国際法人税ルール最新動向:英国の移転価格税制とOECDグローバル・ミニマム課税の進展

英国、移転価格税制による税収が大幅増:多国籍企業への監視強化

2026年3月11日、英国歳入関税庁(HMRC)は2024-25年度の移転価格税制および迂回利益税(DPT)に関する年次統計を公表しました。この統計によると、移転価格税制による税収は前年度の17億8,600万ポンドから33億8,700万ポンドへと、ほぼ倍増しました。この大幅な税収増は、主にDPT自体の納付ではなく、移転価格調査による追加の法人税納付が要因であるとみられています。HMRCは、多国籍企業に対する継続的な監視を強化しており、その調査活動は持続的な精査を伴い、緩和の兆候は見られません。

OECDグローバル・ミニマム課税「Side-by-Sideパッケージ」と日本制度の動向

国際的な法人税改革の一環として、OECD/G20 BEPSプロジェクトに基づき、2021年10月に135以上の国・地域が国際税制の主要要素を更新する計画に合意しました。この合意は、大規模な多国籍企業が事業を行う各管轄区域で最低限の税金を支払うことを保証するグローバル税源浸食防止ルール(GloBEルール)、通称Pillar Twoの導入を目指すものです。

2026年1月5日、OECDのBEPS包摂的枠組みは、Pillar Twoグローバル・ミニマム課税ルールに関する新たな執行ガイダンスパッケージ「Side-by-Sideパッケージ」に合意したことを公表しました。このパッケージには、恒久的な簡易実効税率(ETR)セーフハーバー、移行期間国別報告(CbCR)セーフハーバーの1年延長、実質ベースインセンティブ(税恩典)セーフハーバー、および適格国に係るSide-by-Side(SbS)セーフハーバーが含まれます。SbSセーフハーバーは、米国に最終親会社がある多国籍企業グループに対し、一定の要件を満たせば所得合算ルール(IIR)および軽課税所得ルール(UTPR)に基づくトップアップ税額がゼロになることを目的としており、2026年1月1日以降に開始する会計年度に適用されます。2026年1月5日現在、米国はOECDの中央記録でSbSセーフハーバーの適格要件を満たす唯一の国としてリストされています。この変更により、グローバル・ミニマム法人税の枠組みは継続されるものの、米国多国籍企業はUTPRの適用から実質的に免除されることになりました。

日本の税制においては、2023年度税制改正により所得合算ルール(IIR)が法制化され、2024年4月1日以後開始する対象会計年度から適用されています。また、2025年度税制改正では、軽課税所得ルール(UTPR)と国内ミニマム課税(QDMTT)が法制化されました。財務省は、2026年1月5日にOECD/G20「BEPS包摂的枠組み」で合意されたグローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえ、日本の制度を見直すことを発表しており、この見直しには特定の要件を満たす国・地域を所在地国とする特定多国籍企業グループ等に対する適用免除基準の導入が含まれます。

