北米エネルギー政策の最新動向:カナダの規制調整と米国のLNG輸出戦略

カナダ:排出量上限規制の見直しとエネルギープロジェクト承認の合理化

カナダ連邦政府は、石油・ガス部門の排出量上限規制の要件を撤回する意向を示しています。この政策転換の背景には、強化された石油・ガス部門のメタン規制の制定(2025年12月12日)、効果的な炭素市場の存在、および大規模な炭素回収・貯留(CCS)技術の展開が挙げられています。当初提案されていた排出量上限規制は、2030年から2032年の最初の遵守期間において、2026年の報告排出量から27%削減することを目標としていましたが、2025年11月5日の予算案では、これらの措置を考慮すると排出量上限規制は不要になると明記されました。

さらに、2025年11月27日には、カナダ政府とアルバータ州の間で覚書(MOU)が署名されました。このMOUは、大規模エネルギープロジェクトの推進と温室効果ガス排出量削減への協力を両立させ、2050年までのネットゼロ排出目標達成を目指すものです。MOUの主要な2026年マイルストーンとして、4月1日までに産業炭素価格設定の等価性協定を最終化し、アルバータ州のTIERシステムを継続的に認識すること、および影響評価に関する協力協定を最終化することが挙げられています。

米国:国内エネルギー生産優先とLNG輸出政策の動向

米国では、国内エネルギー生産を優先する政策的な動きが継続しています。米国エネルギー情報局(EIA)の2026年3月の短期エネルギーアウトルックによると、液化天然ガス(LNG)輸出は2025年第1四半期から2027年第1四半期にかけて32%増加すると予測されています。米国は2023年に世界最大のLNG輸出国となり、2026年には輸出能力がさらに増加する見込みです。しかし、LNG輸出の増加は国内の天然ガス価格を押し上げ、米国の家庭のエネルギー費用に影響を与える可能性が指摘されています。

LNG輸出拡大への動きは継続しており、2025年1月にはトランプ政権がLNG輸出を優先事項とすることを決定しています。米国エネルギー省(DOE)は、LNG輸出インフラの推進にコミットする姿勢を示しており、この政策は、国内のガス供給が国内消費と輸出需要の両方を満たすのに十分であるという2024年の研究を根拠としています。これに伴い、2025年11月18日には「国内LNG潜在力解放法案」(H.R. 1949)が発表されました。この法案は、天然ガスの輸出入に対する不必要な制限を撤廃し、米国のエネルギーリーダーシップを推進することを目的としています。具体的には、米国と自由貿易協定を結んでいない国々へのLNG輸出も「公共の利益」と見なすことで、政治的な干渉を減らし、連邦エネルギー規制委員会(FERC)がすべてのLNG輸出許可を管轄するように変更することを目指しています。

