北米エネルギー政策の最新分析:米国の規制転換とカナダの輸出戦略

北米におけるエネルギー政策の二極化:規制緩和と輸出強化の動き

2026年3月10日、米国アリゾナ州では再生可能エネルギー標準・料金(REST)規則が撤廃され、国内における環境規制緩和の動きが確認されました。これに対し、3月11日にはカナダの天然資源大臣が、グローバルなエネルギー安定化と輸出能力強化へのコミットメントを表明しました。

同日、国際エネルギー機関(IEA)加盟国が緊急石油備蓄の市場供給に合意し、カナダもこれに参加する意向を示しました。これらの対照的な動きは、北米におけるエネルギー政策が、国内の規制見直しと国際的な供給責任の強化という、二極化した調整局面にあることを示唆しています。

米国:国内環境規制の転換と市場への影響

2026年3月10日、アリゾナ州公益事業委員会(ACC)は、2006年に採択された再生可能エネルギー標準・料金(REST)規則を撤廃しました。ACCはこの決定について、これらの義務付けがもはや不要であり、コストが正当化されないためと説明しています。

委員会は、REST規則が再生可能エネルギー資源の高コスト契約や、全ての顧客クラスから徴収されるインセンティブにより、料金負担者に大きな財政的負担をもたらしたと判断しました。また、REST規則がすでに達成された主要電力会社の年間再生可能エネルギー要件をさらに増加させるものではないため、もはや効果的ではないと結論付けました。この動きは、米国内の州レベルにおけるエネルギー政策、特に環境規制に関する決定が、エネルギー市場に影響を与える可能性を示しています。

カナダ:グローバル市場でのエネルギー供給国としての役割強化

2026年3月11日、カナダ天然資源大臣ティム・ホジソン氏は、中東での軍事行動によって引き起こされたエネルギー価格の高騰に対応するため、カナダが世界の原油コスト引き下げに「貢献する」意向を表明しました。大臣は、同盟国が不安定な世界において安定した信頼できるエネルギー供給国を求めていることを強調し、カナダが国内外のエネルギー安全保障を強化するため、輸出能力の増強と多様化に努めていると述べました。

カナダ政府は、主要プロジェクトの迅速化、カナダ・アルバータ州間の覚書、その他の財政的手段、規制の合理化を通じて、輸出能力の増強と多様化を進めていると説明しています。同日、IEA加盟国は、中東紛争による供給途絶に対応するため、緊急備蓄から4億バレルの石油を市場に供給することに全会一致で合意し、カナダもこのIEA史上最大の緊急共同行動に参加する意向を示しました。

IEAの月次石油市場レポート(3月12日発表)によると、中東紛争は世界の石油市場に供給途絶をもたらしていますが、非OPEC+生産国からの増産により一部相殺される見込みです。カナダは、世界のエネルギー安定化を支援する主要なエネルギー生産国および輸出国としての役割を担っています。

EIA短期エネルギー見通し:北米の生産と価格動向

米国エネルギー情報局(EIA)は2026年3月10日、最新の短期エネルギー見通し(STEO)を発表しました。この見通しによると、米国の原油生産量は2026年に日量平均1,360万バレルに増加すると予測されています。また、2025年の生産予測は日量約0.1%減の1,358万バレルに修正されました。

米国の市場向け天然ガス生産量の予測は、2026年3月のSTEOで予測期間のほとんどで上方修正されており、天然ガス液(NGLs)の生産予測も強い上昇傾向を示しています。ブレント原油のスポット価格は、中東紛争の勃発後、3月9日には1バレルあたり94ドルに達し、3月には平均103ドル/バレルであったと報告されています。

米国では、2026年に石炭火力発電が7%減少すると予測されており、再生可能エネルギー源からの発電が増加する見込みです。天然ガス在庫は、2025年から2026年の引き出しシーズン(11月~3月)を5年平均を3%上回る1兆900億立方フィート強で終了しました。

政治的調整と将来への示唆

米国アリゾナ州における再生可能エネルギー基準の撤廃と、カナダによるエネルギー輸出強化へのコミットメントは、北米におけるエネルギー政策が、それぞれの国内経済的優先事項、環境目標、および地政学的状況に対応して調整されていることを示しています。

米国の規制緩和の動きは国内のエネルギー生産を促進する可能性があり、一方、カナダの輸出強化戦略はグローバルなエネルギー安全保障に貢献する可能性を秘めています。これらの政策は、北米のエネルギー市場における投資動向、および排出量削減目標に影響を与える可能性があります。EIAの短期エネルギー見通しが示す米国の原油生産増加予測や、再生可能エネルギーへの移行の兆候は、この地域のエネルギーミックスが変化し続けることを示唆しています。エネルギーアナリストは、これらの政策調整が今後の市場動向に与える影響を注視する必要があるでしょう。

[ Advertisement ]

