、ガス需要を10%削減する可能性があり、エネルギー安全保障の観点から自立的なエネルギー供給へのシフトが加速しています。サウジアラビアは、再生可能エネルギー、特にグリーン水素への投資を通じて、この地政学的リスクを乗り越え、持続可能な経済基盤を構築しようとしています。

Reference / エビデンス