2026年度税制改正大綱の概要と主要な変更点
2026年3月21日、日本政府が2025年12月19日に公表した2026年度税制改正大綱は、資産課税および相続税制に広範かつ重要な変更をもたらし、現在もその影響と対策に関する議論が活発に展開されています。今回の改正は、富裕層の節税対策に大きな影響を与え、次世代への資産移転を促すことを意図していると見られています。
主要な変更点としてまず挙げられるのは、貸付用不動産および不動産小口化商品の評価方法の見直しです。これは、相続税評価額と時価との乖離が指摘されてきた貸付用不動産について、その評価方法を適正化し、過度な節税を抑制することを目的としています。具体的な適用時期は2027年1月1日以降の相続・贈与からとされており、これにより、従来の不動産を活用した相続税対策は大きな転換を迫られることになります。
次に、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置が、2026年3月31日をもって終了します。この制度は、子や孫への教育資金の贈与を非課税とするものでしたが、その利用状況や制度の趣旨との乖離が指摘され、予定通り終了することとなりました。
さらに、事業承継税制における特例承継計画の提出期限が、2026年3月31日から2028年3月31日まで2年間延長されました。これは、中小企業の円滑な事業承継を支援し、後継者不足や廃業の増加といった社会課題に対応するための政治的配慮が強く反映された措置と言えます。
また、富裕層に対するミニマム課税の強化も注目すべき点です。これは、高額所得者や多額の資産を保有する層に対し、一定の税負担を求めるもので、公平な税負担の実現を目指す政治的意図が背景にあります。これらの改正は、税収の安定化と格差是正という政府の財政・社会政策の方向性を示すものと言えるでしょう。
富裕層への影響と節税対策の動向
2026年度税制改正は、特に富裕層の資産形成と承継戦略に深刻な影響を与えています。貸付用不動産の評価見直しやミニマム課税の強化は、これまで富裕層が活用してきた節税対策の有効性を大きく低下させるものです。
2026年3月20日に公開されたダイヤモンド・オンラインの記事「相続税・贈与税が歴史的転換で富裕層包囲へ!今すぐ始めるべき節税対策とは?」は、まさにこの状況を的確に捉えています。記事では、従来の不動産を活用した節税スキームが困難になる中で、富裕層が検討すべき新たな資産防衛策として、生命保険の活用や、海外への資産移転、そして2027年1月以降に適用される「こどもNISA」の“ハイブリッド活用”が提案されています。
「こどもNISA」は、次世代への資産移転を促す新たな非課税制度として期待されており、富裕層の間では、この制度をどのように活用して子や孫への資産形成を支援していくか、具体的な検討が始まっています。しかし、一方で、これらの規制強化が「国力の空洞化」を招き、富裕層が海外へ流出する可能性を懸念する声も上がっており、国際税理士の間では活発な議論が交わされています。
教育資金一括贈与の非課税措置終了と今後の贈与戦略
2026年3月31日をもって、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置が終了します。この制度は、2013年に導入されて以来、子や孫の教育資金を非課税で贈与できるとして多くの家庭で利用されてきました。しかし、制度の利用状況が当初の想定と異なり、富裕層の節税対策として利用されるケースが多かったことや、制度の複雑性などが指摘され、予定通りの終了が決定されました。
この制度終了は、子や孫への教育資金贈与を検討している家庭にとって、今後の贈与戦略の再構築を迫るものです。制度終了後は、暦年贈与や相続時精算課税制度の活用がより重要になります。特に、2024年度税制改正で新設された相続時精算課税制度における年110万円の基礎控除は、今後の贈与計画に大きな影響を与えると考えられています。この基礎控除の活用により、年間110万円までの贈与であれば、相続時精算課税制度を選択しても贈与税の申告が不要となり、より柔軟な贈与が可能となります。
事業承継税制の動向と中小企業への影響
事業承継税制における特例承継計画の提出期限が、2026年3月31日から2028年3月31日まで2年間延長されました。この延長は、個人事業用資産、非上場株式等、医業継続に係る事業承継を対象としており、中小企業の円滑な事業承継を強力に後押しするものです。
中小企業庁の調査によると、後継者不足を理由とした廃業が依然として多く、日本経済の活性化のためには事業承継の円滑化が喫緊の課題とされています。今回の延長は、こうした政治的背景に基づき、より多くの中小企業が事業承継税制の特例措置を活用できるよう、準備期間を確保する意図があります。
2026年3月21日現在、多くの中小企業経営者がこの制度延長に注目しており、税理士やコンサルタントへの相談が増加しているとの情報も入っています。特に、これまで事業承継計画の策定に踏み切れなかった企業にとって、今回の延長は貴重な機会となるでしょう。しかし、制度の複雑性や要件の厳格さから、専門家との連携が不可欠であるという認識も広まっています。
Reference / エビデンス