米国の対中半導体輸出管理強化と東アジア同盟国への圧力
2026年4月9日から11日にかけて報じられた米議会での「MATCH法」(Multilateral Alignment of Technology Controls on Hardware)提出の動きは、東アジアの半導体サプライチェーンに新たな緊張をもたらしています。この法案は、米国が中国の半導体製造能力を抑制するため、日本やオランダなどの同盟国に対し、150日以内に米国と同様の輸出制限措置を講じるよう圧力をかける内容です。
MATCH法が成立すれば、従来の先端半導体製造装置だけでなく、汎用チップ製造に用いられるArF液浸露光装置や極低温エッチング装置も規制対象となる可能性があります。これにより、オランダのASMLや日本の東京エレクトロンといった主要企業は、その供給網に重大な影響を受けると見られています。実際、ASMLの中国市場における売上シェアは、昨年(2025年)の33%から今年は約20%まで低下するとの予測も出ています。これは、米国が「小さな庭に高い柵」戦略と称し、特定の戦略的技術を中国から制限しようとする意図を明確に示しています。
中国の対抗措置とサプライチェーン自立戦略
米国の輸出管理強化に対し、中国は自国のサプライチェーンの強靭性と安全性を向上させるための対抗措置を講じています。2026年4月8日に報じられた中国国務院による「産業チェーン・サプライチェーンの安全に関する規定」は、3月31日に施行されました。この規定は、「国家安全法」や「反外国制裁法」などに基づいて制定され、産業チェーン・サプライチェーンにおける安全に係るリスクを未然に防止し、強靭性や適用性、安全性を向上させることを目的としています。中国は、米国の行動が国際貿易ルールに違反し、世界のサプライチェーンを著しく損なうと批判しています。
また、中国は日本に対しても具体的な対抗措置を講じています。2026年2月24日には、三菱重工業グループ各社や川崎重工業など、日本の企業・団体計40社を輸出管理リストおよび監視リストに追加すると発表しました。これにより、これらの企業へのデュアルユース(軍民両用)品目の輸出が事実上禁止または厳格化されています。さらに、2026年1月6日には、日本向けのデュアルユース品目に対する輸出管理を強化する措置が即日施行されており、日本の軍事力強化に寄与する最終用途への輸出が全面的に禁止されています。
中国は国内自給率向上にも注力しており、AI分野への巨額投資を進めています。一部の工場では2025年末までに生産能力を3倍に増強する計画が報じられており、先端半導体の生産能力を今後1~2年以内に5倍まで拡大し、2030年には50万枚まで増やすという目標も掲げられています。これは、米国製先端半導体へのアクセスを断たれた中国が、独自技術エコシステムの構築による「完全な技術自立」へと本格的に舵を切ったことを示しています。
東アジア主要国の半導体戦略と市場動向
東アジアの主要各国も、半導体サプライチェーンの再編と市場の変動に対応するため、独自の戦略を推進しています。
韓国では、2026年4月7日に報じられた情報によると、2025年の輸出が7000億ドルを突破し、2026年には月次ベースで日本を上回る局面が増える見込みです。この好調の主要因は、世界的な半導体好況にあるとされています。
日本は、2030年までに国内半導体関連売上を15兆円超とする目標を掲げています。これは、2020年の約5兆円から3倍に引き上げる大規模な目標であり、官民合わせて10兆円を超える追加投資が必要とされています。日本の輸出管理体制としては、グループA(旧ホワイト国)制度があり、信頼できる貿易相手国との間で輸出管理を簡素化しています。
台湾は、先端技術への継続的な投資とAI需要の拡大により、半導体サプライチェーンにおける存在感を一層強化しています。台湾は独自のエンティティ・リスト制度を運用し、安全保障上の懸念がある企業への輸出を管理しています。
世界半導体市場全体では、AI需要の拡大を背景に、2026年には販売高が約1兆ドルに達するとの見込みが示されています。特に、2026年2月の世界半導体販売高は前年同月比61.8%増の888億ドルと大幅な増加を記録しました。これは、アジア太平洋地域、米州、中国への販売が牽引役となっており、世界的な需要は2026年後半も堅調に推移すると予測されています。一方で、日本のみが前年同月比で9カ月連続のマイナス成長を記録しており、地域間の成長格差が顕著になっています。
Reference / エビデンス
- 米国が再び同盟国に圧力、中国の半導体抑え込み―中国メディア - ライブドアニュース
- 米議会、対中半導体装置規制を日本含む同盟国に拡大へ-超党派法案 - Yahoo!ファイナンス
- 米国が再び同盟国に圧力、中国の半導体抑え込み―中国メディア - Record China
- MATCH法は中国の半導体野心を封じ込められるか - Investing.com
- 米国、中国への半導体輸出規制強化 - Chinapost
- 米国が再び同盟国に圧力、中国の半導体抑え込み―中国メディア - Record China
- 安全保障貿易管理を巡る最近の動向 - 経済産業省
- 激変する東アジア半導体サプライチェーン:輸出管理の構造変化と各国戦略 - Vantage Politics
- 【2026年】半導体市場の動向予測!世界や日本のシェア率、取り組みはどうなるのか? - Aconnect
- 国務院、産業チェーン・サプライチェーンの安全に関する規定を発表(中国) | ビジネス短信 - ジェトロ
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- 【2026年】半導体市場の動向予測!世界や日本のシェア率、取り組みはどうなるのか? - Aconnect
- 2月の世界半導体販売高、さらに大幅増加;国内での半導体業界の動き - セミコンポータル
- 韓国輸出7000億ドル突破…半導体好況で「日本超え」視野 | KOREA WAVE
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- 東アジア半導体サプライチェーンの再編とその未来 - APRDI
- 台湾の越境半導体規制:輸出、安全保障および投資規制 - Law.asia
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