北米連邦インフラ投資計画:2026年3月時点の予算配分と執行状況

2026年3月18日、北米大陸では米国とカナダがそれぞれ大規模な連邦インフラ投資計画を推進しており、その予算配分と執行状況は両国の経済成長と国民生活の質の向上に不可欠な要素となっている。米国の超党派インフラ法(IIJA)とカナダの国家インフラ計画は、それぞれ異なるアプローチを取りながらも、インフラの近代化と持続可能性の確保を目指している。

米国:超党派インフラ法(IIJA)の全体像と主要な資金配分

米国の超党派インフラ法(IIJA)は、2021年11月15日に成立し、2022会計年度から5年間で5,500億ドルの新規支出と既存予算を含めた総額約1兆ドル規模のインフラ投資を承認している。この巨額の資金は、道路、橋梁、公共交通、EV充電インフラ、ブロードバンド、水インフラ、送電網近代化などの主要分野に配分されている。

特に、2026会計年度(2025年10月~2026年9月)における予算の動向は、トランプ政権の誕生により大きな変化を見せている。2026会計年度の予算教書では、バイデン政権下で成立したIIJAに基づく、信頼性の低い再生可能エネルギー、大気中の二酸化炭素除去(DAC)などの高額な技術のためにエネルギー省(DOE)に提供された150億ドル以上の基金を廃止することが提案されている。これは、手頃な価格で信頼性の高いエネルギーと天然資源を解放するというトランプ大統領の公約を支持するためとされている。

非輸送部門のインフラ投資では、高速インターネット回線へのアクセスに650億ドルが投資され、これまでに全ての州・準州により400億ドルを超える投資計画が策定され、農村地域や部族地域でのプロジェクトが進行中である。送電網の近代化には620億ドル以上が投資され、そのうち200億ドル以上が送電網の現代化に充てられ、これまでに60以上のプロジェクトに56億ドル以上が発表されている。水インフラと西部水インフラには最大630億ドルが割り当てられており、その大部分(追跡された513億ドルのうち435億ドル)は既存のSRF(State Revolving Fund)プログラムを通じて提供されている。

米国:インフラ投資の執行状況と最近の動向(2026年3月)

2026年3月現在、米国のインフラ投資の執行状況は、トランプ政権の政策転換の影響を強く受けている。連邦高速道路局(FHWA)が管轄するプログラムを含むIIJAの陸上交通分野に関する連邦プログラムは、2026年9月末に期限を迎える。次期陸上交通再授権法を巡る議論では、AIやデジタル技術の導入を制度的に後押しする仕組みを組み込むべきであり、こうした技術投資はもはや付加的要素ではなく、制度設計の中核に位置づけるべきであると提言されている。

EV充電インフラ(NEVI)プログラムに関しては、トランプ政権は「EV義務化」を事実上生み出していた燃費基準や排出規制の運用を問題視し、現実的で達成可能な基準へ見直す方針を明確にしている。EV技術そのものは否定しないものの、規制によって特定技術を国民に強制することは、新車価格の上昇を通じて交通の手頃さと安全の双方を損なうと指摘している。

2026会計年度の大統領予算案では、非国防予算が2025年度予算の7205億ドルから5574億ドルへと22.6%の大幅減となることが示されている。特に、気候変動およびグリーン・ニュー・スキャム(詐欺)研究への資金配分が削減され、高性能コンピューティング、人工知能、量子情報科学、核融合、重要鉱物などの優先分野は維持される。また、環境保護庁(EPA)の予算は52.4%減、エネルギー省(原子力や重要鉱物を除く)の予算は11.2%減となるなど、グリーン分野や対外援助が削減対象として明示されている。一方で、原子力発電・炭素利用回収貯留(CCUS)・クリーン燃料(バイオ燃料)への減税は維持または拡大・延長される見込みである。

最近の動向としては、2026年2月には、トランプ政権による洋上風力発電の建設停止命令を地方裁が全て却下し、建設続行が認められた。しかし、DOI長官は上訴する構えを見せており、訴訟の行方が注目されている。

カナダ:国家インフラ計画の進捗とCIBの役割

カナダの国家インフラ計画は、経済成長を支え、国民生活の質を向上させるための大規模な投資を目標としている。この計画において、カナダインフラ銀行(CIB)は、民間資本を誘致し、インフラプロジェクトの加速を支援する重要な役割を担っている。

CIBの2025-26年度第3四半期(2025年10月~12月)の市場アップデートによると、CIBは108件の投資に達し、181億ドルを超える資金をコミットしている。CIBが投資したプロジェクトのうち、89件が現在建設または開発中であり、11件のプロジェクトが完了し、カナダ国民に公共の利益をもたらしている。これらのプロジェクトは、クリーン電力、ブロードバンド、グリーンインフラ、貿易・交通、公共交通といった優先分野にわたる。

2026年3月18日前後のCIBの活動としては、2026年2月20日に発表された「優先事項と説明責任に関する声明」において、CIBの資本枠を450億ドルに増額し、投資対象を拡大することが提案されている。これは、カナダ政府がインフラ整備を加速し、経済的、社会的、環境的利益をもたらすインフラを推進するというコミットメントを反映している。また、CIBは、国家的に重要なプロジェクトの成功指標を定義し、2026-27年度の事業計画で公表することが期待されている。

さらに、2025年8月30日には、カナダ経済の変革を加速させるため、新たな連邦機関「主要プロジェクト局」(MPO)の設立が発表された。MPOは、国家的に重要な港湾、鉄道、エネルギー回廊、クリーン技術などの重要インフラの建設を迅速化することを目的としており、承認期間を最大2年に短縮することを目指している。

カナダ:主要インフラプロジェクトの進捗と将来展望

カナダでは、2026年に完了予定の複数のメガプロジェクトが進行しており、エネルギー、交通、資源開発の分野で大きな進展を見せている。これらのプロジェクトは、カナダ経済に多大な影響を与え、北米の貿易、交通、エネルギー生産を革新すると期待されている.

主要なプロジェクトとしては、オンタリオ州のピカリング発電所改修(268億ドル)やダーリントン原子力発電所改修(128億ドル)といった原子力エネルギー関連のプロジェクトが挙げられる。これらは、カナダのクリーンベースロード電力における世界的リーダーとしての地位を強化し、安定した低炭素グリッドを今後40年間確保することを目指している。

交通分野では、GO拡張プログラム(105億ドル)やオンタリオ線地下鉄(15.6km)がトロントの交通渋滞緩和に貢献すると期待されている。また、エグリントン・クロスタウンLRT(19km)は、交通時間の短縮だけでなく、都市再生の推進役としても機能している。カルガリーでは、62.5億ドルのグリーンラインLRTが建設中で、交通渋滞の緩和、温室効果ガス排出量の削減、都市の持続可能な成長を促進することを目指している。

資源開発の分野では、オンタリオ州北部の「リング・オブ・ファイア」が、重要な鉱物の供給源として注目されており、世界のEVサプライチェーンの主要なエンジンとなる可能性を秘めている。

2026年3月30日には、カナダ政府がノースウェスト準州イヌヴィック町におけるインフラ整備拡充のため、最大544万5,000ドルの助成金を発表した。この投資は、新たな給水塔および大量給水施設の建設、汚水処理ラグーンシステムの改修を支援し、国防省の駐留体制維持にも寄与する。

これらのメガプロジェクトの完成は、カナダがより統合され、ハイテクで、グリーン志向のインフラネットワークへと移行する上で極めて重要な転換点となるだろう。

Reference / エビデンス