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Reference / エビデンス

  • 英国歳入関税庁、移転価格および迂回利益税に関する年次統計を発表 | EY Japan 2026年3月11日、英国歳入関税庁(HMRC)は、2024-25年度の移転価格および迂回利益税(DPT)に関する統計を発表し、移転価格による税収が前年度の17億8,600万ポンドから33億8,700万ポンドへとほぼ倍増したことを明らかにした。この税収増は、主にDPT自体の納付ではなく、移転価格調査による追加の法人税納付によるものとみられる。HMRCの調査活動は継続的に圧力をかけ、持続的な精査を行っており、緩和の兆候は見られない。
  • KPMG Week in Tax: March 16 – 20, 2026 英国歳入関税庁(HMRC)は、2025年3月31日を期末とする年度(2024-2025会計年度)の移転価格および迂回利益税(DPT)に関する最新統計を公表した。
  • Pillar Two Implementation – oecdpillars.com 2026年3月25日、スウェーデンはPillar Twoの簡素化ルール(Side-by-Side Safe Harbour、UPE Safe Harbourなど)を盛り込む法案を発表した。2026年3月24日、フィンランドは最低税法を改正し、2026年1月のOECD Side-by-Side Tax Packageおよび以前の行政ガイダンスの側面を規定する法律を官報に掲載した。2026年3月25日、オーストラリアは、DMTT目的のOECD行政ガイダンスの側面を組み込むため、Pillar Two規則を改正する規則を発行した。2026年3月20日には、外国の適格IIR、適格国内ミニマムトップアップ税、およびQDMTTセーフハーバーのステータスを持つ管轄区域の国内リストを更新した。2026年3月17日、ベルギーはPillar Twoの通貨換算ルールに関する通達2026/C/41を発行した。
  • Global Anti-Base Erosion Model Rules (Pillar Two) - OECD OECD/G20 BEPSプロジェクトの一環として、2021年10月に135以上の国・地域が国際税制の主要要素を更新する計画に合意した。グローバル税源浸食防止ルール(GloBE)は、大規模な多国籍企業が事業を行う各管轄区域で最低限の税金を支払うことを保証する。2026年1月には、簡易ETRセーフハーバー、移行期CbCRセーフハーバーの1年延長、実質ベース租税インセンティブセーフハーバーを含むSide-by-Sideパッケージが発表された。
  • Despite US exemptions, the show goes on for a global minimum corporate tax 2026年1月5日、トランプ政権の圧力の下、146カ国が2021年の合意を修正し、グローバル・ミニマム法人税の枠組みは継続されるものの、米国多国籍企業(MNC)は、合意の国別軽課税所得ルール(UTPR)の適用から免除されることになった。この変更により、元の2021年合意よりもグローバル・ミニマム法人税の効果は低下する。
  • OECD side-by-side Pillar 2 deal: Relief for U.S. multinationals - Grant Thornton 2026年1月5日、OECD包摂的枠組みは、Pillar 2グローバル税源浸食防止(GloBE)ルールが米国多国籍企業(MNE)グループにどのように適用されるかに関する長年の不確実性を解消することを目的とした、Side-by-Sideパッケージと呼ばれる重要な行政ガイダンスを公表した。この新しいセーフハーバーは、米国の税制がPillar 2に準拠しているとみなし、米国MNEグループを特定のトップアップ税から免除する。米国は、OECDの中央記録でSbSセーフハーバーの適格要件を満たす唯一の管轄区域としてリストされている。
  • OECD Publishes Pillar Two Global Minimum Tax Safe Harbor, Benefitting MNE Groups With Ultimate Parent Entities Located in the US - Skadden Arps 2026年1月5日、OECDは、米国に最終親会社がある多国籍企業グループに利益をもたらす、待望のPillar Twoグローバル・ミニマム税セーフハーバーパッケージを公表した。このパッケージは、GloBEルールのコメンタリーの一部となり、すでにGloBEルールを導入している管轄区域による実施が必要となる。
  • Pillar 2 Project Continues: Updates On The OECD - Forbes OECDのPillar 2プロジェクトは継続しており、最近のSide-by-Sideパッケージは、恒久的な簡易ETRセーフハーバー、適格国内ミニマムトップアップ税の維持、およびUPEセーフハーバーを導入している。
  • Worldwide Tax Summary 2026年2月号 - PwC 2026年1月5日、OECDはBEPS包摂的枠組みの147メンバー国・地域が、Pillar Twoグローバルミニマム課税ルール(GloBEルール)に基づく新たな執行ガイダンスパッケージ「Side-by-Side Package」に合意したことを公表した。このパッケージには、恒久的な簡易実効税率(ETR)セーフハーバー、移行期間国別報告(CbCR)セーフハーバーの1年延長、実質ベースインセンティブ(税恩典)セーフハーバー、適格国に係るSide-by-Side(SbS)セーフハーバーおよび最終親事業体(UPE)セーフハーバーが含まれる。SbSセーフハーバーは、適格国・地域に本拠がある多国籍企業が、一定の要件を満たせば、IIR/UTPRのトップアップ税額がゼロになるもので、2026年1月1日以降に開始する会計年度に適用される。2026年1月5日現在、米国はOECD中央記録で適格要件を満たす唯一の国である。
  • グローバル・ミニマム課税への対応 - 税理士法人山田&パートナーズ 日本の2025年度(令和7年度)税制改正により、グローバル・ミニマム課税の軽課税所得ルール(UTPR)と国内ミニマム課税(QDMTT)が法制化され、2026年4月1日以後開始する対象会計年度から適用される。所得合算ルール(IIR)は2023年度改正で既に法制化され、2024年4月1日以後開始する対象会計年度から適用されている。
  • グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置 - 財務省 財務省は、2026年1月5日にOECD/G20「BEPS包摂的枠組み」で合意されたグローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえ、2026年度税制改正において日本の制度を見直すことを発表した。この見直しには、特定の要件を満たす国・地域を所在地国とする特定多国籍企業グループ等に対し、グループ国際最低課税額をゼロとする適用免除基準の導入が含まれる。