東アジア海洋権益の現状と課題:南シナ海情勢の緊迫化と国際協調の動向

南シナ海における中国の新たな動き:スカボロー礁での自然保護区指定と米中間の緊張

2026年3月10日、中国政府は南シナ海のスカボロー礁(中国名:黄岩島)周辺に「国家級の自然保護区」を新設することを承認したと発表しました。この地域はフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内に位置しており、中国によるこの動きは、当該地域における実効支配の強化を意図するものとみられています。

その後、3月13日には、中国軍南部戦区の報道官が、スカボロー礁付近を航行した米海軍駆逐艦に対し「違法に中国の領海に侵入した」と主張し、監視および「追い払い」を行ったと発表しました。これに対し、米国側は国際法に則った航行であったとの見解を示しており、この事象は南シナ海における米中間の軍事的緊張と海洋権益を巡る対立が依然として存在している現状を明確に示しています。

周辺国の対応と多国間協力の進展

フィリピンは、広大な海洋領土の保護を重視しており、排他的経済水域(EEZ)内での多国間海上パトロールを優先し、海軍態勢の強化を進めています。2026年2月には、オーストラリア、フィリピン、米国の軍隊がフィリピンのEEZにおいて多国間海上協力活動を実施しました。フィリピンは、国連海洋法条約(UNCLOS)および2016年の国際裁判所の判決を海洋政策の基盤とし、法の支配に基づく海洋秩序の維持・強化に向けて米国との安全保障関係を強化し、地域内外のパートナーとの防衛協定を拡大しています。

また、日本においては、国土交通省が2026年3月13日に「次世代海洋モビリティビジョン」を取りまとめることを発表しました。これは、海洋ドローンを活用したデータ駆動型ブルーエコノミーの実現を目指すものであり、日本の海洋開発と技術革新への取り組みを示すものです。

東アジアにおける海洋資源権益を巡る地政学的展望

東アジアにおける海洋資源権益を巡る沿岸国の政治的動向は、中国による南シナ海での実効支配強化の動きと、それに対する周辺国(特にフィリピン)の防衛力強化、および国際法に基づく多国間協力の進展という二つの主要な軸で展開しています。中国のスカボロー礁での自然保護区指定や米軍艦船への対応は、同国の海洋強国化への意欲を示す具体的な事例です。これに対し、フィリピンが国際法を盾に多国間協力を強化する動きは、地域の安定性維持に向けた国際的な海洋ガバナンスの重要性を浮き彫りにしています。これらの動向は、地域の資源開発の可能性と、将来的な国際関係に多大な影響を与えるものとみられます。

Reference / エビデンス

  • 南シナ海情勢 2025 - 日本安全保障戦略研究所(SSRI) 2026年3月10日、中国政府は南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)周辺に「国家級の自然保護区」を新設することを承認したと発表しました。これはフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内に位置する地域であり、中国による実効支配強化の狙いがあるとみられています。また、3月13日には、中国軍南部戦区の報道官が、スカボロー礁付近を航行した米海軍駆逐艦が「違法に中国の領海に侵入した」と主張し、監視・「追い払い」を行ったと発表しました。これに対し、米軍は国際法に則った行動であったとの見解を示しています。
  • 《求是》杂志发表习近平总书记重要文章《推动海洋经济高质量发展》 - 新华网 2026年3月16日発行の『求是』誌に、習近平国家主席の重要論文「海洋経済の質の高い発展を推進する」が掲載されました。この論文は、海洋の効率的な開発と利用、海洋経済の質の高い発展の推進、そして中国特色の海洋強国建設の道を歩むことの必要性を強調しています。具体的には、トップレベルデザインと政策支援の強化、海洋科学技術の自主革新能力の向上、海洋産業の強化・優良化・大規模化、主要湾の全体計画の強化、海洋生態環境保護の強化、グローバル海洋ガバナンスへの深い関与という6つの重点分野が挙げられています。
  • 第一观察丨领悟总书记推动海洋经济发展の大思路 - 新華網 習近平国家主席の論文は、海洋経済の質の高い発展に向けた「五つのより重視すべき点」として、イノベーション駆動、効率的な協同、産業更新、人海調和、協力ウィンウィンを挙げています。また、2025年の全国海洋生産総額は11兆180億元に達し、海洋製造業が継続的に貢献し、海洋新興産業が発展していることが示されています。
  • フィリピン、多国間作戦の拡大を通じて海軍態勢を強化 - Indo-Pacific Defense FORUM フィリピンは、広大な海洋領土を保護するため、多国間パトロールを優先し、海軍態勢を強化しています。2026年2月には、オーストラリア、フィリピン、米国の軍隊がフィリピンの排他的経済水域において多国間海上協力活動を実施しました。フィリピンは、国連海洋法条約(UNCLOS)に基づき、2016年の国際裁判所の判決を海洋政策の基盤とし、米国との安全保障関係を強化し、地域内外のパートナーとの防衛協定を拡大しています。
  • 総合政策:新着情報一覧 - 国土交通省 国土交通省は2026年3月13日、「次世代海洋モビリティビジョン」について取りまとめることを発表しました。これは、第13回海における次世代モビリティに関する産学官協議会(令和7年度第5回)の開催を通じて行われ、海洋ドローンでデータ駆動型ブルーエコノミーを拓くことを目指しています。