北米:エネルギー輸出政策と国内環境規制の政治的調整

2026年3月21日、北米地域ではエネルギー輸出政策と国内環境規制を巡る政治的調整が活発化している。米国では「エネルギー支配」政策の下で液化天然ガス(LNG)輸出が加速する一方、国内では環境規制緩和と電力需要増大の課題に直面している。カナダは環境規制の強化を進めるが、エネルギー投資への影響も懸念される。メキシコではエネルギー改革が進み、米国との連携によるクリーンエネルギー開発も動き出している。

米国の「エネルギー支配」政策とLNG輸出の加速

トランプ政権下で推進される米国の「エネルギー支配」政策は、世界のエネルギー市場に大きな影響を与えている。米国は2025年に年間1億トンを超える液化天然ガス(LNG)を輸出し、世界最大の輸出国としての地位を確立した。2026年3月上旬には、カタールからのLNG出荷停止とホルムズ海峡周辺の混乱により世界のガス価格が急騰する事態が発生した。この混乱を受け、米国産LNGは欧州市場への出荷を増やしている。

特に、ホルムズ海峡の通過量は2026年3月時点で紛争前の水準から90%以上減少し、日量150万バレル以下に落ち込んでいると推定されており、世界の原油供給の約20%が影響を受けている。このような地政学的リスクの高まりが、米国産LNGの戦略的価値を一層高めている。米国エネルギー情報局(EIA)は、北米のLNG輸出能力が2029年までに2024年の11.4Bcf/dから28.7Bcf/dへと2倍以上に拡大すると予測している。

米国の国内環境規制緩和と電力需要の増大

国内では、トランプ政権による環境規制緩和の動きが顕著だ。2026年2月24日、大統領府は環境保護庁(EPA)がオバマ政権期の温室効果ガス(GHG)「危険性認定」を撤回し、技術革新を阻害してきた規制負担の大幅削減を図ったと発表した。これに対し、カリフォルニア州やマサチューセッツ州を含む米24州などは3月19日、EPAによるGHG危険性認定撤回を巡り、司法審査を求めてワシントンD.C.巡回区控訴裁判所に提訴した。

一方、米国の電力需要は増大の一途をたどっている。2026年3月時点での米国の住宅向け電気料金は全国平均18.05セント/kWhで、前年比5.4%上昇している。米国エネルギー情報局(EIA)は、電力消費量が2026年には4兆2680億キロワット時、2027年には4兆3720億キロワット時に増加すると予測しており、これはデータセンターの急速な拡大が主な要因とされている。特にAIデータセンターの建設ラッシュは、新たな電力供給源の確保を求める声が高まるなど、電力インフラに大きな課題を突きつけている。

カナダのエネルギー政策と環境規制の調整

カナダでは、環境保護とエネルギー開発のバランスを巡る政策調整が続いている。2026年2月25日、カナダはカナダ環境保護法1999年(CEPA)の輸出管理リスト(ECL)を改正し、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)やペルフルオロオクタン酸(PFOA)などの新たな管理化学物質を追加した。これは、ロッテルダム条約およびストックホルム条約に基づく国際的義務を遵守するための措置である。

一方で、カナダの規制枠組みがエネルギー投資を阻害しているという見方も存在し、エネルギー部門からは規制緩和を求める声も上がっている。また、2026年4月9日に米国通商代表部(USTR)が公表する予定の2026年版「外国貿易障壁報告書」では、カナダの「バイ・カナディアン」政策や州の酒類販売規制が米国企業にとっての貿易障壁として指摘される見込みだ。

メキシコのエネルギー改革と環境イニシアチブ

メキシコでは、エネルギー改革と環境イニシアチブが進行中である。2026年3月16日には、メキシコと米国がT-MEC(米国・メキシコ・カナダ協定)の見直しに向けた初の正式協議を開始した。さらに、2026年3月21日には米カリフォルニア州とメキシコのソノラ州がクリーンエネルギー開発などの覚書に署名し、国境を越えた環境協力が強化されている。

メキシコ政府は、電力生産と規制における政府の権限を強化しており、国営電力会社(CFE)に国内発電量の少なくとも54%を生産させる義務を課している。また、2026年3月31日にはメキシコ大蔵公債省がディーゼル燃料価格を1リットル当たり28.30ペソ未満に引き下げる一時的な合意を再確認する見込みであり、燃料価格の安定化を図る政策が継続されている。

Reference / エビデンス