2026年 東アジア安全保障環境の動向:北朝鮮、台湾、南シナ海、経済安保の複合的課題
北朝鮮の弾道ミサイル発射と地域安全保障への影響
2026年3月14日午後1時24分頃、北朝鮮は正願付近から複数発の弾道ミサイルを発射した。これらのミサイルは最高高度約80km、約340km飛翔し、朝鮮半島東岸付近の日本の排他的経済水域(EEZ)外の日本海に落下したと推定されている。韓国軍は、約10発のミサイルが発射されたとみている。今回の発射は2026年1月以来のミサイル発射であり、北朝鮮は今年に入ってから3月14日の事案を含め、これまでに計3回(少なくとも6発)の弾道ミサイルを発射している。
日本政府は、この事案を受け、情報収集・分析、航空機・船舶の安全確認、不測の事態への万全の態勢を指示した。防衛省は米国・韓国と緊密に連携し、警戒監視に全力を挙げる方針を示しており、小泉防衛大臣も日米韓の連携を強調している。弾道ミサイル技術を使用した発射は、射程に関わらず国連安保理決議に違反する行為であり、北朝鮮による度重なる発射は、地域および国際社会の平和と安全に対する重大な脅威である。
台湾海峡情勢:中国の長期戦略と米国の評価
中国は2026年から2030年までの5カ年計画の草案において、「『台湾独立』分裂勢力を断固として打撃する」という文言を明記し、「両岸関係の主導権をしっかりと把握する」と追記した。これは、台湾に対する中国の揺るぎない政策的姿勢を改めて示すものである。
一方で、2026年3月に公表された米情報機関(IC)の「年次脅威評価」は、中国指導部が現在、2027年までに台湾侵攻を実行する計画を持たず、統一達成のための固定されたタイムラインも有していないと評価している。この評価の根拠として、台湾への水陸両用侵攻が極めて困難であること、特に米国の介入があった場合には失敗のリスクが高いことが挙げられている。
さらに、中国は2026年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)深圳開催において、台湾に対し「一つの中国」原則の下、「中国台北」名義の地域経済体として参加するよう要求しており、台湾外交部はこれをAPECのルールや慣行に違反すると批判している。
南シナ海の緊張と多国間協力の進展
南シナ海では、フィリピンと中国間の緊張が継続している。2025年12月中旬には、中国海警局の船が放水銃を使用し、フィリピン人漁師3人が負傷する事案が発生した。この事案は、この地域における偶発的な衝突のリスクの高さを示している。
これに対し、米国議会はフィリピンへの新たな安全保障支援として25億ドルを承認し、日本からも政府安全保障能力強化支援(OSA)を通じて沿岸監視レーダーが供与されるなど、多国間での協力と支援の動きが進展している。一方、中国とASEANは、南シナ海における行動規範の交渉が2026年中に完了することへの期待を示している。
インド太平洋戦略の深化と経済安全保障の課題
2026年3月14日、東京では第1回インド太平洋エネルギー安全保障閣僚会合が開催された。これはインド太平洋地域におけるエネルギー安全保障の強化に向けた国際的な協力の動きを示すものである。
米国は2026年を通じてインド太平洋地域における防衛態勢の構築を継続しており、二国間および多国間演習の拡大、相互運用性イニシアチブや指揮統制の統合を拡大する可能性が高いとアナリストは指摘している。これには日本・韓国との継続的な三国間協力も含まれる。また、2025年12月に公表されたトランプ政権の国家安全保障戦略(NSS)は、「米国第一主義」を掲げ、国家利益と主権を最優先する国益中心のリアリズムへの転換を強調している。
経済安全保障の分野では、KPMGの「経済安全保障・地政学リスク2026」レポート(2026年1月30日時点の情報に基づく)が、2026年の注目テーマとして「不安定な日中関係」を挙げている。同レポートは、米中間の重要物資を巡る戦略的競争が世界に広がり、特にAIに必要な半導体や重要鉱物において、ハイテク規制や重要鉱物を巡る経済安全保障問題が再浮上するリスクがあるとも指摘している。実際に、中国商務部は2026年1月6日に軍民両用物資の対日輸出規制の強化を発表しており、経済安全保障上の課題が顕在化している。
Reference / エビデンス
- 【北朝鮮】複数の弾道ミサイル発射…日本のEEZ外の日本海に落下 防衛省 - YouTube 2026年3月14日午後1時24分頃、北朝鮮が正願付近から複数の弾道ミサイルを発射し、約340km飛翔して日本の排他的経済水域(EEZ)外の日本海に落下した。韓国軍によると約10発が発射されたとみられる。
- 北朝鮮のミサイル等関連情報 - 防衛省・自衛隊 2026年3月14日午後1時24分頃、北朝鮮が西岸付近から複数発の弾道ミサイルを北東方向へ発射し、最高高度約80km、約340km飛翔後、朝鮮半島東岸付近の日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下したと推定されている。現時点で航空機や船舶への被害報告はない。日本政府は情報収集・分析、航空機・船舶の安全確認、不測の事態への万全の態勢を指示し、防衛省は米国・韓国と緊密に連携し警戒監視に全力を挙げる方針を示した。
