日本:2026年度資産課税および相続税制改正の政治的推移

2026年4月4日、日本政府は2025年12月に公表された税制改正大綱に基づき、2026年度の資産課税および相続税制の主要な改正点を施行、またはその影響を及ぼす時期を迎えています。今回の改正は、貸付用不動産の相続税評価方法の見直し、教育資金一括贈与の非課税措置の終了、富裕層課税の強化、そして事業承継を支援する税制の継続と期限延長を柱としており、今後の資産形成や承継戦略に大きな影響を与えるものとみられています。

貸付用不動産の相続税評価方法の見直し

2026年度税制改正により、貸付用不動産の相続税評価方法が大きく変更されます。特に、2027年1月1日以降の相続から、相続開始前5年以内に取得または新築された貸付用不動産は、従来の評価方法ではなく、原則として「通常の取引価額(時価)」を基準に評価されることになります。課税上の弊害がない限り、取得価額を基に地価の変動等を考慮した価額の80%相当額で評価することも認められますが、従来の通達評価に比べ評価額は大幅に上昇する見込みです。

これまでの評価減スキームでは、例えば現金1億円をアパートに変えることで、相続税の課税対象額を約51%減らし、実質4,900万円を対象とすることが可能でした。しかし、改正後は建物評価が取得価格の80%で計算されるため、1億円の土地に1億円のアパートを建てた場合の評価減は、従来の6,900万円から3,800万円へと3,100万円目減りする具体的な影響が生じるとされています。

この改正は、相続税評価額と市場価格の間に生じる乖離を利用した過度な節税に歯止めをかけることを目的としており、納税者にとって予測可能なルールとしつつ、より公平な税負担を実現することが狙いです。

教育資金一括贈与の非課税措置の終了

直系尊属からの教育資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置は、2026年3月31日をもって延長なく終了しました。 この制度は、祖父母や両親の資産を早期に若年世代に移転させ、子育て世代の支援や人材育成を通じた経済活性化を目的として2013年に導入され、最大1,500万円まで非課税で贈与できる強力な節税策として利用されてきました。

しかし、利用実態としては高額所得者による利用が集中し、経済格差の固定化を招いているとの懸念が指摘されていました。 また、教育費の無償化や負担軽減の進展、NISAの拡充なども踏まえ、適用期限の延長は見送られました。 この制度の廃止は、今後の資産移転戦略において、暦年贈与や相続時精算課税制度の活用など、代替策の検討を促すものとなります。

富裕層課税の強化とミニマムタックスの見直し

2026年度税制改正大綱では、極めて高い水準の所得に対する負担適正化措置、いわゆる「ミニマムタックス」の強化が盛り込まれました。 この制度は、給与所得などに適用される累進課税と異なり、株式や不動産の譲渡益に一律の分離課税が適用されることで、富裕層ほど所得税の負担率が下がる「逆転現象」を是正するために2025年分の所得税から導入されたものです。

今回の改正では、追加の税負担を計算する際の基準所得金額から控除される特別控除額が、現行の3.3億円から1.65億円に引き下げられます。 さらに、税率も22.5%から30%に引き上げられ、住民税を含めると最高35%の税負担が生じることになります。 この改正は2027年分の所得税から適用される予定であり、M&Aによる株式譲渡や不動産の売却など、多額の所得が発生するケースにおいて、税引後の手取り額に大きな影響を与える可能性があります。

事業承継を支援する税制の継続と期限延長

中小企業の円滑な事業承継を支援するため、個人版事業承継税制および法人版事業承継税制の特例措置において、計画提出期限の延長が決定されました。 個人版事業承継税制における個人事業承継計画の提出期限は2年6ヶ月延長され、非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度における特例承継計画の提出期限は1年6ヶ月延長されます。

これらの延長は、経営者の高齢化が進む中で、事業承継が必要な70代以上の経営者が依然として多く存在している現状を踏まえたものです。 制度の適用期限自体は延長されない見込みであるため、適用を受ける可能性がある場合は、早めに事業承継計画の策定に着手することが推奨されています。 この措置により、中小企業の経営者は、より計画的に事業承継を進めるための猶予期間を得られることになります。

Reference / エビデンス