欧州のデジタル市場法(DMA)と関連IT規制の最新動向(2026年4月4日時点)

2026年4月4日、欧州連合(EU)はデジタル市場の公正性と競争力を確保するため、デジタル市場法(DMA)をはじめとする一連のIT規制の適用と執行を強化しています。特に、大手テクノロジー企業「ゲートキーパー」に対する監視は厳しさを増しており、AI Act、NIS2指令、サイバーレジリエンス法(CRA)といった関連法規も、その適用期限に向けて企業に新たなガバナンス上の課題を突きつけています。

デジタル市場法(DMA)の施行状況とゲートキーパーへの影響

デジタル市場法(DMA)は、2024年3月7日に完全に施行されました。この法律の目的は、デジタル市場における公正かつ競争的な環境を確保することにあります。2023年9月には、Alphabet、Amazon、Apple、ByteDance、Meta、Microsoftの6社が「ゲートキーパー」に指定され、これら企業が運営する22のコアプラットフォームサービスがDMAの対象となりました。ゲートキーパー企業は、2024年3月7日までにDMAの義務を遵守する必要がありました。

欧州委員会は、DMAの施行後もゲートキーパー企業の動向を厳しく監視しています。2024年3月25日には、Apple、Meta、GoogleがDMAに違反している可能性について調査を開始したと発表しました。具体的には、Appleのアプリ開発者向けステアリングルール、Metaの「有料または同意」モデル、Google検索における自己優遇などが問題視されています。AppleはEU域内のユーザー向けに、代替アプリストアやブラウザエンジンの利用を許可するなど、一部の変更を実施しています。DMAに違反した場合、企業は全世界年間売上高の最大10%の制裁金を科される可能性があり、繰り返しの違反には最大20%まで引き上げられることがあります。

AI Act(AI法)の進捗と2026年の主要な適用期限

EU AI Act(AI法)は、2024年3月13日に欧州議会で正式に採択され、2024年半ばには発効する見込みです。この法律は、AIシステムが安全で透明性があり、非差別的で環境に配慮していることを保証することを目的としています。

2026年には、AI Actの主要な義務の適用が本格化します。特定のAIシステムの禁止は発効後6ヶ月(2024年後半から2025年前半)に、汎用AIモデルのガバナンス要件は発効後12ヶ月(2025年半ば)に適用が開始されます。特に重要なのは、高リスクAIシステムに対する義務が発効後24ヶ月(2026年半ば)に適用される点です。また、AI生成コンテンツの透明性に関する義務も含まれています。日本企業も、EUで事業を展開する際には、これらのAI規制への対応が不可欠となります。

NIS2指令とサイバーレジリエンス法(CRA)の進展

サイバーセキュリティの強化を目指すNIS2指令は、2022年12月27日に発効しました。加盟国は2024年10月17日までに、この指令を国内法に移行する義務を負っており、ドイツなどでは国内法への移行作業が活発に進められています。NIS2指令は、対象となる事業者の範囲を拡大し、より厳格なサイバーセキュリティ要件と執行措置を導入しています。

一方、サイバーレジリエンス法(CRA)は、2023年12月に暫定合意に至りました。CRAは、ハードウェアおよびソフトウェア製品のサイバーセキュリティを向上させることを目的としています。2026年には、CRAの重要な義務が適用開始となります。特に、積極的に悪用されている脆弱性やインシデントに関する報告義務は、発効後24ヶ月(2026年9月11日頃)に適用される見込みです。製造業者、輸入業者、流通業者に対するその他の義務は、発効後36ヶ月(2027年9月11日頃)に適用される予定です。NIS2指令とCRAは、EUで事業を行う日本企業にも大きな影響を与えるため、適切な対応が求められます。

その他の主要なEUデジタル規制とガバナンスの動向

DMAおよびAI Act以外にも、EUはデジタル分野における包括的な規制枠組みを構築しています。デジタルサービス法(DSA)は、2024年2月17日に全てのオンラインプラットフォームに完全に適用されました。データ法は2023年9月13日に発効し、そのほとんどの規定は2025年9月12日から適用されます。

また、欧州委員会は2024年2月21日に、通信規則の見直しを目的としたデジタルネットワーク法案(DNA)を提案しました。これは、デジタル接続性を支援するためのものです。米国通商代表部(USTR)は、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)の本格実施やデジタル規制・標準化の執行強化を新たな貿易障壁として指摘しており、米国とEU間の貿易摩擦の要因となっています。フランスでは、公共調達、相互運用性、AIガバナンスに焦点を当てたデジタル主権に関する議論が活発に行われています。2025年から2026年にかけての合併審査の動向も、デジタル市場への継続的な監視を示唆しています。

Reference / エビデンス