東アジア半導体サプライチェーン:米国の新たな貿易調査と輸出管理がもたらす構造的変化

米国、東アジア含む16カ国・地域の過剰生産能力調査を開始:半導体サプライチェーンへの影響

2026年3月11日、米国通商代表部(USTR)は、中国、EU、シンガポール、スイス、ノルウェー、インドネシア、マレーシア、カンボジア、タイ、韓国、ベトナム、台湾、バングラデシュ、メキシコ、日本、インドを含む16の国・地域における構造的過剰生産能力および過剰生産慣行に関する通商法301条調査の開始を発表しました。この調査は、対象国の製品に対する関税措置または非関税措置につながる可能性があり、影響を受けるセクターのサプライチェーンや価格設定に影響を及ぼす可能性があります。

米国のAIチップ輸出管理、緩和と強化の二面性:中国市場への影響と戦略的意図

米国政府は2026年1月、中国向けAIチップ輸出の方針を転換しました。米国商務省産業安全保障局(BIS)による輸出管理規則(EAR)の改定により、NVIDIAのH200など特定の先端半導体(総処理性能21000未満、メモリ帯域幅6500Gバイト/秒未満)について、中国・マカオへの輸出許可申請の審査方針が「原則不許可」から「個別審査」に変更されました。ただし、中国企業がこれらのチップにアクセスするには、25%の収益分配関税などの厳格な条件が課されています。この動きは、米国の輸出管理戦略が単純な禁止ではなく、中国の技術発展を「管理された相互依存」の状態に置こうとする多層的な意図を示唆しています。

世界半導体市場の動向と東アジア各国の戦略:成長と地域格差、国産化への動き

日本政府は、2030年に国内で生産される半導体の売上高15兆円、2040年に40兆円を目指す目標を設定し、AI時代に不可欠な先端・次世代半導体の国内開発・製造能力確保を重視しています。Rapidus社への政府および民間からの出資が実行され、先端半導体製造への取り組みが加速しています。一方、TSMCは、2026年にAIブームに牽引され、総収入が30%近く伸びるとの見通しを示し、2029年までのAI関連事業の予想成長率を上方修正しました。また、TSMCは日本の熊本で2028年までに3nm半導体の量産を開始する計画を進めています。

地政学リスクとサプライチェーンの脆弱性:東アジア半導体産業の構造的課題

半導体はすでに完全に政治の産業と化しており、企業の意思決定が市場原理だけでなく国家戦略に依存し始めています。中国は2030年までに半導体自給率80%を掲げ、国産化を推進する動きを見せています。また、イランなどを巡る中東での紛争激化により、半導体の製造プロセスに不可欠な特殊ガスであるヘリウムなどの調達に影響が出ており、サプライチェーンの混乱と原材料価格の高騰が製造現場を直撃する物理的および地政学的な脆弱性が顕在化しています。東アジアの半導体産業は、こうした構造的な課題に直面しています。

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Reference / エビデンス

  • 米国通商代表部、構造的過剰生産能力に関する第301条調査を開始、パブリックコメントの募集および公聴会日程を公表 | EY Japan 2026年3月11日、米国通商代表部(USTR)は、中国、EU、シンガポール、スイス、ノルウェー、インドネシア、マレーシア、カンボジア、タイ、韓国、ベトナム、台湾、バングラデシュ、メキシコ、日本、インドを含む16の国・地域における構造的過剰生産能力および過剰生産慣行に関する通商法301条調査の開始を発表しました。この調査は、対象国の製品に対する関税措置または非関税措置につながる可能性があり、影響を受けるセクターのサプライチェーンや価格設定に影響を及ぼす可能性があります。
  • 米国がAIチップの対中輸出を再開 米中は「管理された相互依存」に - EE Times Japan 米国政府は2026年1月、中国向けAIチップ輸出の方針を転換し、NVIDIAのH200など一部製品の輸出を条件付きで認めることになりました。これは、輸出管理規則(EAR)の改定により、特定の先端半導体(総処理性能21000未満、メモリ帯域幅6500Gバイト/秒未満)について、中国・マカオへの輸出許可申請の審査方針が「原則不許可」から「個別審査」に変更されたものです。ただし、中国企業がこれらのチップにアクセスするには、25%の収益分配関税などの厳格な条件が課されます。
  • 対中規制強化へ超党派法案=半導体装置、日欧企業影響も―米下院 | 防災・危機管理ニュース 2026年4月2日、米下院の超党派議員は、人工知能(AI)半導体の製造に必要な装置や部品の対中輸出規制を強化する法案を提出しました。この法案は、半導体製造装置で強みを持つ日本やオランダなどの同盟国に規制強化で連携を促す内容を含んでいます。
  • 世界半導体市場は26年2月に大幅成長、日本のみ9カ月連続マイナスに:全体は前年比61.8%増 米国半導体工業会(SIA)は2026年4月3日(米国時間)、2026年2月の世界半導体売上高が前年同月比61.8%増の888億米ドルと大幅な増加を記録したと発表しました。地域別では、アジア太平洋/その他が93.5%、米州が59.2%、中国が57.4%、欧州が42.3%とそれぞれ大幅な成長を見せた一方、日本のみ0.3%減となり、前年同月比で9カ月連続のマイナス成長となりました。
  • 第8回 次世代半導体等小委員会 - 経済産業省 日本政府は、2030年に国内で生産される半導体の売上高15兆円、2040年に40兆円を目指す目標を設定しており、AI時代に不可欠な先端・次世代半導体の国内開発・製造能力確保を重視しています。Rapidus社への政府および民間からの出資が実行され、先端半導体製造への取り組みが加速しています。
  • 米中の狭間の台湾、それぞれの主張の応酬、TSMCの戦略的取り組み - セミコンポータル TSMCは、2026年にAIブームに牽引され、総収入が30%近く伸びるとの見通しを示し、2029年までのAI関連事業の予想成長率を上方修正しました。また、TSMCは日本の熊本で2028年までに3nm半導体の量産を開始する計画を進めています。
  • 2026年3月度【半導体ニュース総覧】今、業界で何が起きているのか? - note 半導体はすでに完全に政治の産業と化しており、企業の意思決定は市場ではなく国家に依存し始めています。中国は2030年までに半導体自給率80%を掲げています。
  • 半導体ニュース 20260331 | Amiko Consulting イランなどを巡る中東での紛争激化により、半導体の製造プロセスに不可欠な特殊ガスであるヘリウムなどの調達に影響が出ており、サプライチェーンの混乱と原材料価格の高騰が製造現場を直撃する物理的および地政学的な脆弱性が顕在化しています。