グローバルサウスにおける重要鉱物資源の権益争奪と国家間連携の激化:2026年4月最新動向

グローバルなエネルギー転換の加速と地政学的緊張の高まりは、電気自動車(EV)や再生可能エネルギー技術に不可欠な重要鉱物資源を巡る国際競争を激化させている。これらの資源を豊富に有するグローバルサウス諸国は、新たなサプライチェーンの中心としてその戦略的価値を高めており、主要消費国は資源確保のために戦略的なパートナーシップと投資を積極的に進めている。これにより、世界の資源情勢は再編の時期を迎えており、2026年4月8日現在、各国間の連携と権益争奪の動きが活発化している。

グローバルサウスにおける重要鉱物資源の戦略的価値の高まり

重要鉱物資源の戦略的価値は、国際社会においてかつてないほど高まっている。2026年3月5日には国連安全保障理事会で「エネルギー、重要鉱物、安全保障」に関する議論が行われ、その重要性が改めて認識された。また、2026年2月4日に米国が主催した「2026年重要鉱物閣僚会合」では、世界市場の再構築に向けた方針が打ち出された。

この背景には、電気自動車や再生可能エネルギー技術の普及に伴う需要の急増がある。国際エネルギー機関(IEA)の報告によると、2024年にはリチウム需要が約30%増加し、ニッケル、コバルト、グラファイト、レアアースもそれぞれ6〜8%増加した。特に、コバルトの主要生産国であるコンゴ民主共和国(DRC)では、コバルト加工輸出額が2022年に約3倍の60億ドルに増加しており、資源の付加価値化が経済成長に大きく貢献していることが示されている。

主要国によるグローバルサウスでの権益確保とサプライチェーン再編の動き

主要消費国は、重要鉱物資源の安定供給を確保するため、グローバルサウス諸国との連携を強化し、サプライチェーンの再編を加速させている。2026年4月5日、コンゴ民主共和国(DRC)政府は米国からの「第三国送還者」受け入れに合意した。この合意は、米国がDRCの豊富な重要鉱物(コバルト、銅など)へのアクセスを確保するための戦略的な動きと関連付けられている。

日本もまた、重要鉱物資源の確保に積極的に動いている。2026年4月1日には、高市総理とマクロン仏大統領が日仏共同声明に署名し、重要鉱物に関するロードマップを歓迎するとともに、サプライチェーンの多角化と安全性への貢献を確認した。さらに、2026年3月には日米両政府が「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」を策定し、南鳥島周辺海域のレアアース開発に関する協力覚書を締結した。

欧州連合(EU)も同様の動きを見せており、2026年3月にはオーストラリアと重要鉱物を含む資源分野でのサプライチェーン強靭化と投資環境改善を目的とした自由貿易協定(FTA)で合意した。米国は南米諸国との連携も強化しており、2026年3月19日にはブラジルと重要鉱物に関する協定を協議している。

脱石油を進める湾岸諸国も、アフリカの鉱物資源に注目している。サウジアラビアの鉱物探査支出は過去5年間で5倍に増加しており、2030年には鉱業分野への投資を2024年の約450億リヤル(約1兆8,900億円)から倍以上の約920億リヤルに増やすことを目指している。これは、グローバルサウスにおける資源権益争奪が、伝統的な消費国と資源国だけでなく、新たなアクターを巻き込みながら多角的に展開していることを示している。

グローバルサウス諸国の資源戦略と経済発展

グローバルサウス諸国は、自国の資源をテコに経済的利益を最大化しようとする動きを強めている。2026年2月9日から12日に南アフリカのケープタウンで開催された「Mining INDABA 2026」では、資源開発と経済発展に関する活発な議論が交わされた。

国連貿易開発会議(UNCTAD)は、資源豊富な途上国が未加工の鉱物輸出から現地での加工・付加価値化へと移行することで、経済的利益を大幅に増やせる可能性を指摘している。前述のコンゴ民主共和国におけるコバルト加工輸出額の増加は、この戦略の有効性を示す具体的な事例である。

日本企業もグローバルサウス諸国との協力関係を深めている。阪和興業は、アンゴラ共和国で永久磁石用原料となるレアアースの分離・精製調査事業を2025年9月1日から2026年8月31日までの期間で推進しており、現地での付加価値化に貢献する動きが見られる。

一方で、資源ナショナリズムの動向も顕著であり、資源国が自国の利益を最大化するために輸出規制や国有化を進める可能性も指摘されている。域内での付加価値化は、単なる経済的利益だけでなく、雇用創出や技術移転を通じた持続可能な経済発展にも寄与すると期待されている。

サプライチェーン強靭化に向けた多国間協力と課題

重要鉱物資源のサプライチェーン強靭化に向けて、多国間での協力体制の構築が進められている。米国は2026年2月4日に「重要鉱物に関する特恵貿易圏」の創設を宣言し、価格下限を軸とする新たな貿易枠組みを打ち出した。これは、中国への過度な依存を低減し、同盟国との連携を強化する狙いがある。

日米豪印(クアッド)4カ国は、2025年7月1日に「日米豪印重要鉱物イニシアチブ」の立ち上げを発表し、重要鉱物のサプライチェーンの確保と多様化、電子廃棄物からの回収・再加工に関する協力を強化することを確認した。また、2026年4月1日の日仏首脳会談で歓迎された重要鉱物に関するロードマップも、多国間連携の重要な一環である。

しかし、サプライチェーン強靭化には多くの課題も存在する。中国のレアアース輸出規制は、国際市場に大きな影響を与え続けている。また、価格下限設定の検討、環境規制の強化、そして地元住民の反対運動なども、資源開発を巡る不確実性を高める要因となっている。2026年4月8日時点でも、主要9種類のレアアースの価格動向は毎日更新されており、市場の変動性が高いことを示している。

グローバルサウスにおける重要鉱物資源の権益争奪と国家間連携の激化は、今後も世界の地政学と経済に大きな影響を与え続けるだろう。各国は、安定的な資源供給の確保と持続可能な開発の両立を目指し、複雑な国際情勢の中で戦略的な舵取りが求められている。

Reference / エビデンス