東アジア半導体サプライチェーンの輸出管理:米国の新通商戦略と各国の動向

米国の新たな通商戦略と世界半導体市場の動向

2026年3月11日、米国通商代表部(USTR)は、半導体を含む製造業セクターにおける構造的過剰生産能力に関する1974年通商法第301条に基づく調査を開始しました。これに呼応するかのように、同日、米国半導体工業会(SIA)は、2026年1月の世界半導体売上高が825億米ドルに達し、前年同月比で46.1%の大幅な増加を記録したと発表しました。この成長は主にアジア太平洋地域と中国への売上高によって牽引されましたが、日本は唯一減少を記録しました。これらの事実は、東アジアの半導体サプライチェーンにおける輸出管理の構造が新たな局面を迎えていることを示唆しており、今後の国際的な半導体政策と市場動向に大きな影響を与える可能性があります。

米国の対中輸出管理と戦略的転換

米国は対中半導体輸出管理政策を強化しており、2026年3月8日付けのレポートでは、米国の輸出規制のさらなる強化が、中国の技術的自立化・国産化を加速させている状況が鮮明になっています。中国は全国人民代表大会においてAIや半導体産業の育成強化を表明しています。一方で、米国政府は2026年1月に中国向けAIチップ輸出の方針を転換しました。NVIDIAのH200など一部のAIチップの輸出を個別審査と25%の収益分配関税を条件に再開しています。中国側も、中国企業がこれらのチップを輸入する場合には一定数の国産チップを合わせて購入するよう求めており、これらは米中間の「管理された相互依存」戦略の意図を反映しているものと考えられます。

東アジア主要国の対応とサプライチェーンの再編

米国の輸出管理強化に対応し、中国は技術的自立と国産化を加速させています。2026年3月の全国人民代表大会では、AI・半導体産業の育成強化とともに、サプライチェーンの強靭性を重視する姿勢が示されました。日本は2025年7月より、14ナノメートル幅以下の先端半導体に必要な製造装置、露光装置、洗浄・検査装置など23品目を輸出管理の規制対象に新たに追加しました。これは中国の軍事技術開発を阻止するための日米欧の連携強化の一環です。また、2022年5月に成立し、2024年から段階的に施行されている経済安全保障推進法により、特定の重要技術や物資に関する輸出管理がさらに強化される可能性があります。台湾は、輸出管理と並行して国家安全法の改正を通じて「国家核心重要技術」の保護を大幅に強化しており、14ナノメートル未満のチップ製造プロセスや先端AIチップ設計などが保護対象に含まれています。国際的にパワー半導体を巡る競争が激化する中、中国の投資増加は米国の先端品関連半導体への貿易規制が大きく影響しており、日本のパワー半導体の対中輸出額は2023年をピークに微減傾向にあります。

構造的過剰生産能力と国際協力の課題

2026年3月11日にUSTRが開始した構造的過剰生産能力に関する301条調査は、半導体を含む製造業セクターに潜在的な影響を及ぼす可能性があります。この調査は、中国だけでなく、EU、韓国、台湾、日本といった東アジアの主要な半導体生産国・地域を対象としており、国際的なサプライチェーンにおける新たな貿易摩擦のリスクを高めています。各国が経済安全保障推進法などの国内法制を通じてサプライチェーンの強靭化を図る一方で、このような国際的な調査は、サプライチェーンの複雑化と分断を避けるためにも、国際的な連携と協調の必要性がより一層高まっている現状と課題を浮き彫りにしています。

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Reference / エビデンス