2026年度税制改正、資産課税・相続税制の行方:国会審議は最終局面へ
2026年3月18日、日本の税制は大きな転換点を迎えようとしている。2026年度税制改正法案は国会審議の最終段階にあり、特に資産課税および相続税制の改正は、国民の財産形成や事業承継に多大な影響を与えるものとして注目を集めている。与党は3月31日の法案成立を目指しており、この数日間の動向が今後の日本の経済社会のあり方を左右すると言っても過言ではない。
2026年度税制改正法の成立と国会審議の最終段階
2026年度税制改正法案は、3月31日に参議院本会議で可決・成立する見通しだ。この法案には、所得税法や法人税法、相続税法、租税特別措置法など国税の改正を一本にまとめた「所得税法等の一部を改正する法律案」と、地方税の改正を一本にまとめた「地方税法等の一部を改正する法律案」が含まれている。これらの法案は、いずれも2月20日に閣議決定され、同日国会に提出された後、3月13日には衆議院を通過している。
現在、法案は参議院での審議が大詰めを迎えており、3月18日時点では、参議院財政金融委員会および総務委員会での審議を経て、本会議での採決を待つ状況にある。 財務省は、2026年度の税制改正による初年度税収を5,780億円の減収と見込んでおり、特に「物価上昇局面における基礎控除等の対応」が減収の最大の要因とされている。
資産課税・相続税制改正の主要な変更点
2026年度税制改正大綱で決定された資産課税および相続税制の具体的な変更点は多岐にわたる。特に注目されるのは以下の点である。
教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の廃止
直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置は、2026年3月31日をもって適用期限が延長されずに終了する。 この制度は、祖父母や両親の資産を早期に若年世代に移転させることを目的として2013年に導入されたが、利用実態や格差固定化の懸念、教育費の無償化・負担軽減の進展、NISAの拡充などを踏まえ、廃止が決定された。 3月31日までに拠出された資金については引き続き非課税措置が適用されるものの、今後は扶養義務者から教育に充てるために通常必要と認められる財産の贈与を含めた検討が必要となる。
貸付用不動産の相続税評価方法の見直し(5年ルール)
貸付用不動産の相続税評価方法が見直され、「5年ルール」が導入される。 これは、相続開始前5年以内に対価を伴う取引により取得または新築した貸付用不動産について、原則として課税時期における通常の取引価額(市場価格に近い金額)をベースに評価するというものだ。 これまでの評価方法では、路線価や固定資産税評価額を基に算定され、市場価格よりも大幅に低い評価となるケースが多く、相続直前の「駆け込み対策」が問題視されていた。 新ルールは2027年1月1日以後の相続または贈与から適用される予定であり、短期的な節税目的の不動産取得の効果は限定的となる見込みだ。
不動産小口化商品の評価方法の見直し
不動産小口化商品についても、その評価方法が見直される。 不動産特定共同事業契約または信託受益権に係る一定の金融商品取引契約に基づく権利の目的となっている貸付用不動産については、取得時期にかかわらず、課税時期における通常の取引価額に相当する金額で評価される方針が示されている。 これにより、これまで実物不動産と同様の評価減が適用されてきた不動産小口化商品の節税効果は、2027年1月1日以降は全くなくなるとされている。
事業承継税制の提出期限延長
非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度(法人版事業承継税制)において、特例承継計画の提出期限が2026年3月31日から2027年9月30日まで1年6か月延長される。 また、個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度(個人版事業承継税制)についても、個人事業承継計画の提出期限が2026年3月31日から2028年9月30日まで2年6か月延長される。 これは、事業承継を最大限に活用できるよう、提出期限を延長するもので、適用期限自体は延長されない見込みである。
資産課税・相続税制に関する政治的議論と意見表明
2026年度税制改正を巡っては、政治家や専門家から様々な意見が表明されている。
中道改革連合の小川淳也代表は、3月30日発売のAERAで、相続税強化を示唆する発言を行った。 彼は「亡くなった方の資産の一部が、若い世代に還元される――といった世代循環型の資産による支え合いみたいなシステムがあれば、可能性が出てきます」と述べ、実質的な相続税の増税を提案している。 この発言は、SNS上で「共産主義的」「二重取りではないか」といった批判を呼び、議論が加熱している。 また、政治家が相続税を免除されているかのような誤情報が拡散されたことに対し、日本ファクトチェックセンター(JFC)は3月26日、相続税の申告や納税はすべての人が対象であるとファクトチェックを行い、政治団体を介した「課税回避」の批判があることを指摘している。
一方、専門家団体も税制改正に対し意見を表明している。東京税理士会は、3月18日に開催された第11回理事会において、「令和9年度税制及び税務行政の改正に関する意見書」を決定し、公表した。 この意見書では、公平性に配慮した税制、経済等への中立性に配慮した税制、国民の理解が得られる簡素な税制、遡及立法の禁止といった基本理念に基づき、今後の税制改革について提言を行っている。 特に資産課税については、相続税の課税方式や事業承継のための必要な措置、時価と通達評価の乖離などについて言及している。 これらの意見は、今後の税制議論に影響を与えるものと見られる。
Reference / エビデンス
- 2026年(令和8年)度税制改正法、3月31日に成立 | 税理士法人山田&パートナーズ
- 【2026年度税制改正】資産課税編 - G.S.ブレインズ税理士法人
- 2026年マーケット展望 ~物価高に賃金が追い付く金利ある世界で意識すべき投資のポイント
- 不確実性高まる中でスタグフレーション・リスクも浮上-日本経済情報2026年3月号 - 伊藤忠総研
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- 資産税等に関する令和8年度税制改正について | デロイト トーマツ グループ - Deloitte
- 【2026年度(令和8年度)税制改正大綱】年収の壁引き上げ、NISA、暗号資産、住宅ローン控除など主な改正点を解説 | 節税しながら、資産形成しよう | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア
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- 2026年度税制改正大綱【令和8年度】|相続税・贈与税の解説
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