Reference / エビデンス

  • Energy Minister pledges Canadian contribution of oil reserves | CTV National News for March 11, 2026 - YouTube 2026年3月11日、カナダの天然資源大臣ティム・ホジソンは、中東での軍事行動によって引き起こされたエネルギー価格の高騰を抑制するため、カナダが世界の原油コスト引き下げに「貢献する」と述べました。彼は、同盟国が不安定な世界で安定した信頼できるエネルギー供給国を求めていることを強調し、カナダが国内外のエネルギー安全保障を強化するために輸出能力を増強・多様化する努力をしていると述べました。
  • Statement from the Minister of Energy and Natural Resources in support of strengthening global energy stability - Canada.ca 2026年3月11日、カナダ天然資源大臣は、中東紛争とホルムズ海峡の混乱による世界的なエネルギー市場のボラティリティが高まる中、カナダが主要なエネルギー生産国および輸出国としてエネルギー安定化を支援する立場にあると表明しました。カナダ政府は、主要プロジェクトオフィスを通じたプロジェクトの迅速化、カナダ・アルバータ州間の覚書、その他の財政的手段、規制の合理化を通じて、輸出能力の増強と多様化、国内エネルギー安全保障の強化、および世界中の同盟国への支援を進めていると述べました。カナダは、世界のエネルギー安全保障に関する多国間行動を支持し、参加するとしています。
  • Update on IEA collective action decision of 11 March 2026 - News 2026年3月11日、IEA加盟国は、中東紛争による供給途絶に対応するため、緊急備蓄から4億バレルの石油を市場に供給することに全会一致で合意しました。これはIEA史上最大の緊急共同行動であり、アジア・オセアニア地域の加盟国は直ちに、アメリカ大陸およびヨーロッパの加盟国は3月末から供給を開始する予定です。
  • Oil Market Report - March 2026 – Analysis - IEA 2026年3月12日に発表されたIEAの月次石油市場レポートによると、中東紛争は世界の石油市場に史上最大の供給途絶をもたらしています。IEA加盟国は3月11日に緊急備蓄から4億バレルの石油を市場に供給することに合意しました。世界の石油供給は3月に800万バレル/日減少すると予測されていますが、非OPEC+生産国からの増産により一部相殺される見込みです。2026年には世界の石油供給が平均110万バレル/日増加すると予測されており、その全てが非OPEC+生産国によるものです。
  • Energy Law: Month in Review - March 2026 | Dorsey & Whitney LLP - JDSupra 2026年3月10日、アリゾナ州公益事業委員会(ACC)は、2006年に採択された再生可能エネルギー標準・料金(REST)規則を撤廃しました。ACCは、これらの義務付けがもはや不要であり、コストが正当化されないと説明しました。ACCは、REST規則が再生可能エネルギー資源の高コスト契約や、全ての顧客クラスから徴収されるインセンティブにより、料金負担者に大きな財政的負担をもたらしたと判断しました。また、REST規則は、すでに達成された3大電力会社の年間再生可能エネルギー要件をさらに増加させるものではないため、もはや効果的ではないと結論付けました。
  • Short-Term Energy Outlook: March 2026 - dshort - Advisor Perspectives 2026年3月12日に発表された米国エネルギー情報局(EIA)の最新の短期エネルギー見通し(STEO)では、米国の原油生産量の短期的な予測はわずかに減少しましたが、長期的な見通しは前月比で大幅に増加しました。2025年の生産予測は日量約0.1%減の1,358万バレルに修正されました。米国の市場向け天然ガス生産量の予測は、2026年3月のSTEOで予測期間のほとんどで上方修正されました。天然ガス液(NGLs)の生産予測は、2026年3月のSTEOで強い上昇傾向を示しています。
  • EIA releases latest Short-Term Energy Outlook amid Middle East conflict 2026年3月10日、米国エネルギー情報局(EIA)は最新の短期エネルギー見通しを発表しました。この見通しでは、中東紛争の勃発後、ブレント原油のスポット価格が急騰し、3月9日には1バレルあたり94ドルに達しました。EIAは、ブレント原油価格が今後2ヶ月間は95ドル/バレルを超えて推移し、2026年第3四半期には80ドル/バレルを下回り、年末までに約70ドル/バレルになると予測しています。米国の原油生産量は、2026年に日量平均1,360万バレル、2027年には日量1,380万バレルに増加すると予測されています。また、2026年には米国の石炭火力発電が7%減少すると予測されており、再生可能エネルギー源からの発電が増加する見込みです。
  • Canada's Energy Future 2026年3月10日、カナダ2020は「エネルギー超大国を築く:カナダのエネルギーの未来」と題する政策会議を開催しました。この会議は、政策立案者、業界リーダー、イノベーターを集め、カナダが経済成長、国家安全保障、そして急速に変化する世界のエネルギー情勢におけるリーダーシップを推進するために、エネルギー資源をいかに責任を持って活用できるかを探ることを目的としていました。議論では、エネルギーインフラの解放、在来型および新興エネルギー源の支援、グリッドの近代化、排出量削減のための技術導入に必要な政策が検討されました。
  • Short-Term Energy Outlook (STEO) - EIA 2026年3月のEIA短期エネルギー見通しによると、ブレント原油スポット価格は3月に平均103ドル/バレルで、2026年第2四半期には115ドル/バレルでピークに達すると予想されています。その後、生産停止が徐々に緩和されるにつれて価格は下がると見られています。2026年の小売ガソリン価格は4月に月間平均で約4.30ドル/ガロンでピークに達し、年間平均で3.70ドル/ガロンを超えると予測されています。ディーゼル価格は4月に5.80ドル/ガロンを超え、2026年には平均4.80ドル/ガロンになると予測されています。天然ガス在庫は2025-2026年の引き出しシーズン(11月~3月)を5年平均を3%上回る1兆900億立方フィート強で終了しました。