2026年3月:中東情勢緊迫化と資源ナショナリズムが変えるグローバルサウスのエネルギー・投資環境
中東情勢緊迫化がグローバルサウスのエネルギー安全保障に与える衝撃
2026年2月末から3月上旬にかけて中東地域で紛争が勃発し、特にペルシャ湾地域での緊張激化はホルムズ海峡の事実上の閉鎖を引き起こしました。この情勢緊迫化は、世界のエネルギー市場に深刻な影響を及ぼしています。
3月には、欧州のエネルギー商品価格が前月比36.6%もの急騰を記録し、エネルギー価格全体では月間37.3%の上昇となりました。これは、イラン戦争によるホルムズ海峡の混乱が燃料供給への懸念を高め、原油だけでなく精製製品の買いを強めたためと分析されています。国連食糧農業機関(FAO)の食料価格指数も、中東紛争によるエネルギーコスト高騰を主因として上昇しています。
このエネルギー価格の急騰は、グローバルなエネルギーサプライチェーンの脆弱性を露呈させ、多くのグローバルサウス諸国にとってエネルギー安全保障上の大きな懸念となっています。日本も原油および液化天然ガス(LNG)価格の急騰によりエネルギーコストが直撃を受け、石油備蓄の活用、代替調達先の確保、原子力発電所の再稼働、そして需要抑制といった緊急対応の検討が不可避な状況にあります。
新興国の対応は多様であり、例えばブラジルは原油純輸出国として比較的高い耐性を示している一方で、エネルギー輸入依存度の高い南アフリカなどの国々は、原油価格の上昇とそれに伴う自国通貨の対ドルでの全面安により、特に大きな打撃を受けています。
戦略的鉱物資源を巡る新たな資源ナショナリズムと国際競争
戦略的鉱物資源の確保を巡る国際競争が激化する中、新たな資源ナショナリズムの波がグローバルサウスに押し寄せています。2026年3月までに米国は「FORGEイニシアチブ」を立ち上げ、アルゼンチン、モロッコ、フィリピンといったグローバルサウス諸国との二国間協定を通じて重要鉱物資源の確保を目指しています。これは、サプライチェーンの脆弱性を低減し、特定の国の市場支配に対抗することを目的としています。
一方、中国の主要なシンクタンクである中国社会科学院は、ラテンアメリカにおける「資源ナショナリズム」の再燃に警鐘を鳴らし、中国企業に対し政治的リスクへの対策強化を促しています。実際に、チリ、メキシコ、ボリビアでは特定の重要鉱物の国有化に向けた動きが見られ、これに対し中国企業が異議を申し立てる事例も発生しています。
重要鉱物における資源ナショナリズムは、現代の鉱業規制において決定的な特徴となりつつあります。各国政府は、技術インフラ、防衛能力、そしてエネルギー転換経路に不可欠なこれら重要鉱物の戦略的役割を認識し、関連政策の革新を推進しており、地政学的競争の主軸の一つとなっています。
政権交代と投資環境:グローバルサウスの多様な対応
中東情勢の緊迫化によるエネルギー価格の高騰と、重要鉱物資源を巡る資源ナショナリズムの動きは、グローバルサウスにおける投資環境に複雑な影響を与えています。地政学的リスクの増大と戦略的資源の重要性への認識が高まる中、各国政府の資源政策や外国投資に対する姿勢は変化しており、単なる政権交代に留まらない投資環境の変容が見られます。
このような状況下でも、グローバルサウス内での協力強化や新たな投資の動きも顕在化しています。例えば、2026年2月には拡大された11カ国体制での初のBRICSシェルパ会議がニューデリーで開催され、公衆衛生、災害リスク軽減、金融調整といった分野での実務的協力に焦点が当てられました。また、アラブ首長国連邦(UAE)のテクノロジーグループG42は、ベトナム企業とAIおよびクラウドインフラに最大10億ドルの投資を行う契約を締結し、技術分野での新たな連携が生まれています。
しかし一方で、中東紛争に起因するエネルギー価格の上昇は、多くのグローバルサウス諸国に経済的な負担を強いる可能性をはらんでいます。国際的な資源が安全保障支出や地政学的競争に転用されるリスクがあるため、開発機関がこうした状況における補償を十分に提供することが困難である現状も指摘されており、投資家はグローバルサウスが直面するリスクと、同時に存在する新たな機会を慎重に評価する必要に迫られています。
[ Advertisement ]Reference / エビデンス
- Monthly commodity prices update for March 2026 - PricePedia 2026年3月、欧州のPricePedia商品月間価格は前月比15%以上上昇し、特にエネルギー商品がペルシャ湾紛争の影響で36.6%急騰しました。これはパンデミック後のエネルギー危機で記録された月間上昇率を大きく上回ります。
