北米巨大IT企業規制の動向:独占禁止法とAIガバナンスの最前線

カナダ:Google独占禁止法訴訟における憲法上の異議申し立て却下

2026年3月4日から5日にかけて、カナダ競争審判所は、Googleがオンライン広告市場での支配的地位の濫用を巡る競争局の訴訟において、憲法上の異議申し立てを却下しました。Googleは、課される可能性のある最大910億カナダドルに上る金銭的罰則が「真の刑事罰」に該当し、自社の憲法上の権利を侵害すると主張していました。しかし、Andrew Little判事は、競争局が提案する行政上の金銭的罰則は、違反者を競争法に適合させることを目的としており、社会全体への不正を是正するものではないと判断し、Googleの主張を退けました。この決定により、競争審判所が反競争的行為を抑止するために行政上の金銭的罰則を命じる明確な権限を持つことが強化され、Googleに対する競争局の訴訟は継続されることになります。

米国:AI規制の連邦・州間の複雑な動向と期限到来

米国では、2025年12月の大統領令に基づき、2026年3月11日にAI規制に関する連邦政府の二つの重要な期限が設定されていました。一つは連邦取引委員会(FTC)がAIモデルに対するFTC法第5条(不公正かつ欺瞞的な行為または慣行の禁止)の適用に関する政策声明を発表すること、もう一つは商務省が「過酷な」州のAI法を特定する評価を公表することでした。2026年3月11日の期限が到来した時点で、これらの発表は確認されていません。これは、AI規制に関する連邦政府の動向に不確実性が存在することを示唆しています。これらの期限は、連邦政府がAI規制の国家政策フレームワークを確立し、州のAI法(例:コロラド州のAI法)が連邦政策と矛盾する場合に司法省AI訴訟タスクフォースが異議を唱える可能性を示唆しており、テック企業にとって規制の不確実性が高まっています。

北米における規制アプローチの比較と今後の展望

北米における巨大IT企業に対する規制アプローチを見ると、カナダでは特定の反競争的行為に対する司法判断において、行政上の金銭的罰則を命じる競争審判所の明確な権限が強化されるなど、具体的な措置が進展しています。一方で米国では、AI規制に関して連邦政府と州政府の間で政策の方向性や管轄権を巡る議論が進行中であり、一部の連邦政府の期限が到来した時点でも発表が確認されないなど、不確実性が存在します。また、2026年1月には米国国務省がEUのデジタル市場法(DMA)やデジタルサービス法(DSA)の草案作成に関与した一部の欧州当局者にビザ制限を課しており、これはDMAのような規制フレームワークの拡散を阻止しようとする米国の戦略的な動きと見られています。テック企業法務担当者にとって、これらの異なる規制アプローチはコンプライアンス戦略に新たな課題をもたらしており、今後の連邦政府および州政府の動向、そして国際的な規制動向が北米の規制環境に与える影響を継続的に注視する必要があります。

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Reference / エビデンス

  • Statement by Acting Commissioner of Competition: Competition Tribunal dismisses Google's constitutional challenge - Canada.ca 2026年3月4日、カナダ競争審判所は、Googleがオンライン広告における反競争的行為に対する訴訟で、憲法上の権利が侵害されたという主張を却下しました。この決定は、競争審判所が反競争的行為を抑止するために行政上の金銭的罰則を命じる明確な権限を持つことを強化し、Googleに対する競争局の訴訟が継続されることを意味します。
  • Competition Bureau Scores Big Win Against Google in Online Advertising Challenge 2026年3月4日の判決で、競争審判所のAndrew Little判事は、Googleが主張する最大900億カナダドルに上る可能性のある金銭的罰則が『真の刑事罰』に該当し、憲法上の権利を侵害するというGoogleの主張を退けました。判事は、競争局が提案する行政上の金銭的罰則は、違反者を競争法に適合させることを目的としており、社会全体への不正を是正するものではないと判断しました。
  • Google suffers setback in fight against Canada's competition watchdog - CityNews Winnipeg 2026年3月5日、カナダ競争審判所は、Googleがオンライン広告市場での支配力により損害を与えたとされる競争監視機関との争いにおいて、Googleの憲法上の異議申し立てを却下しました。Googleは、最大910億ドルの罰金が『真の刑事罰』に相当し、憲法上の権利を侵害すると主張しましたが、審判所はこれを退けました。
  • March 2026: Federal Deadlines That Will Reshape the AI Regulatory Landscape - Our Take 2025年12月の大統領令により、2026年3月11日までに、FTCはAIモデルへのFTC法第5条の適用に関する政策声明を発表し、商務省は『過酷な』州のAI法を特定する評価を公表することが義務付けられました。これらの期限は、連邦政府がAI規制の国家政策フレームワークを確立し、州のAI法が連邦政策と矛盾する場合に司法省AI訴訟タスクフォースが異議を唱える可能性を示しています。
  • Emerging Federal AI Policy: What to Know and How to Prepare | Baker Donelson - JDSupra 2026年4月2日時点で、2026年3月11日を期限とするFTCのAI政策声明および商務省の州AI法評価に関する公表は行われていません。これは、連邦政府のAI規制に関する動向に不確実性が存在することを示唆しています。
  • Canada introduces new tools for law enforcement to investigate threats and keep Canadians safe 2026年3月12日、カナダ政府は『合法的なアクセスに関する法律』(Bill C-22)を提出しました。この法案は、法執行機関とCSISがデジタル環境における脅威をより効率的に捜査するための新しいツールを提供し、国際的なパートナーとの協力も強化することを目的としています。
  • Scoping in the Tech Giants: Bill C-22's International Production Order and the Shift to a Less Privacy-Protective Cross-Border Disclosure System - Michael Geist 法案C-22は、カナダの裁判所が、GoogleやMetaなどの外国プラットフォームから国外に保管されている加入者情報や通信データを直接要求することを許可する新しいメカニズムを導入します。これは、国境を越えたデータ開示システムにおいて、プライバシー保護が低下する可能性を示唆しています。
  • The New Containment Doctrine: How the United States Is Using Trade to Stop Digital Regulation - CSIS 2026年1月、米国国務省はEUのデジタル市場法(DMA)およびデジタルサービス法(DSA)の草案作成に関与した5人の欧州当局者に対しビザ制限を課しました。これは、デジタル規制に対するトランプ政権のキャンペーンのエスカレーションであり、DMAのようなフレームワークの拡散を阻止しようとする米国の戦略を示しています。