2026年3月時点:グローバルサウスにおける重要鉱物資源の地政学的動向とサプライチェーン再編の分析
国連とEUが示す新たな重要鉱物資源ガバナンスの方向性
2026年3月5日、国連は重要鉱物資源を巡る世界的な競争において「公平な競争」を呼びかけ、同日に安全保障理事会で「エネルギー、重要鉱物資源、安全保障」について議論する予定であった。国連事務総長は2024年4月に「重要エネルギー移行鉱物に関するパネル」を立ち上げており、公正で公平かつ持続可能な移行を確保することを目指している。
欧州委員会は2026年3月4日に「産業加速法案(Industrial Accelerator Act, IAA)」の提案を発表した。これはEUの産業基盤を強化し、脱炭素化を加速し、重要バリューチェーンにおける戦略的依存度を低減することを目的とした広範な規制である。IAAはEUのクリーン産業ディールの主要な柱であり、2035年までにEUのGDPに占める製造業の割合を14.3%から20%に引き上げるという中心的な目標を掲げている。同日、EU加盟国は重要原材料規則の改正に関する交渉指令を採択した。この改正はRESourceEU計画の一部であり、新たな地政学的緊張と供給リスクに直面するEUのレジリエンスを強化することを目的としている。
グローバルサウスにおける資源ナショナリズムの台頭と価値連鎖向上への動き
2026年3月の記事によると、「グリーン資源ナショナリズム」は、グローバルサウスがエネルギー転換において主導権を取り戻す機会を提供する。多くのグローバルサウス諸国は、輸出制限などの政策を通じて、この機会を活かそうとしている。2026年3月3日の記事では、グローバルサウスの生産国における重要鉱物に関する主要な政策目標は、バリューチェーンを向上させることであると報じられた。
2026年3月9日の記事によると、Global Justice Nowのディレクターは、米国が提唱する「重要鉱物クラブ」が、公平なクリーンエネルギー移行を阻害し、資源を米国のデジタルおよび軍事部門に転用するリスクがあると批判している。この貿易圏は、中国の鉱物サプライチェーン支配を打破し、米国のデジタルおよび軍事部門に必要な資源へのアクセスを確保することを目的としている。
主要国・地域によるサプライチェーン再編戦略と国際連携の現状
2026年春の時点で、第2次トランプ政権は重要鉱物を国家安全保障上の優先事項として積極的に扱っており、貿易ツールや産業補助金を用いて中国の支配を打破し、国内の加工能力を再構築している。米国政府は2026年2月4日にワシントンD.C.で重要鉱物閣僚会議を開催し、54カ国の代表が出席した。この会議では、戦略的鉱物備蓄のための100億ドルの融資を伴う「Project Vault」の発表、新たな多国間フォーラムである「Forum on Resource Geostrategic Engagement (FORGE)」の発足、および10の二国間協定の署名が行われた。FORGEは、多様でレジリエントかつ安全な重要鉱物サプライチェーンを推進するために、政策レベルとプロジェクトレベルの両方で協力することを目的としている。
EUもまた、「RESourceEU」計画の一環として「重要原材料規則」の改正を進めており、サプライチェーンのレジリエンス強化を図っている。
市場動向と今後の展望:産業アナリストへの示唆
2026年1月26日の見通しによると、コンゴ民主共和国(DRC)が輸出割当制度を導入したことで、コバルト市場は供給不足に陥っている。このような状況は、重要鉱物サプライチェーンの脆弱性、地政学的リスク、そしてESG(環境・社会・ガバナンス)要因が投資判断に与える影響を産業アナリストがより深く考察する必要があることを示唆している。
また、2026年3月10日には、「重要鉱物と材料におけるイノベーション」に関するシンポジウムが開催され、重要材料サプライチェーンにおける機会や磁石材料、分離技術の革新について議論された。これは、供給の安定化と持続可能性を確保するための技術革新の重要性を示している。
[ Advertisement ]Reference / エビデンス
- Forging a New Critical Minerals Reality - FDD 2026年3月19日の分析によると、重要鉱物サプライチェーンを巡る世界的な競争が進行中であり、中国は数十年にわたる補助金、産業政策、戦略的投資を通じて支配的地位を確立し、これを経済的強制力として利用している。米国とそのパートナーは、この不均衡を是正し、中国の優位性を減らすために、多元的な重要鉱物協定を模索している。中国は、レアアース、リチウム、コバルト、グラファイト、ガリウムなどの重要鉱物のサプライチェーン、特に加工・精製段階で支配的な地位を築いている。中国の支配は、南米の鉱山権益、東南アジアの加工施設、アフリカの精製能力への投資を通じて拡大している。
- What does the US pursuit of critical minerals mean for the Global South? | Dialogue Earth 2026年3月3日の記事によると、グローバルサウスの生産国における重要鉱物に関する主要な政策目標は、バリューチェーンを向上させることである。米国政府は2026年2月4日にワシントンD.C.で重要鉱物閣僚会議を開催し、54カ国の代表が出席した。この会議では、Forum on Resource Geostrategic Engagement (FORGE) の発足、10の二国間協定の署名、および採掘された鉱物の最低価格を基盤とする重要鉱物貿易圏の提案が行われた。数日前には、トランプ大統領が重要鉱物備蓄のための100億ドルの融資を伴う「Project Vault」を発表した。これらの取り組みは、重要鉱物およびレアアースに対する中国への依存を断ち切ることを目的としている。
- Critical Minerals One-Pager 20260317 2026年3月17日の資料によると、米国は製造業に不可欠な58種類の鉱物のうち13種類を完全に海外からの供給に依存しており、33種類については50%以上を輸入に頼っている。米国製造業者協会(NAM)は、国内および国際パートナーとの包括的な行動を通じて、世界の重要鉱物サプライチェーンを再構築し、バランスを取るための政府の取り組みを強く支持している。