- Commodity Price Watch: March 2026 | S&P Global 2026年2月末から3月上旬にかけて中東で戦争が勃発し、2026年の商品価格見通しは不確実性に満ちたものとなりました。エネルギー価格は大幅に上昇し、化学品やアルミニウムも影響を受けています。
- StoneX Commodity Index Market Report 2026年3月、エネルギー価格は月間37.3%上昇し、年初来56.0%の利益を記録しました。これはイラン戦争によるホルムズ海峡の混乱が原因で、燃料供給への懸念から原油よりも精製製品の買いが強まりました。
- FAO Food Price Index rises in March as Near East conflict raises energy costs 2026年3月、国連食糧農業機関(FAO)の食料価格指数は2ヶ月連続で上昇し、中東紛争の激化によるエネルギー価格高騰が主な要因となりました。
- 原油高・リスクオフ下での新興国の耐性は | 大和総研 2026年2月28日の米国によるイラン攻撃以降、原油価格が上昇し、新興国通貨は対ドルで全面安となりました。南アフリカは最も打撃が大きく、ブラジルは原油純輸出国として最も耐性が高いと評価されています。
- 2026年3月|国際情勢レポート - いい政治ドットコム 2026年3月、中東情勢の激震とホルムズ海峡の事実上の封鎖により、原油・LNG価格が急騰し、日本のエネルギーコストを直撃しました。日本は石油備蓄の活用、代替調達、原発再稼働、需要抑制などの緊急対応が不可避とされています。
- US Pursuit Critical Minerals Global South Impact March 2026 - The Green Blueprint 2026年3月までに、米国は「FORGEイニシアチブ」を通じてグローバルサウス諸国とのパートナーシップを強化し、重要鉱物資源の確保を目指しています。アルゼンチンやモロッコなどとの新たな二国間協定は、サプライチェーンの脆弱性を低減し、中国の市場支配に対抗することを目的としています。
- Centre amends Mineral Auction Rules to speed up mine operationalisation, boost transparency - The Tribune インド鉱山省は2026年3月30日に鉱物(競売)第二次改正規則を通知し、鉱山の迅速な稼働、透明性の向上、鉱業部門のビジネスのしやすさの向上を目指しています。この改正は、重要鉱物へのアクセスを強化し、国内サプライチェーンを強化することを目的としています。
- Chinese Scholar Warns of Latin America's 'Resource Nationalism,' Urging Firms to Brace for Political Risk - The China-Global South Project 中国の主要な公共政策シンクタンクである中国社会科学院の分析は、ラテンアメリカが「資源ナショナリズム」に回帰する傾向にあり、中国企業にリスク対策の強化を促しています。チリ、メキシコ、ボリビアでは、特定の重要鉱物の国有化の動きに対し、中国企業が異議を申し立てています。
- Resource Nationalism in Critical Minerals: Strategic Evolution and Investment Impact 重要鉱物における資源ナショナリズムは、現代の鉱業規制の決定的な特徴となっており、政府は技術インフラ、防衛能力、エネルギー転換経路における重要鉱物の役割を認識し、政策革新を推進しています。
- Global South Watch | March 2026 - India's World Magazine 2026年2月、BRICSのシェルパ会議がニューデリーで開催され、拡大された11カ国体制で公衆衛生、災害リスク軽減、金融調整における実務的協力に焦点が当てられました。また、UAEのテクノロジーグループG42は、ベトナム企業とAIおよびクラウドインフラに最大10億ドルを投資する契約を締結しました。
- When War Raises Prices, the Global South Pays the Bill - Diplomat magazine 戦争が価格を上昇させると、グローバルサウスがその代償を払うことになり、世界の資源が安全保障支出や地政学的競争に転用されるリスクがあるため、開発機関は補償に苦慮しています。
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