国際法人税改革最前線:英国・ベトナム動向から読み解くグローバルミニマム税の進展と企業戦略

国際法人税改革の最新動向:英国とベトナムの動き

2026年3月11日、英国歳入関税庁(HMRC)は、2024-25年度における移転価格税制および迂回利益税(DPT)による税収が、前年度からほぼ倍増し、33億8,700万ポンドに達したと発表しました。これは、解決件数のわずかな増加にもかかわらず達成されたもので、一件当たりの平均税収が大幅に増加したことを示しています。また、本日2026年3月12日には、ベトナムにおいて新しい法人所得税通達(Circular No. 20/2026/TT-BTC)および関連政令が施行され、2025年の課税期間から遡及適用されることとなりました。この通達は、環境対策費や技術・DX投資などの控除対象支出の具体化、税制優遇と課税売上高の算定時期の指定、外国企業に対する法人所得税ルールの整備、拡張投資プロジェクトの登録資本額の通知義務などを規定しています。これらの動きは、各国が税源確保に積極的に取り組む姿勢と、国際法人税ルール策定が多国籍企業の税務戦略に与える影響の大きさを明確に示しています。

OECDグローバルミニマム税(Pillar Two)の進展と各国の対応

グローバルな国際法人税ルールの策定は、OECD/G20包摂的枠組みが2026年1月5日に合意した「Side-by-Side Package」によって新たな段階に入りました。このパッケージは、15%の最低実効税率を維持しつつ、多国籍企業(MNEs)のコンプライアンス負担軽減と制度の確実性向上を目的とした簡素化メカニズムとセーフハーバーを導入しています。具体的には、恒久的な簡易実効税率セーフハーバー、移行期間国別報告(CbCR)セーフハーバーの1年延長、および実質ベース租税インセンティブセーフハーバーが正式に導入されました。この合意により、OECD中央記録において「適格Side-by-Side制度」を持つ唯一の国として米国が挙げられています。これにより、米国に本社を置くMNEsは、特定の条件下で所得合算ルール(IIR)および軽課税所得ルール(UTPR)に基づく追加課税から免除される可能性があります。日本においては、2026年1月23日に閣議決定された2026年度税制改正で、グローバルミニマム税に関する国際合意を踏まえた措置が見直され、盛り込まれました。また、2025年度税制改正では、グローバルミニマム課税の軽課税所得ルール(UTPR)および国内ミニマム課税(QDMTT)の法制化が行われ、令和8年3月期決算から適用が開始されています。PwC税理士法人は、このような状況に対応するため、2026年3月6日にグローバルミニマム課税に関する実務対応ガイドを発行しました。

多国籍企業の税務戦略への影響と今後の展望

グローバルミニマム税の導入と各国での具体的な税制改正は、多国籍企業の税務戦略に広範な影響を与えています。英国歳入関税庁による移転価格税制の税収増加やベトナムでの新しい法人所得税通達の施行は、各国政府が積極的に税源確保に取り組んでいる現状を明確に示しています。このような新たな国際税制環境に適応するため、多国籍企業はコンプライアンス体制の強化、税務リスクの厳格な評価、および税務戦略の抜本的な見直しが不可欠となっています。企業は、複雑化する国際税務ルールの動向を継続的に注視し、その変化に迅速に対応する体制を構築することが求められます。

