グローバルサウスと重要鉱物:国家戦略とサプライチェーン再編の動き
日米、重要鉱物サプライチェーン強化への協力動向
重要鉱物資源の安定供給を巡る国際的な協力が加速しています。2026年3月9日のEY Japanのレポートでは、米国、EU、日本の協力加速が重要鉱物施策として取り上げられました。米国は2月2日に、100億ドル規模の官民パートナーシップによる戦略的重要鉱物備蓄制度「プロジェクト・ヴォルト」を立ち上げており、サプライチェーンの強靭化に向けた取り組みを進めています。
グローバルサウス諸国の資源ナショナリズムと供給戦略
グローバルサウス諸国では、資源ナショナリズムの動きが顕著です。世界最大のニッケル生産国であるインドネシアは、国内での精錬・加工による高付加価値化を国家戦略の柱に据え、2000年代以降、未加工鉱石の輸出禁止と国内加工の義務化を段階的に導入してきました。2026年1月には、インドネシアが2026年のニッケル生産量を34%削減する方針を示唆したことで、ニッケル価格は一時的に反発しました。しかし、政府が鉱業割当量に関する詳細を提供しなかったため、市場の信頼感は限定的となりました。
また、チリでは2023年4月20日にリチウム産業の国有化計画が発表されました。これは国内のリチウム事業の経営権を国営企業に移管する方針であり、主要鉱山企業は概ね操業を継続すると見られていますが、資源ナショナリズムの方向性を示す動きとして注目されています。
主要国・地域による多角的な重要鉱物確保戦略
各国・地域は重要鉱物の確保に向けた多角的な戦略を展開しています。米国は2026年2月4日に「2026年重要鉱物閣僚会合」を開催し、54カ国および欧州委員会代表を招集して世界市場の再構築を打ち出しました。この会合では、J.D.バンス副大統領が同盟国や友好国による「重要鉱物特恵貿易圏」の創設を提案し、生産の各段階で最低価格を設定し、公正な市場価値を反映した市場構築を目指す考えを示しました。
カナダ連邦政府は、2026年3月2日にカナダ探鉱者・開発者協会(PDAC2026)大会で、重要鉱物生産同盟に基づき新たに30件のパートナーシップと投資案件を発表しました。これにより、12の国際パートナーとともに121億カナダドル規模の資金動員が見込まれています。
ブラジルは2026年3月初旬にトロントで開催されたPDAC 2026において、総額約55億ドル規模の35件の重要鉱物プロジェクトを提示しました。国内での加工・精錬による付加価値創出を軸に、国際的な投資誘致を図る動きを見せています。
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- インドネシア、ニッケル政策で好悪交錯 輸出関税? 生産拡大? 国際価格も乱高下 - MIRU 2026年3月27日、インドネシア政府のニッケル政策は輸出関税の発表と生産枠拡大の示唆が混在し、ロンドン金属取引所(LME)のニッケル価格が乱高下した。インドネシアは世界のニッケル生産の過半を占める主要生産国である。
- チリのリチウム産業に関する最新情報:ボリッチ大統領の計画は国有化と呼べるものではない チリのボリッチ大統領は2023年4月20日にリチウム産業の国有化計画を発表したが、これは全面的な国家管理には至らず、主要鉱山企業は概ね操業を継続すると見られている。
- チリ大統領、リチウム産業を国有化へ - 財経新聞 チリは2023年4月20日、国内のリチウム産業を国有化すると発表し、国内のリチウム事業の経営権を国営企業に移管する方針を示した。
- 重要鉱物、複数国貿易協定へ協議=対米投融資 - リスク対策.com 2026年3月19日、日米両政府は重要鉱物の安定供給に向けた複数国間の貿易協定の具体化を進める行動計画を策定したと発表した。また、南鳥島周辺海域のレアアース開発に関する協力覚書も締結された。
- ニッケルが2年以上ぶりの高値から急落 2026年1月、インドネシアが2026年の予算でニッケル生産量を34%削減することを提案したことで、ニッケル価格は一時的に反発したが、政府が鉱業割当量に関する詳細を提供しなかったため、信頼感が制限された。
- 最初から「日本の新幹線」を選べばよかったのに…日本を裏切り、習近平にすがるインドネシア新幹線の末路(プレジデントオンライン) - Yahoo!ファイナンス インドネシア政府は、加工前のニッケル輸出を禁止し、国内の精錬能力を高めて電気自動車(EV)バッテリーや完成車まで国内生産する戦略を進めている。
- 加:連邦政府、重要鉱物分野で30件の新たなパートナーシップを締結 - JOGMEC JOURNAL 2026年3月2日付けのプレスリリースによると、カナダ連邦政府はカナダ探鉱者・開発者協会(PDAC2026)大会で、重要鉱物生産同盟に基づき新たに30件のパートナーシップと投資案件を発表し、12の国際パートナーとともに121億カナダドル規模の資金動員が見込まれる。
- ニッケルが2年以上ぶりの高値から急落 - FastBull インドネシアが2026年にニッケル鉱石生産を削減することを提案したことで、ニッケル価格は8カ月ぶりの安値から反発し、一時1.5%上昇した。
