国際法人税改革と多国籍企業:最新動向と各国の対応

日本の税制改正:グローバル・ミニマム課税の国内法制化進展

2026年3月13日、日本の2026年度(令和8年度)税制改正法案が衆議院を通過しました。この法案には、OECDが主導する「二つの柱」解決策におけるグローバル・ミニマム課税(Pillar Two)に関する重要な修正が含まれています。具体的には、軽課税所得ルール(UTPR)である「国際最低課税残余額に対する法人税」および国内ミニマム課税(QDMTT)である「国内最低課税額に対する法人税」が、2026年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用されることとなります。

英国の税務執行強化:移転価格税収の大幅増

英国歳入関税庁(HMRC)は2026年3月11日、2024-25年度の移転価格および迂回利益税(DPT)に関する年次統計を発表しました。この統計によると、移転価格による税収は33億8,700万ポンドに達し、前年度からほぼ倍増しました。これは、多国籍企業に対する税務当局の執行が強化されている具体的な傾向を示すものと見られます。

OECDグローバル・ミニマム課税(Pillar Two)の最新動向:Side-by-Sideパッケージと各国の対応

グローバル・ミニマム課税(Pillar Two)の最新動向として、OECD/G20のBEPS包摂的枠組みは2026年1月5日に新たな行政ガイダンス「Side-by-Sideパッケージ」に合意しました。このパッケージには、恒久的な簡易実効税率(ETR)セーフハーバー、移行期間国別報告(CbCR)セーフハーバーの1年延長、実質ベースの税制優遇措置セーフハーバー、適格国向けのSide-by-Side(SbS)セーフハーバー、および最終親事業体(UPE)セーフハーバーが含まれています。特に米国は、2026年1月5日時点でOECD中央記録において適格なSbS制度を持つ唯一の国として認識されており、これにより米国籍多国籍企業はUTPRの適用から免除される可能性があります。日本は、2026年度税制改正において、このSide-by-Sideパッケージを含む国際合意を踏まえ、国内制度の見直しを行うこととしました。

多国籍企業の税務コンプライアンスと今後の課題

英国HMRCによる移転価格税収の大幅な増加は、多国籍企業に対する税務当局の執行が世界的に強化されている具体的な現れです。これは、OECDのBEPSプロジェクトが目指す税源浸食と利益移転の防止という国際的な枠組みの中で、各国が多国籍企業の税務コンプライアンスをどのように強化しているかを示す事例です。グローバル・ミニマム課税の導入は、各国における国内法制化の進捗状況の相違、米国のような独自のミニマム課税制度を持つ国との共存の必要性、そして多国籍企業のコンプライアンス負担の増大といった複数の課題を抱えています。

