北米:連邦選挙に伴う経済・通商政策の変遷

2026年3月29日、北米主要国である米国、カナダ、メキシコは、それぞれの連邦選挙を経て新たな経済・通商政策の局面を迎えている。特に、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の見直し動向は、各国の貿易政策や経済指標に大きな影響を与えており、今後の北米経済の行方を占う上で重要な焦点となっている。

米国:トランプ政権下の経済・通商政策の動向

2024年11月5日の大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝利し、第47代米国大統領に就任して以来、米国の経済・通商政策は「アメリカ・ファースト」の原則に基づき大きく転換している。2026年3月2日、米国通商代表部(USTR)は議会に対し、「アメリカ・ファースト」貿易政策アジェンダを提出した。このアジェンダは、国内製造業の増加、互恵的貿易協定の追求、貿易協定および貿易法の厳格な執行、貿易赤字の削減、重要産業の国内回帰を主要な柱としている。

直近の動きとして、2026年2月20日には米国最高裁判所がメキシコからの輸入品に対する国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税を無効とする判決を下した。これに対し、トランプ政権は政策を変更し、メキシコからの輸入品に対して10%のセクション122追加課徴金を導入した。 しかし、この新たな関税政策は反発を招き、2026年3月5日にはニューヨーク州を含む24州がこの10%関税の差し止めを求めて提訴する事態となっている。

経済指標を見ると、2026年2月の米国の月間国際貿易赤字は、1月の547億ドルから573億ドルに拡大した。 一方、2026年1月の個人所得は0.4%増加し、可処分個人所得は0.9%増加、個人消費支出も0.4%増加しており、国内消費は堅調な推移を見せている。

USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)見直しの進展と各国の思惑

2026年7月1日に予定されているUSMCAの6年目の見直しに向けて、各国はそれぞれの思惑を抱えながら交渉を進めている。2026年3月18日には、米国とメキシコが2国間技術協議を開始した。この協議では、北米サプライチェーンへの非市場経済国の参入制限、原産地規則の強化、経済安全保障の協力強化などが議論されている。

メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は3月25日、「USMCAの見直しが順調に進んでいる」と発言し、交渉の進展に前向きな姿勢を示した。 しかし、メキシコ経済相は「不意打ちのような関税や絶え間ないルールの変更はあってはならない」と述べ、米国の保護主義的な動きを牽制している。 米国のトランプ政権は、USMCAからの脱退や2国間協定への分割を示唆しており、交渉の行方は不透明だ。 カナダとの協議開始はまだ発表されておらず、見直し協議が泥沼化する可能性も指摘されている。

カナダ:カーニー政権下の経済・貿易政策

2025年4月28日の連邦選挙でマーク・カーニー氏率いる自由党が政権を握ったカナダは、「カナダ・ストロング」のスローガンを掲げ、高まる世界的緊張や米国の関税政策に対抗し、カナダの独立性を強調する姿勢を打ち出している。

経済動向としては、2026年1月のカナダの実質国内総生産(GDP)が0.1%増加し、2025年第4四半期の緩やかな縮小(年率0.6%減)から回復の兆しを見せている。 ゴールドマン・サックスは、2026年のカナダ経済成長率を1.8%(2025年の0.8%から上昇)と予測しており、失業率も6.5%に低下すると見込んでいる。

メキシコ:シェインバウム政権下の経済・貿易政策と税制改革

2024年6月2日の大統領選挙でクラウディア・シェインバウム氏が勝利し、メキシコ初の女性大統領に就任して以来、メキシコは経済・貿易政策と税制改革において独自の道を歩んでいる。2026年1月1日には、メキシコは1,463の関税コード(メキシコの関税スケジュールの約12%)に対する関税引き上げと強化された税関管理を導入した。 これは、中国からの輸入品に対する不均衡な競争条件を是正することを目的としている。

経済見通しとして、2026年のメキシコ経済成長率は約1.2%(バンク・オブ・アメリカ予測)と緩やかな回復が見込まれるものの、USMCA見直しに関連する貿易の不確実性により脆弱なままである。 また、2026年の公共部門の借入必要額の赤字はGDPの約4.9%に拡大すると予想されており、政府目標の4.1%を上回る見込みだ。 2025年9月8日に提出された2026年度経済パッケージでは、デジタル課税の強化や資本還流優遇措置などの税制改正が主要なポイントとなっている。 さらに、2026年3月には、組織犯罪からの資金流入禁止強化やAIの選挙利用規制などを含む選挙制度改革法案が提出されており、政治改革の動きも活発化している。

Reference / エビデンス