中東情勢緊迫化とグローバルサウスの貿易戦略:地域経済共同体の展望

グローバルサウスを巡る最新動向:中東情勢と貿易政策の交錯

2026年3月10日から11日にかけて、グローバルサウスを取り巻く地政学的および経済的課題が顕在化しました。3月10日、G7エネルギー大臣と国際エネルギー機関(IEA)はオンライン会議を開催し、中東紛争勃発以来の供給不足に対応し、市場変動を緩和するため、戦略石油備蓄の使用を正式に支持する方針を示しました。同日、国連貿易開発会議(UNCTAD)は、中東の軍事的緊張がホルムズ海峡の航行に深刻な混乱を引き起こし、世界のエネルギー市場、サプライチェーン、食料価格に広範な影響を及ぼす可能性を警告する報告書を発表しました。この戦略的な航路は、世界の海上石油の約5分の1、および大量の液化天然ガス(LNG)や肥料を運ぶ要衝です。

このような外部環境の変化に対し、日本国内では戦略的対応の動きが見られました。3月11日には、一般社団法人日本貿易会が第503回日本貿易会ゼミナールとして「グローバルサウスを取り巻く国際秩序と日本企業の戦略対応」をテーマにセミナーを開催し、国際貿易専門家らが最新の課題認識と対応策について議論しました。

中東情勢の緊迫化がグローバルサウスの貿易・エネルギー市場に与える影響

中東情勢の緊迫化は、エネルギー輸入依存度の高いグローバルサウス諸国の経済に深刻な影響を及ぼしています。3月9日には、主要7カ国(G7)の財務相が緊急会合を開催し、イラン紛争がエネルギー市場に与える影響について協議、状況を綿密に監視し、必要に応じて戦略石油備蓄の使用を含むあらゆる措置を講じる用意があることで合意しました。同日、中東の主要産油国による減産、ホルムズ海峡の混雑、および紛争拡大に関する米国の警告を背景に、世界の原油価格は2022年以来初めて1バレル100ドルを突破し、ブレント原油価格は20%急騰して111.04ドルに達しました。

この価格高騰は、各国に具体的な影響を及ぼしています。3月10日、エジプト当局は、財政を圧迫する燃料価格への多額の補助金のため、ガソリン、ディーゼル、調理用ガスの価格を15~22%引き上げると発表しました。エネルギーの約80%を湾岸諸国から輸入するパキスタンは、燃料備蓄の枯渇に直面し、学校閉鎖や公務員の在宅勤務導入などの燃料節約策を講じました。石油の約95%を輸入するバングラデシュも、燃料備蓄が数日中に尽きる見込みで、一部地域では燃料配給が行われているにもかかわらずガソリンスタンドが枯渇する事態に陥っています。ホルムズ海峡を通る航行の混乱は、こうしたエネルギー供給問題に加え、世界のサプライチェーン全体に広範なリスクをもたらすものと指摘されています。

地域経済共同体の発展と貿易障壁への対応戦略

グローバルサウス諸国および主要国は、地域経済共同体の発展と貿易障壁への対応として、多角的な戦略を推進しています。中国は、2026年3月5日より開催されている第14期全国人民代表大会第4回会議の政府活動報告において、2026年に二国間および多国間の貿易・投資協定の締結を推進し、デジタル経済パートナーシップ協定(DEPA)や環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)への加入交渉を積極的に進める方針を示しました。同時に、デジタル貿易・グリーン貿易の発展も掲げられています。

日本は、経済産業省が2026年3月10日時点で、2027年度補正予算「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金(小規模実証・FS事業)」の第1回公募に向けた準備を進めています。この事業は、2026年1月22日に執行団体公募が開始され、2月20日にはTOPPAN株式会社が採択予定先となり、グローバルサウス諸国における社会課題の解決と日本企業の海外展開・新市場開拓を支援することを目的としています。

各国・地域の具体的な貿易政策と経済統合への取り組みも活発です。アジア経済研究所は、3月11日付で、台湾が「トランプ関税」にどのように対応したか、特に半導体サプライチェーンを巡る米台関税交渉の妥結について分析したレポートを公開しました。また、3月6日付で、パキスタンのレコ・ディク金・銅山開発が同国の経済再建の「最後の切り札」となる可能性を指摘するレポートを、3月3日付で、カンボジアが「トランプ関税」にどう対応したか、関税交渉の変遷と雇用不安について論じたレポートを公開しています。

今後の展望と政策的含意

地政学的リスクの高まりは、グローバルサウス諸国が経済的自立とレジリエンスを構築する上で喫緊の課題となっています。エネルギー安全保障の強化、サプライチェーンの多様化、そして持続可能な開発目標達成に向けた貿易・投資政策の方向性は、国際貿易専門家にとって重要な考察対象です。主要国との連携を通じて、技術移転、インフラ投資、貿易促進を図ることは、グローバルサウス諸国の経済基盤を強化し、国際市場における競争力を高める上で不可欠です。

