欧州:EU半導体法の投資規模と20%シェア目標の現状(2026年4月16日時点)

欧州連合(EU)が半導体産業の競争力強化とサプライチェーンのレジリエンス向上を目指して2023年に施行した「EU半導体法(Chips Act)」は、当初の目標を大きく上回る投資を動員しているものの、2030年までに世界の半導体市場シェアを20%に倍増するという野心的な目標の達成には依然として課題が山積していることが、2026年4月16日時点の最新情報で明らかになりました。

EU半導体法の投資動員と実績

EU半導体法は、当初、官民合わせて430億ユーロの投資を動員することを目標としていました。しかし、2026年4月8日時点では、この目標を大幅に上回る800億ユーロ以上の半導体関連投資がすでに動員されています。欧州委員会は、2030年までに総投資額が1000億ユーロに達する可能性も示唆しています。

2026年4月15日付のEE Timesの記事でも、EU半導体法が「数百億ユーロ」の投資を動員し、欧州全域で新たな発表の波を引き起こしていると報じられています。

具体的なプロジェクト投資事例としては、2026年4月9日に欧州委員会が承認したイタリアのフォトニックチップ開発支援策が挙げられます。これは、2Dフォトニクス・グループの子会社であるCamGraPhIC s.r.l.に対する2億1,100万ユーロの国家援助であり、ミラノ近郊にグラフェンベースの光入出力技術のパイロット製造施設を建設し、2028年の稼働開始を目指すものです。

また、2026年3月31日には、イタリア政府とシンガポールの半導体企業Silicon Boxが、ピエモンテ州ノバーラ市に32億ユーロを投じて欧州初の先進パッケージング施設を建設する開発協定を締結しました。このプロジェクトは2028年の量産開始を目標としており、EUの20%市場シェア目標に合致するものです。

これらの投資は、製造能力の強化だけでなく、パイロット生産ライン、チップ設計、コンピテンスセンターといった支援エコシステムの構築にも向けられており、EUは半導体エコシステム全体への支出を強化しています。

20%市場シェア目標の達成可能性と課題

EU半導体法のもう一つの主要な目標は、2030年までに世界の半導体市場シェアを現在の約10%から20%に倍増させることです。

しかし、この目標達成には厳しい現実が突きつけられています。2026年4月8日時点での市場シェアは約10%に留まっており、他の国々も同様に多額の投資を行っているため、激しい国際競争に直面しています。

欧州会計検査院(ECA)が2025年4月29日に発表した報告書では、この目標達成が「非常に困難」であると指摘されています。 報告書によると、現在の生産施設への投資レベルでは、2030年のEUの市場シェアはわずか11.7%にとどまる予測です。 ECAは、目標達成には2030年までに生産能力を約4倍にする必要があるとし、欧州委員会に対し、現実に基づいて長期戦略を見直すよう提言しています。

ECAはまた、EU半導体法による2030年までの官民合わせた資金調達見込みが約860億ユーロであるのに対し、世界のトップメーカーが2020年から2023年の3年間で4,050億ユーロ規模の投資予算を組んでいることにも言及し、その大きな差を指摘しています。 さらに、原材料の輸入依存、エネルギーコストの高騰、熟練労働者の不足なども、EUの半導体産業の競争力に影響を与える課題として挙げられています。

このような状況の中、今後の戦略的な動きとして、2026年6月3日には「SEMI Europe Policy Forum Brussels 2026」が開催される予定です。 このフォーラムでは、「Chips Act 2.0」の必要性が議論され、地政学的変化が世界の半導体情勢をどのように変えているか、そして欧州がその中でいかに役割を強化できるかについて、業界リーダー、エコノミスト、政策立案者、技術専門家が一堂に会して検討する見込みです。

Reference / エビデンス