Reference / エビデンス

  • 英国歳入関税庁、移転価格および迂回利益税に関する年次統計を発表 | EY Japan 2026年3月11日、英国歳入関税庁(HMRC)は、2024-25年度の移転価格および迂回利益税(DPT)に関する年次統計を発表し、移転価格による税収が33億8,700万ポンドへと大幅に増加し、前年度からほぼ倍増したことを明らかにした。
  • グローバル・ミニマム課税に係る実務対応ガイド | PwC Japanグループ PwC税理士法人は、2024年4月から日本でも導入されたグローバル・ミニマム課税(国際最低課税額に対する法人税)について、申告実務に携わる企業担当者に向けて、その制度内容と対応ポイントなどを整理した実務対応ガイドを2026年3月6日に発行した。
  • グローバル・ミニマム課税に関する令和7年度税制改正が施行(UTPR・QDMTT) | EY Japan 日本の令和7年度(2025年度)税制改正により、グローバル・ミニマム課税に関する軽課税所得ルール(UTPR)が「国際最低課税残余額に対する法人税」として、また国内ミニマム課税(QDMTT)が「国内最低課税額に対する法人税」として、2026年4月1日以後開始対象会計年度から適用される。
  • Global minimum corporate tax rate - Wikipedia 2026年1月、OECD包摂的枠組みに参加する147の国・地域は、米国からの異議に対応するため、「Side-by-Side arrangement」に合意した。この合意は、多国籍企業による利益移転を抑制し、国間の税率競争を減らすことを目的とした15%のグローバル最低法人税率の設定を継続するものである。
  • Weekly Tax News - Monday 23 March 2026 - ETAF 2026年3月16日、欧州議会の社会民主主義グループは、2026年1月5日に合意されたSide-by-Sideシステム(SbS)の経済的影響について、欧州委員(税制担当)Wopke Hoekstra氏に説明を求める書簡を送付した。このSbSシステムは、米国籍多国籍企業をグローバル・ミニマム税(GMT)枠組みの主要要素から免除するものである。また、2026年3月16-17日にはブリュッセルでEU税務シンポジウムが開催され、国際税務協力の将来やグローバル税制改革の実施について議論された。2026年3月17日には、欧州委員会の共同研究センター(JRC)が、グローバル・ミニマム税の経済的・福祉的影響に関する定量的評価を提供するワーキングペーパーを発表した。
  • Despite US exemptions, the show goes on for a global minimum corporate tax 2026年1月5日、トランプ政権の圧力の下、146カ国が米国とともに2021年の合意を修正し、グローバル・ミニマム法人税の枠組みは継続されることになったが、米国籍多国籍企業は、国ごとの軽課税所得ルール(UTPR)から免除されることになった。この変更により、当初の2021年合意よりもグローバル・ミニマム法人税の効果は低下するものの、参加国が国内ミニマム追加課税を導入することで、自国で事業を行う米国籍多国籍企業からより多くの税収を徴収し、大幅な低税率による競争を回避するインセンティブは依然として強い。
  • グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置 - 財務省 2026年1月5日にグローバル・ミニマム課税と独自のミニマム課税制度を有する米国を含む一定の要件を満たす国の制度との共存等について国際合意が成立したことを受け、日本は2026年度税制改正において、当該合意に則り国内制度の見直しを行うこととした。この改正は、2026年1月1日以後に開始する対象会計年度から適用される。
  • OECD INCLUSIVE FRAMEWORK REACHES AGREEMENT ON PILLAR TWO “SIDE-BY-SIDE” PACKAGE - Weil Tax BLOG 2026年1月5日、OECDのBEPS包摂的枠組みは、Pillar Twoグローバル・ミニマム税ルールに関する新たな行政ガイダンス「Side-by-Sideパッケージ」に合意した。このパッケージには、恒久的な簡易実効税率(ETR)セーフハーバー、移行期間国別報告(CbCR)セーフハーバーの1年延長、実質ベースの税制優遇措置セーフハーバー、適格国向けのSide-by-Side(SbS)セーフハーバー、および最終親事業体(UPE)セーフハーバーが含まれる。SbSセーフハーバーは、2026年1月1日以降に開始する会計年度に適用される。
  • Base erosion and profit shifting (BEPS) - OECD OECDは、2026年1月5日に国際社会がグローバル・ミニマム税パッケージの今後の進め方について合意したと発表した。
  • 2026(R8)年3月決算における税務上の留意事項 | デロイト トーマツ グループ - Deloitte 2026年3月期決算においては、主に令和7年度税制改正の内容が初めての適用を迎える。国際課税の分野では、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」で取りまとめられたグローバル・ミニマム課税(「第2の柱」)について、軽課税所得ルールおよび国内ミニマム課税の導入が進められている。
  • 国际税收聚焦 - 普华永道 2026年1月5日、OECDはBEPS包摂的枠組みの147メンバー国・地域が、Pillar Twoグローバル・ミニマム課税ルール(GloBEルール)に基づく新たな執行ガイダンスパッケージに合意したことを公表した。この「Side-by-Sideパッケージ」には、恒久的な簡易実効税率(ETR)セーフハーバー、移行期間国別報告(CbCR)セーフハーバーの1年延長、実質ベースインセンティブ(税恩典)セーフハーバー、適格国に係るSide-by-Side(SbS)セーフハーバーおよび最終親事業体(UPE)セーフハーバーが含まれる。2026年1月5日現在、米国はOECD中央記録で適格要件を満たす唯一の国である。