- 深海鉱物資源開発で協力覚書 日米首脳会談 重要鉱物など協力強化で一致 サプライチェーン強靱化で行動計画も - 環境新聞 2026年3月24日、日米首脳会談で重要鉱物サプライチェーン強靱化の日米行動計画が取りまとめられ、南鳥島周辺海域のレアアース泥を含む深海鉱物資源開発に関する協力覚書が締結された。
- 日米、重要鉱物開発で協力強化へ - ライブドアニュース - Livedoor 2026年3月19日、日米両政府は重要鉱物分野の協力強化に向けた文書を発表し、共同開発の対象として三菱マテリアルなど日本企業も参画する計13事業を例示した。
- インドネシア(3)政府が注力する鉱物資源・ニッケル産業の下流化 | ASEAN主要国の産業政策と企業によるサプライチェーン対応 - ジェトロ インドネシア政府は2000年代以降、鉱物資源の高付加価値化(下流化)を国家戦略の柱に据え、未加工鉱石の輸出禁止と国内での精錬・加工の義務化を段階的に導入してきた。
- 米日両政府、アトラス・リチウムのブラジルプロジェクトへの資金提供を検討 - Investing.com 2026年3月20日に日本の経済産業省と外務省によって発表された日米Critical Mineralsプロジェクト協力に関する共同ファクトシートに、アトラス・リチウム・コーポレーションのブラジルにおけるネベスプロジェクトが含まれ、両国政府が財政支援を検討していることが示された。
- 米国、重要鉱物市場再構築へ「2026年重要鉱物閣僚会合」を開催 - CRDS 2026年2月4日、米国は「2026年重要鉱物閣僚会合」を開催し、54カ国および欧州委員会代表を招集して重要鉱物およびレアアースの世界市場再構築を打ち出した。
- 【2026年4月3日】アフリカ関連重要ニュース|コーヒーと万年筆 - note 2026年3月、豊田通商は日本のエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の権利の一部を承継する形で、ナミビアのロフダル重レアアースプロジェクトに追加投資を決定した。
- 重要鉱物=55億ドル規模の投資誘致=国内加工・精錬で付加価値創出へ - ブラジル日報 2026年3月初旬にカナダ・トロントで開催されたPDAC 2026において、ブラジルは総額約55億ドル規模の35件の重要鉱物プロジェクトを提示し、国内での加工・精錬による付加価値創出を軸に投資誘致を図った。
- 日米、重要鉱物の供給網強化に行動計画 価格下限の導入に焦点 - ニューズウィーク 2026年3月19日、日米は中国への依存を低減させるため、重要鉱物やレアアースの代替調達先を開発する取り組みに関する行動計画を発表し、特定の鉱物を対象とした価格下限措置の導入に焦点を当てた。
- 米国務省、重要鉱物閣僚会合を初開催、バンス副大統領が重要鉱物特恵貿易圏の創設を提案 2026年2月4日に開催された米国務省の重要鉱物閣僚会合で、J.D.バンス副大統領は同盟国や友好国による「重要鉱物特恵貿易圏」の創設を提案し、生産の各段階で重要鉱物の最低価格を設定し、公正な市場価値を反映した市場を構築すると説明した。
- 【2026年3月24日】アフリカ関連重要ニュース|コーヒーと万年筆 - note 2026年3月23日、伊藤忠商事と独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、南アフリカのプラチナグループメタル(PGM)鉱山であるプラットリーフ鉱山拡張プロジェクトに対し追加投資を行うことを発表した。
- 日豪連携で強める重要鉱物供給網(2)豪州重要鉱物産業の現在地 | 高まる経済安全保障リスク、各国・地域の自律性向上と不可欠性確保に向けた戦略とは - 特集 - 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ 2026年3月23日のレポートによると、日本が重要鉱物を安定的に確保するためには、資源が豊富で関係の深いオーストラリアとの供給網(サプライチェーン)強靭化が不可欠である。
- サステナビリティ情報開示のグローバル動向2026年3月号 | EY Japan 2026年3月9日のEY Japanのレポートでは、米・EU・日本の協力加速などを含めた重要鉱物施策が取り上げられ、米国が2月2日に立ち上げた100億ドル規模の官民パートナーシップによる戦略的重要鉱物備蓄制度「プロジェクト・ヴォルト」が紹介された。
- 【2026年4月7日】アフリカ関連重要ニュース|コーヒーと万年筆 - note 2026年4月5日、コンゴ民主共和国(DRC)政府は米国からの「第三国送還者」を受け入れることで米国政府と合意し、これは米国がDRCの重要鉱物(コバルト、銅など)へのアクセスを確保する取り組みと並行して進められている。
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