グローバルサウス:重要鉱物資源の権益争奪と国家間の連携

2026年3月21日、世界は重要鉱物資源を巡る激しい権益争奪の渦中にあり、特にグローバルサウス諸国がその戦略的価値を高めている。電気自動車や再生可能エネルギー技術の普及に伴う需要の急増は、国際的なサプライチェーンの再編を加速させ、各国は資源確保と経済安全保障の強化に奔走している。

国際的な重要鉱物争奪の激化とグローバルサウスの戦略的価値

重要鉱物資源を巡る国際競争は、この数週間で一層激しさを増している。3月5日には国連安全保障理事会で「エネルギー、重要鉱物、安全保障」に関する議論が行われ、国際社会は重要鉱物資源を巡る国際競争における公平性を呼びかけた。これに先立つ3月4日に報じられた情報によると、米国は2月4日に「2026年重要鉱物閣僚会合」を主催し、54カ国および欧州委員会の代表を招集した。この会合では、AI、ロボティクス、電池、自律装置の発展に伴い重要性を増す重要鉱物およびレアアースの世界市場を再構築する方針が打ち出された。市場の高度集中が政治的強制や供給網混乱の手段となり得るとの認識が示され、米国はアルゼンチン、クック諸島、エクアドルなど11カ国と二国間重要鉱物枠組みまたは覚書(MOU)を締結した。これらのMOUは、価格課題への対応、公正市場形成、優先供給網のギャップ是正、資金調達拡大の基盤を整備することを目的としている。また、鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)の後継として「資源の戦略地政学的関与に関するフォーラム(FORGE)」の創設も発表され、政策・事業両面での連携強化が図られる見込みだ。

国連貿易開発会議(UNCTAD)は、重要鉱物資源の需要急増が地政学および産業構造を再編し、資源豊富な途上国が新たなバリューチェーンの中心になりつつあると指摘している。UNCTADは、これらの国々が未加工の鉱物輸出から現地での加工・付加価値化へと移行することで、経済的利益を大幅に増やせる可能性を示しており、コンゴ民主共和国のコバルト加工が2022年に輸出額を約3倍の60億ドルに増加させた事例を具体例として挙げている。

主要国による重要鉱物サプライチェーン強靭化戦略と多国間協力

主要国は、重要鉱物サプライチェーンの強靭化に向けて多角的な戦略を展開し、多国間協力を推進している。3月18日には、日本と米国の間で「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」が策定された。このアクションプランは、非市場的政策や慣行による歪曲がもたらすサプライチェーンの脆弱性を是正することを目的としており、両国は選定された重要鉱物に焦点を当て、国境調整されるプライス・フロアやその他の措置といった協調的な貿易政策およびメカニズムの実現可能性について議論を進めるとしている。

また、米国通商代表部(USTR)は2月26日、重要鉱物に関する複数国間協定の設計とサプライチェーン強靭化に向けたパブリックコメントの募集を開始し、3月19日まで受け付けている。 これは、2月4日に日本を含む54カ国および欧州委員会が参加して開催された重要鉱物閣僚会合で、J.D.バンス副大統領が公正な市場価値を反映した市場形成を目指す「重要鉱物特恵貿易圏」の創設を提案したことに追随する動きと見られている。 同日、米国、欧州委員会、日本政府は共同プレスステートメントを発出し、重要鉱物サプライチェーンの強靭性を共同で強化し、互恵的なパートナーシップに向けて協調的な取り組みを加速する意図を表明した。これには、今後30日以内に米国と欧州連合の間で重要鉱物サプライチェーンの安全性向上を目的とした了解覚書を結ぶコミットメントが含まれる。

日本と米国は、3月19日の日米首脳会談で、重要鉱物の安定供給確保や深海鉱物資源開発に関する協力覚書を締結した。両首脳は、中国を念頭に重要鉱物の安定供給を脅かす輸出規制などの措置に反対する方針を確認し、レアアースを廉売する中国に対抗するため、同志国で調達時の最低価格を設定し、安定的に調達できる「貿易圏」の構築に向けた議論を進めることで一致した。

グローバルサウスにおける資源開発と国家間連携の具体例

グローバルサウス諸国における資源開発プロジェクトと国家間の連携も活発化している。3月23日に報じられたところによると、日本とオーストラリアは重要鉱物供給網の強化に向けた連携を深めている。オーストラリアは資源が豊富で日本の有力なパートナー候補だが、国内の加工・精製能力に限りがあり、多くの重要鉱物を未加工のまま輸出している現状がある。日本と連携して不足する工程を補完することで、相互に利益のある関係を築くことが期待されている。

また、伊藤忠商事と独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、3月23日に南アフリカのプラチナグループメタル(PGM)鉱山であるプラットリーフ鉱山(Platreef Mine)の拡張プロジェクトに対し追加投資を行うことを発表した。 この投資は、プラットリーフ鉱山を保有するITC Platinum Development (IPTD)への追加出資を通じて行われ、JOGMECは8,940万ドルを投資し、伊藤忠商事とIPTDを合わせた出資比率はプラットリーフ鉱山全体の10%に達する。 本鉱山は2025年11月18日にフェーズ1の生産を開始しており、現在フェーズ1のフルキャパシティ達成に向け順調にランプアップを進めるとともに、2027年第4四半期の生産開始を目標にフェーズ2の拡張プロジェクトを推進している。

グリーン経済移行を支えるグローバルサウスの金融協力と持続可能な開発

グローバルサウスは、グリーン経済への移行において重要な役割を担っており、持続可能な開発に向けた金融協力の動きが加速している。3月26日には北京で「2026年グローバルサウス金融家フォーラム」が開幕した。 このフォーラムでは、「グローバルサウスを照らす」をテーマに、30以上の国・地域の政府関係者、銀行家、企業経営者、国際機関の代表が集結し、より包括的で持続可能な金融協力を支援するための連携強化が図られた。

中国人民銀行のLu Lei副総裁は、中央銀行が「一帯一路」に参加する国や地域において、金融機関がグリーンおよび低炭素投資を行うことを奨励していると述べた。 また、国家外国為替管理局のLi Hongyan副局長は、世界のグリーン産業の再編は、中国と他のグローバルサウス諸国にとってウィンウィンの機会をもたらすと指摘し、高水準の金融開放を通じて、中国はグリーン産業における他のグローバルサウス諸国との協力を深め、機会を共有し、世界の持続可能な発展に貢献すると述べた。 中国は「一帯一路」構想の下、インフラ、グリーンエネルギー、グリーン金融における協力強化を推進しており、海外プロジェクトの環境持続可能性向上や、グリーンで包括的な「一帯一路」建設を目指している。 経済産業省も、グローバルサウス諸国との連携強化を目的とした「グローバルサウス未来志向型共創等事業」を実施しており、GX/DX等による社会課題解決やサプライチェーン強靭化・経済安全保障の確保に資する日本企業と現地企業の共創を支援している。

Reference / エビデンス