  • グローバル・ミニマム課税 - 東京共同会計事務所 グローバル・ミニマム課税(Pillar II)の軽課税所得ルール(UTPR)と国内ミニマム課税(QDMTT)は、令和7年度税制改正で法制化され、2026年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用される。
  • グローバル・ミニマム課税関係 - 国税庁 令和7年度税制改正において、グローバル・ミニマム課税の他のルールである軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)に係る法制化として、各対象会計年度の国際最低課税残余額に対する法人税及び各対象会計年度の国内最低課税額に対する法人税の創設等が行われた。
  • Global Anti-Base Erosion Model Rules (Pillar Two) - OECD 2026年1月5日に「Side-by-Sideパッケージ」が公表され、これには簡易ETRセーフハーバー、CbCRセーフハーバーの1年延長、実質ベースの税制優遇措置セーフハーバーが含まれる。これらのルールは、2022年以降に国内法制化されることを意図している。
  • 2026年3月期決算における税務上の留意事項 - KPMG International 2026年3月期決算においては、2025年度税制改正でグローバル・ミニマム課税に関する見直しが行われ、事務負担軽減の観点から外国子会社合算税制の見直しも行われた。2026年1月5日にグローバル・ミニマム課税と独自のミニマム課税制度を有する米国を含む一定の要件を満たす国の制度との共存等について国際合意が成立したことを受け、2026年1月23日、2026年度税制改正において見直されることとなる「グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置」が閣議決定された。
  • 2026(令和8)年度日本稅制改革| 勤業眾信 - Deloitte 2025年12月19日に日本政府執政党が公表した2026年度(令和8年度)税制改革大綱では、グローバル最低税負制(Pillar 2)の必要検討や海外子会社合併課税制度(CFC税制)関連規定の修正が含まれている。2026年1月5日にはOECD/G20 BEPS包容性架構がPillar 2に関する最新指針文書「Side-by-Side package」を発表しており、日本も令和8年度税制改正法案でこれを反映する可能性がある。
  • Worldwide Tax Summary 2026年2月号 - PwC 2026年1月5日、OECDはBEPS包摂的枠組み(IF)の147メンバー国・地域が、第2の柱グローバルミニマム課税ルール(GloBEルール)に基づく新たな執行ガイダンスパッケージ「Side-by-Side Package」に合意したことを公表した。このパッケージは、2026年1月1日以降に開始する会計年度に適用され、米国はOECD中央記録で適格要件を満たす唯一の国である。
  • oecdpillars.com – Independent Insights and Analysis on the OECD Two Pillars Solution 2026年3月31日、日本は2026年度税制改正パッケージを制定し、Pillar Two制度の改正を含め、2026年1月のSide-by-Side税制パッケージおよび2025年1月のOECD行政ガイダンスの側面を盛り込んだ。また、2026年3月25日にはオーストラリアがPillar Twoルールを改正し、DMTT目的のOECD行政ガイダンスの側面を組み込んだ。同日、スウェーデンもOECD Side-by-Side税制パッケージを盛り込むための草案を発行した。
  • OECD Pillar Two Side-by-Side System and New Safe Harbors | Insights | Mayer Brown 2026年1月5日、OECDはBEPS包摂的枠組みがPillar Twoグローバル・ミニマム税(GMT)ルールに関する新たな行政ガイダンスパッケージに合意したと発表した。2026年1月15日現在、米国は適格なSbS制度を持つ唯一の国であり、OECD中央記録に掲載されている。SbSセーフハーバーは、2026年1月1日以降に開始する会計年度に適用される。
  • Pillar Two Country Tracker - PwC 2026年1月5日、OECDはBEPS包摂的枠組み(IF)の147メンバー国・地域が、Pillar Twoグローバル・ミニマム課税ルール(GloBEルール)に基づく新たな行政ガイダンスパッケージ「Side-by-Side Package」に合意したことを発表した。このパッケージには、恒久的な簡易実効税率(ETR)セーフハーバー、移行期間国別報告(CbCR)セーフハーバーの1年延長、実質ベースの税制優遇措置セーフハーバー、Side-by-Side(SbS)セーフハーバー、およびUPEセーフハーバーが含まれる。
  • 2026年(令和8年)度税制改正法、3月31日に成立 | 税理士法人山田&パートナーズ 2026年3月31日、2026年度(令和8年度)税制改正法が参議院本会議で可決・成立した。この法案は、2月20日に閣議決定後、同日国会に提出され、3月13日に衆議院を通過していた。成立した税制改正法には、所得税法や法人税法、相続税法、租税特別措置法など国税の改正を一本にまとめた「所得税法等の一部を改正する法律案」が含まれる。