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Reference / エビデンス

  • Remove the requirement for an oil and gas emissions cap - Build Canada カナダ政府は、効果的な炭素市場、強化された石油・ガス部門のメタン規制、および大規模な炭素回収・貯留(CCS)技術の展開があれば、石油・ガス排出量上限規制は排出量削減において限界的な価値しか持たなくなるため、その要件を撤回する意向を示しています。2025年12月12日には強化された石油・ガス部門のメタン規制が制定されました。2024年11月に提案された石油・ガス部門の温室効果ガス排出量上限規制は、2030年から2032年の最初の遵守期間において、2026年の報告排出量から27%削減することを目標としていました。しかし、2025年11月5日の予算案では、炭素市場、メタン規制、CCUS展開を考慮すると、排出量上限規制は不要になると明記されています。
  • Canada Eases Climate Rules In Bid To Boost Energy Investment - Carbon Herald 2026年3月30日、カナダ連邦政府とアルバータ州は、エネルギー投資と輸出能力を加速させることを目的とした新たな協定を締結しました。この協定により、石油・ガス部門の排出量上限規制や特定のクリーン電力規制を含む、いくつかの気候変動対策が緩和されることになります。その見返りとして、アルバータ州は産業炭素価格設定枠組みの強化と大規模な炭素回収・貯留(CCS)開発を支援することを約束しました。この合意は、米国との貿易不確実性が高まる中で、経済成長と市場の多様化を優先するカナダのエネルギー戦略における顕著な転換を示しています。
  • Week ending March 21, 2026 – ESAA - Environmental Services Association of Alberta 2026年3月21日、カナダ首相とアルバータ州首相は、環境・影響評価に関する協力協定の草案を発表し、21日間の協議期間に入りました。この協定は、アルバータ州における主要インフラプロジェクト(パイプライン、鉄道、発電など)に対する「1プロジェクト1審査」のアプローチを導入し、審査プロセスを合理化することで、プロジェクトの迅速な実現、強力な環境保護、先住民コミュニティの権利尊重を目指しています。
  • Energy regulatory trends to watch in 2026: The role of energy in Canada's economic security - Dentons 2025年11月27日に署名されたカナダ・アルバータ州間の覚書(MOU)は、2026年のエネルギー規制動向に大きな影響を与えると予想されています。MOUは、大規模エネルギープロジェクトの推進と温室効果ガス排出量削減への協力を両立させ、2050年までのネットゼロ排出目標達成を目指しています。MOUの主要な2026年マイルストーンとして、4月1日までに産業炭素価格設定の等価性協定を最終化し、アルバータ州のTIERシステムを継続的に認識すること、および影響評価に関する協力協定を最終化することが挙げられています。
  • EPA Continues to Unleash Domestic Energy with Revisions to Burdensome, Unworkable Biden-era Oil and Natural Gas Regulations, Saving Americans Billions in Energy Costs 2026年4月6日、米国環境保護庁(EPA)は、バイデン・ハリス政権下の2024年大気浄化法に基づく石油・天然ガス事業規制(OOOOb/c)の特定の側面を改定する最終規則を確定しました。この改定は、米国のエネルギー事業者に対し柔軟性を提供し、業界のコンプライアンスコストを15年間で推定25億ドル削減することを目的としています。変更点には、一時的なフレアリング(燃焼処理)の許容時間を24時間から72時間に延長することや、緊急事態における追加時間の提供が含まれます。この措置は、国内エネルギー生産の促進とアメリカの家庭のエネルギーコスト削減に貢献するとされています。
  • LNG Exports And American Unaffordability - Public Citizen 米国エネルギー情報局(EIA)の2026年3月の短期エネルギーアウトルックでは、2025年第1四半期から2027年第1四半期にかけて、液化天然ガス(LNG)輸出が32%増加すると予測されています。米国は2023年に世界最大のLNG輸出国となり、2026年には輸出能力がさらに増加する見込みです。しかし、LNG輸出の増加は国内の天然ガス価格を押し上げ、米国の家庭のエネルギー費用に影響を与える可能性が指摘されています。
  • Oil & Gas in 2026: Energy Policy & Regulation - Akin Gump 2026年には、米国におけるLNG輸出拡大への動きが継続すると予想されています。2025年1月には、トランプ政権がLNG輸出を優先事項とすることを決定しており、米国エネルギー省(DOE)は、LNG輸出インフラの推進にコミットしていることを示しています。この政策は、国内のガス供給が国内消費と輸出需要の両方を満たすのに十分であるという2024年の研究を引用しており、以前提起された環境への懸念は考慮されていません。
  • New Bill Will Protect Natural Gas Exports from Political Hostility - National Taxpayers Union 2025年11月18日に発表された「国内LNG潜在力解放法案」(H.R. 1949)は、天然ガスの輸出入に対する不必要な制限を撤廃し、米国のエネルギーリーダーシップを推進することを目的としています。この法案は、米国と自由貿易協定を結んでいない国々へのLNG輸出も「公共の利益」と見なすことで、政治的な干渉を減らし、連邦エネルギー規制委員会(FERC)がすべてのLNG輸出許可を管轄するように変更することを目指しています。