現状の緊迫した中東情勢は、エネルギー市場に即座の影響を与え、グローバルサウスの脆弱性を露呈させました。これに対し、各国が地域経済共同体を通じた連携強化や、日本のような先進国との共創事業を通じて社会課題解決と市場開拓を両立させる試みは、今後の国際経済秩序における重要なモデルとなり得ます。多国間の貿易交渉が停滞する中でも、二国間・多国間の協定締結やデジタル・グリーン貿易といった新たな分野での協力が、経済統合と貿易障壁克服の鍵となるでしょう。グローバルサウス諸国が直面する複合的な課題に対し、実効性のある政策的対応が求められています。

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Reference / エビデンス

  • From Pakistan to Egypt, Iran war drives up prices in Global South - Al Jazeera 2026年3月10日、エジプト当局は、政府による燃料価格への多額の補助金が財政を圧迫しているため、ガソリン、ディーゼル、調理用ガスの価格を15~22%引き上げると発表した。パキスタンはエネルギーの約80%を湾岸諸国から輸入しており、燃料備蓄の枯渇に直面し、学校閉鎖や公務員の在宅勤務導入などの燃料節約策を講じた。バングラデシュも石油の約95%を輸入しており、燃料備蓄が数日中に尽きる見込みで、一部地域では燃料配給にもかかわらずガソリンスタンドが枯渇した。
  • グローバルサウス | イベント・セミナー | 一般社団法人日本貿易会(Japan Foreign Trade Council, Inc.) 2026年3月11日、一般社団法人日本貿易会は、第503回日本貿易会ゼミナールとして「グローバルサウスを取り巻く国際秩序と日本企業の戦略対応」をテーマにセミナーを開催した。
  • 2026年3月9日の世界経済ニュースのハイライト - Vietnam.vn 2026年3月9日、主要7カ国(G7)の財務相は、イラン紛争がエネルギー市場に与える影響について協議するため緊急会合を開催し、状況を綿密に監視し、必要に応じて戦略石油備蓄の使用を含むあらゆる措置を講じる用意があることで合意した。同日、中東の主要産油国による減産、ホルムズ海峡の混雑、エネルギー市場を混乱させる紛争拡大に関する米国の警告を背景に、世界の原油価格は2022年以来初めて1バレル100ドルを突破し、ブレント原油価格は20%急騰して111.04ドルに達した。
  • 2026年3月11日の世界経済ニュースのハイライト - Vietnam.vn 2026年3月10日にG7エネルギー大臣と国際エネルギー機関(IEA)の間で行われたオンライン会議を受け、G7は中東紛争勃発以来の供給不足に対処し、市場の変動を緩和するために戦略石油備蓄を使用することを正式に支持した。国連貿易開発会議(UNCTAD)は2026年3月10日に発表した報告書の中で、中東の軍事的緊張によりホルムズ海峡を通る航行に深刻な混乱が生じており、世界のエネルギー市場、サプライチェーン、食料価格への広範な影響を警告した。ホルムズ海峡は世界の海上石油の約5分の1、大量の液化天然ガス(LNG)や肥料を運ぶ戦略的な航路である。
  • 2026年 - アジア経済研究所 アジア経済研究所は、2026年3月11日付で、台湾が「トランプ関税」にどのように対応したか、特に半導体サプライチェーンを巡る米台関税交渉の妥結について分析したレポートを公開した。また、2026年3月6日付で、パキスタンのレコ・ディク金・銅山開発が同国の経済再建の「最後の切り札」となる可能性を指摘するレポートを、2026年3月3日付で、カンボジアが「トランプ関税」にどう対応したか、関税交渉の変遷と雇用不安について論じたレポートを公開している。
  • 令和7年度補正予算 グローバルサウス未来志向型共創等事業(小規模実証・FS事業) 第1回公募に向けた最新動向と準備ポイント | イースクエア 経済産業省は、2026年3月10日時点で、2027年度補正予算「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金(小規模実証・FS事業)」の第1回公募に向けた準備を進めている。2026年1月22日に執行団体公募を開始し、2026年2月20日にはTOPPAN株式会社が採択予定先となった。この事業は、グローバルサウス諸国における社会課題の解決と、日本企業の海外展開・新市場開拓を支援することを目的としている。
  • 中国、2026年はより多くの貿易・投資協定締結を推進(中国) | ビジネス短信 - ジェトロ 2026年3月5日~12日に開催された中国の第14期全国人民代表大会第4回会議の政府活動報告では、2026年に二国間および多国間の貿易・投資協定の締結を推進し、デジタル経済パートナーシップ協定(DEPA)や環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)への加入交渉を積極的に進める方針が示された。また、デジタル貿易・グリーン貿易の発展も掲げられた。
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