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Reference / エビデンス

  • Global Anti-Base Erosion Model Rules (Pillar Two) - OECD 2026年1月5日、OECD/G20包摂的枠組みは、グローバルミニマム税(Pillar Two)の適用を容易にするための恒久的なセーフハーバー(QDMTT導入国向け)を導入し、多国籍企業と税務当局のコンプライアンスと管理を簡素化すると発表しました。GloBEルールは、実効税率が最低税率を下回る場合に、管轄区域で追加課税を課す協調的な課税システムを提供します。
  • OECD發布Pillar Two雙軌制配套措施| 勤業眾信 - Deloitte 2026年1月9日、OECDはPillar Twoの「Side-by-Side Package」を発表し、147のOECD/G20包摂的枠組みメンバーがグローバルミニマム税の推進方向で合意したことを示しました。このパッケージは、15%の最低実効税率を維持しつつ、簡素化メカニズムとセーフハーバーを導入し、制度の確実性を高め、多国籍企業のコンプライアンスコストを削減することを目的としています。これには、永久的な簡易実効税率セーフハーバーの導入、移行期間国別報告セーフハーバーの2027年までの延長、および実質ベース租税インセンティブセーフハーバーの正式導入が含まれます。
  • 2026年度税制改正 - グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置 2026年1月23日、日本政府は、グローバルミニマム課税と米国を含む特定の国の独自のミニマム課税制度との共存に関する国際合意(2026年1月5日成立)に基づき、2026年度税制改正において「グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置」を見直すことを閣議決定しました。
  • 2026(R8)年度税制改正:グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置 - Deloitte 2026年2月9日、デロイトトーマツ税理士法人は、2026年1月23日に閣議決定された「グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置」について解説するJapan Tax Newsletterを発行しました。これは、国際課税システムの安定化の観点から、グローバルミニマム課税と米国を含む特定の国の制度との共存に関する2026年1月5日の合意に基づくものです。
  • ベッセント米財務長官、在米企業のグローバル・ミニマム課税適用外を歓迎する声明発表(米国) 2026年1月5日、OECDが発表した「Side-by-Side」協定により、米国に本社を置く多国籍企業はグローバルミニマム課税の適用外となる合意が成立し、スコット・ベッセント米財務長官はこれを歓迎する声明を発表しました。この「SbSセーフハーバー」制度は、米国が主張する、本社設立国で一定基準を満たす企業に対し、所得合算ルール(IIR)および軽課税所得ルール(UTPR)の不適用を認めるものです。
  • OECD Pillar Two Side-by-Side System and New Safe Harbors | Insights | Mayer Brown 2026年1月15日の情報によると、OECDの「Side-by-Side Package」は、適格なSide-by-Side制度を持つ管轄区域に最終親会社(UPE)がある多国籍企業グループが、IIRとUTPRに基づく追加課税をゼロとみなすことを選択できる「SbSセーフハーバー」を導入しました。2026年1月1日現在、OECD中央記録において米国が唯一の適格Side-by-Side制度を持つ国として挙げられています。
  • グローバル・ミニマム課税に係る実務対応ガイド | PwC Japanグループ PwC税理士法人は2026年3月6日、2024年4月から日本で導入されたグローバルミニマム課税(国際最低課税額に対する法人税)に関する実務対応ガイドを発行しました。日本の法制度は2023年度税制改正で整備され、2024年度および2025年度税制改正で追加の法整備が行われています。
  • Worldwide Tax Summary 2026年2月号 - PwC PwCの2026年2月号Worldwide Tax Summaryによると、2026年1月5日にOECDはBEPS包摂的枠組みの147メンバー国・地域が、第2の柱グローバルミニマム課税ルール(GloBEルール)に基づく新たな執行ガイダンスパッケージ「Side-by-Side Package」に合意したことを公表しました。このパッケージは、恒久的な簡易実効税率(ETR)セーフハーバー、移行期間国別報告(CbCR)セーフハーバーの1年延長、実質ベースインセンティブ(税恩典)セーフハーバー、適格国に係るSide-by-Side(SbS)セーフハーバーおよび最終親事業体(UPE)セーフハーバーを含みます。2026年1月5日現在、米国はOECD中央記録で適格要件を満たす唯一の国です。
  • 2026(R8)年3月決算における税務上の留意事項 | デロイト トーマツ グループ - Deloitte デロイトトーマツグループの2026年3月2日の情報によると、令和8年3月期決算では、主に令和7年度税制改正の内容が初めて適用されます。国際課税の分野では、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」で取りまとめられたグローバルミニマム課税(第2の柱)について、軽課税所得ルール(UTPR)および国内ミニマム課税(QDMTT)の法制化が行われました。
  • 英国歳入関税庁、移転価格および迂回利益税に関する年次統計を発表 | EY Japan 2026年3月11日、英国歳入関税庁(HMRC)は、2024-25年度の移転価格および迂回利益税(DPT)に関する統計を発表し、移転価格による税収が33億8,700万ポンドに大幅に増加し、前年度からほぼ倍増したことを明らかにしました。これは、解決件数のわずかな増加で達成されており、1件当たりの平均税収が大幅に増加したことを示しています。
  • 【税務アップデート】新・法人所得税通達(20/2026/TT-BTC)施行のご ... - News detail 2026年3月12日、ベトナムで新しい法人所得税通達(Circular No. 20/2026/TT-BTC)および関連政令が施行され、2025年の課税期間から遡及適用されます。この通達は、旧通達を全面的に置き換え、環境対策費、技術・DX投資、社会貢献・寄付などの控除対象支出の具体化、税制優遇と課税売上高の算定時期の指定、外国企業に対する法人所得税ルールの整備、拡張投資プロジェクトの登録資本額の通知義務などを規定しています。