- 北朝鮮が弾道ミサイルの可能性があるものを発射 すでに落下したものとみられる ミサイル発射は2026年1月以来 防衛省 - FNNプライムオンライン 北朝鮮によるミサイル発射は2026年1月以来となる。
- 北朝鮮が弾道ミサイル10発超を発射 日本EEZ外に落下 小泉防衛相「被害情報なし」日米韓が警戒態勢を強化(2026年03月14日) - YouTube 小泉防衛大臣は、北朝鮮のミサイル発射を受けて、アメリカや韓国などと連携し「警戒・監視に万全を期す」と述べた。
- 北朝鮮による弾道ミサイル等発射事案①(2025年1月~) 北朝鮮は2026年に入ってから、3月14日の事案を含め、これまでに計3回(少なくとも6発)の弾道ミサイルを発射している。弾道ミサイル技術を使用した発射は、射程に関わらず国連安保理決議違反となる。
- 中国5カ年計画発表 台湾へ圧力「台湾独立勢力を打撃」と追記 「自立自強」目指す(2026年3月5日) 中国が2026年から2030年までの5カ年計画の草案で、「『台湾独立』分裂勢力を断固として打撃する」という文言と、「両岸関係の主導権をしっかりと把握する」という文言を追記した。
- 本当に中国による台湾侵攻の危機は遠のいたのか、2027年説を米情報機関の報告書が否定(1/3) 2026年3月に公表された米情報機関(IC)の「年次脅威評価」は、中国指導部が現在、2027年に台湾侵攻を実行する計画はなく、統一達成のための固定されたタイムラインも持っていないと評価している。その理由として、台湾への水陸両用侵攻が極めて困難であることと、特に米国の介入があった場合には失敗のリスクが高いことを挙げている。
- 現地報道からの情報 中国、2026年深圳APECで台湾に『中国台北』名義を要求(2025年11月) 中国は2026年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)深圳開催において、台湾が「一つの中国」原則の下、「中国台北」名義の地域経済体として参加することを要求しており、台湾外交部はこれをAPECのルールや慣行に違反すると批判している。
- 台湾野党主席 10年ぶり中国本土訪問「戦争避けられない運命ない」中台の対話路線強調 2026年4月7日、台湾の最大野党・国民党の鄭麗文主席が10年ぶりに中国本土を訪問し、中台関係に関して「国際社会が懸念するような『戦争は避けられない』という運命にあるのではなく、問題を平和的に解決する能力を持っている」と強調した。
- 【連載】2026 世界はどう動く(6) フィリピン 南シナ海問題に多国間協力 南シナ海を巡るフィリピンと中国の緊張は新たな段階に入っており、2025年12月中旬には中国海警局の船が放水銃を使用し、フィリピン人漁師3人が負傷する事件が発生した。これに対し、米国議会はフィリピンへの新たな安全保障支援として25億ドルを承認し、日本からも政府安全保障能力強化支援(OSA)による沿岸監視レーダーが供与される。
- 南シナ海情勢 2025 - 日本安全保障戦略研究所(SSRI) 中国とASEANは、南シナ海における行動規範の交渉が2026年中に完了することへの期待を示している。
- トランプ大統領、インド太平洋エネルギー会議を3月に東京で開催すると発表 - ARAB NEWS 2026年3月14日と15日に東京で、ドナルド・トランプ米大統領の「国家エネルギー支配会議」が主催する第1回インド太平洋エネルギー安全保障閣僚会合と日本とのビジネス・フォーラムが開催された。
- 米国、2026年の防衛協力の深化に向けた基盤を整備 - Indo-Pacific Defense FORUM 米国は2026年を通じてインド太平洋地域における防衛態勢の構築を継続しており、二国間および多国間演習の拡大、相互運用性イニシアチブや指揮統制の統合を拡大する可能性が高いとアナリストは指摘している。これには日本・韓国との継続的な三国間協力も含まれる。
- 「国家安全保障戦略」で読み解くトランプ政権の世界戦略(下) | 一般社団法人平和政策研究所 2025年12月に公表されたトランプ政権の国家安全保障戦略(NSS)は、価値による介入を戦略の中心に置かず、米国第一主義を掲げ、国家利益と主権を最優先する国益中心のリアリズムへの転換を強調している。
- 経済安全保障・地政学リスク2026 - KPMG International KPMGの「経済安全保障・地政学リスク2026」レポート(2026年1月30日時点の情報に基づく)は、2026年の注目テーマとして「不安定な日中関係」を挙げている。また、米中間の重要物資を巡る戦略的競争の影響が世界に広がり、特にAIに必要な半導体や重要鉱物において、米中間選挙前後にハイテク規制や重要鉱物を巡る経済安全保障問題が再浮上する可能性があると指摘している。
- 2026年地政学・経済安全保障 クリティカル・トレンド|レポート - オウルズコンサルティンググループ 2026年1月6日、中国商務部は軍民両用物資の対日輸出規制の強化を発表した。