欧州移民政策の動向と労働市場への初期影響:LIBE委員会の報告書採択と経済予測

欧州移民・難民政策の動向:送還合理化の動き

2026年3月9日、欧州議会のLIBE委員会は、EU域内に不法滞在する移民の送還を合理化する新たなEU規則に関する報告書を採択しました。この草案は、ドイツの送還命令をシェンゲン圏全体で執行可能にし、送還プロセスを迅速化することを目指しています。同時に、適正手続きに関する懸念も提起されています。ビジネス団体は、この改革がドイツの広範な労働移民に関する議論を安定させることに期待を示しています。

また、2026年3月12日には、欧州理事会のアンソニオ・コスタ議長が、3月19日から20日に開催される会議への招待状を発行しました。この会議では、移民が主要な議題の一つとして議論される予定です。

労働市場への初期影響と地域差

2026年3月4日に発表されたEY欧州経済アウトルックによると、今後4年間でユーロ圏の労働力供給はわずかに増加すると予測されており、これは主に移民と労働参加率のさらなる改善に起因するとされています。一方で、ドイツ、ギリシャ、および多くの中東欧経済圏では、労働年齢人口の減少が労働参加率の増加を上回り、労働力供給が減少する見込みです。

地域別に見ると、アイルランド、北欧諸国、スペイン、オランダ、英国、スイスでは、主に移民によって労働力供給が拡大していることが指摘されています。

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Reference / エビデンス

  • EU lawmakers vote to make it easier to set up migrant detention centers outside the bloc 2026年3月26日、欧州議会議員は、EU域外に新たな移民収容施設(「リターンハブ」)を設置し、亡命申請を却下された人々を送還しやすくする計画を賛成389票、反対206票、棄権32票で承認しました。これにより、EU加盟国は、亡命を拒否された移民を本国ではなく、EU域外に建設される施設に送還するための交渉を独自または小規模な連合で行うことが可能になります。すでにギリシャ、ドイツ、オランダ、オーストリア、デンマークは、アフリカ諸国の政府と、亡命を拒否された移民を収容する施設をホストするための交渉に入っています。人権団体は、この投票を「難民の権利にとって歴史的な後退」と批判しています。
  • The European Parliament approves at first reading the regulation on the return/deportation of third-country nationals irregularly present in EU member states. Stricter rules and fewer guarantees - Centro Diritti Umani 2026年3月26日、欧州議会は、EU域内に不法滞在する第三国国民の送還に関する規則案を承認しました。この措置は、2024年に採択された「移民・亡命に関する協定」の枠組みの一部であり、2026年夏から段階的に導入される予定です。この規則は、移民の出身国だけでなく、通過国や「安全な」第三国、またはEUが「リターンハブ」設置に関する協定を結んだ国も「送還国」として広く定義しています。
  • MEPs back plans for 'return hubs', raising fears of 'human rights black holes' - The Guardian 欧州議会が承認した計画では、EUに滞在する権利のない人々は最大2年間拘留されるか、専門家が「人権のブラックホール」となる可能性を指摘するオフショアセンターに送還される可能性があります。この法案は、亡命を拒否された人々やビザの期限を超過した人々をEUから排除するための「信頼できる強制送還政策」を確立することを目指しています。現在の法律では最大18ヶ月の拘留期間が認められていますが、新計画ではこれを延長し、送還決定を妨害した者には刑事罰を科すことや、生涯入国禁止措置を容易にすることも提案されています。
  • 27% drop in first-time asylum applications in 2025 - News articles - Eurostat ユーロスタットの2026年3月25日の発表によると、2025年のEUにおける初回亡命申請数は27%減少しました。スペインが最も多い141,000件(EU全体の21%)の初回亡命申請を受け入れ、次いでイタリア(126,600件、19%)、フランス(116,400件、17%)、ドイツ(113,200件、17%)、ギリシャ(55,400件、8%)が続きました。これら5カ国でEU全体の初回亡命申請者の83%を占めています。
  • Returns of migrants from the EU to third countries have risen by 13 per cent - Eunews ユーロスタットが2026年3月31日に発表したデータによると、2025年第4四半期にEUから第三国への移民送還数は、前年同期比で13%増加し、33,860人に達しました。同時に、EUからの退去命令を受けた第三国国民の数は6.1%減少しました。送還の大部分(58.9%)は自発的なものでしたが、イタリアは強制送還のみに依存しています。
  • EU Parliament committee fast-tracks new return rules for irregular migrants - VisaHQ 2026年3月9日、欧州議会のLIBE委員会は、不法移民の送還を合理化する新たなEU規則に関する報告書を採択しました。この草案は、ドイツの送還命令をシェンゲン圏全体で執行可能にし、送還を迅速化する一方で、適正手続きに関する懸念も提起しています。ビジネス団体は、この改革がドイツの広範な労働移民に関する議論を安定させると期待しています。
  • EY European Economic Outlook March 2026 2026年3月4日のEY欧州経済アウトルックによると、今後4年間でユーロ圏の労働力供給はわずかに増加すると予想されており、これは主に移民と労働参加率のさらなる改善によるものです。対照的に、ドイツ、ギリシャ、および多くの中東欧経済圏では、労働年齢人口の減少が労働参加率の増加を上回り、労働力供給が減少すると予測されています。アイルランド、北欧諸国、スペイン、オランダ、英国、スイスでは、主に移民によって労働力供給が拡大しています。
  • Fixing the EU Labour Shortage Before Politics Breaks It | The Economy 2026年3月27日の報告書によると、2026年初頭、EUは労働市場で大きな課題に直面し続けています。ドイツ連邦雇用庁のデータでは、1月にドイツの失業者が177,000人増加し、3,085,000人に達しました。ドイツ政府は、医療、建設、情報技術などの分野で不可欠な移民の流れを制限する可能性があります。
  • Migration Update - Wilfried Martens Centre for European Studies 2026年3月26日の更新情報によると、Funcasの調査では、スペインの近年の経済成長の47%が労働力としての移民の役割によって説明されています。移民がいなければ、スペインは経済をこれほど拡大できず、高付加価値部門の成長や、地元住民が恩恵を受けている高賃金の雇用創出も不可能だったとされています。
  • European Council Invitation: Middle East, Ukraine, Competitiveness, MFF - Changeflow 2026年3月12日、欧州理事会のアンソニオ・コスタ議長は、3月19日から20日に開催される会議への招待状を発行しました。この会議では、中東情勢の悪化、ウクライナ、戦略的競争力、多年度財政枠組み、防衛準備、そして移民が主要な議題として議論される予定です。
  • Migration and asylum: Member states agree on solidarity pool - PubAffairs Bruxelles 2026年3月13日、理事会は2026年の年間連帯プールの設立に関する政治的合意に達しました。この連帯プールは、EUの移民・難民協定の主要な要素の一つであり、移民の圧力下にある加盟国に効果的な支援を提供することを目的としています。2026年の連帯ニーズは、21,000人の再配置またはその他の連帯努力、あるいは4億2,000万ユーロの財政貢献を基準としています。キプロス、ギリシャ、イタリア、スペインが移民圧力下にあると評価され、連帯措置の恩恵を受けることができます。