- Critical Mineral Stocks News: April 3, 2026 : r/CriticalMineralStocks - Reddit 2026年4月3日の報道によると、フランスと日本は、EVや防衛システムに不可欠な重レアアースの確保を戦略的に目指し、中国の精製施設への集団的依存を減らすため、フランス南部を拠点とする新たなレアアース精製アライアンスを発表した。カザフスタンの国営鉱業会社Tau-Ken Samrukは、ルワンダとアフガニスタンからの鉱物サンプルの分析を積極的に実施し、海外でのベースメタルおよびレアアース採掘事業の実現可能性を評価している。
- European Union: Industrial Accelerator Act Recasts FDI as Policy-Tool | Insight 2026年3月4日、欧州委員会は「産業加速法案(Industrial Accelerator Act, IAA)」の提案を発表した。これはEUの産業基盤を強化し、脱炭素化を加速し、重要バリューチェーンにおける戦略的依存度を低減することを目的とした広範な規制である。IAAはEUのクリーン産業ディールの主要な柱であり、2035年までにEUのGDPに占める製造業の割合を14.3%から20%に引き上げるという中心的な目標を掲げている。
- Revision of regulation on critical raw materials - Member States approve their negotiating mandate | AGENCE EUROPE 2026年3月4日、EU加盟国は重要原材料規則の改正に関する交渉指令を採択した。この改正はRESourceEU計画の一部であり、新たな地政学的緊張と供給リスクに直面するEUのレジリエンスを強化することを目的としている。
- Critical Minerals Strategy under the Trump Administration: Progress, Contradictions, and the Road Ahead | Wilson Center 2026年春の時点で、第2次トランプ政権は重要鉱物を国家安全保障上の優先事項として積極的に扱っており、貿易ツールや産業補助金を用いて中国の支配を打破し、国内の加工能力を再構築している。
- America needs partners to challenge China's critical mineral chokehold - Chatham House 2026年3月16日の分析によると、中国は世界のコバルトとリチウムの70%以上、グラファイトのほぼ全てを採掘、加工、または管理しており、最も重要な工業鉱物20種中19種の主要な精製国である。2000年から2021年にかけて、中国はアフリカ、ラテンアメリカ、アジアの約20カ国で鉱物採掘と精製に約570億ドルを投じた。米国は、国内生産を優先しつつも、同盟国やパートナー国との協力の必要性を認識している。
- UN calls for fair play in the global race for critical minerals | UN News 2026年3月5日、国連は重要鉱物資源を巡る世界的な競争において「公平な競争」を呼びかけ、同日に安全保障理事会で「エネルギー、重要鉱物資源、安全保障」について議論する予定であった。国連事務総長は2024年4月に「重要エネルギー移行鉱物に関するパネル」を立ち上げ、公正で公平かつ持続可能な移行を確保することを目指している。
- How China Dominates the World's Critical Minerals Production - The Daily Signal 2026年4月7日の分析によると、中国は世界の重要鉱物生産において支配的な地位を占めており、特に加工・精製段階でその優位性が顕著である。2024年のデータでは、ガリウムの約99%、マグネシウムの95%、タングステンの83%、グラファイトの79%、レアアースの69%以上で中国が主要な生産国または加工国である。中国は、IEAが2025年のグローバル重要鉱物アウトルックで分析した20種類の材料のうち19種類で主要な精製国であり、世界の加工能力全体の約70%を占めている。
- Innovations in Critical Minerals and Materials - TechConnect World 2026 2026年3月10日には、「重要鉱物と材料におけるイノベーション」に関するシンポジウムが開催され、重要材料サプライチェーンにおける機会や磁石材料、分離技術の革新について議論された。
- Africa's critical minerals boom: The rise of a new resource nationalism 2026年3月16日の記事によると、アフリカは豊富な重要鉱物資源(リチウム、コバルト、銅など)を有しており、世界の脱炭素化の動きの中で「現代のゴールドラッシュ」の中心に位置している。多くのGグローバルサウス諸国は、長年の原材料輸出による「雇用なき成長」に不満を抱き、国内での付加価値向上を求める「資源ナショナリズム」政策を導入している。
- Council Special Report: Leapfrogging China's Critical Minerals Dominance—How Innovation Can Secure U.S. Supply Chains 2026年3月9日、外交問題評議会(Council on Foreign Relations)は特別報告書「中国の重要鉱物支配を飛び越える:イノベーションはいかにして米国のサプライチェーンを確保するか」を発表し、中国の支配を飛び越えるための米国の重要鉱物戦略の必要性について議論するパネルディスカッションを開催した。
- House Hearing on the Critical Mineral Commodity Supply Chain - YouTube 2026年3月26日の下院公聴会では、米国の重要鉱物サプライチェーンにおける脆弱性が強調され、中国が世界の重要鉱物生産の約60%、加工の90%、製造の75%を支配していることが指摘された。
- The Emerging Trend of “Green” Resource Nationalism: Lessons from Latin America 2026年3月の記事によると、「グリーン資源ナショナリズム」は、グローバルサウスがエネルギー転換において主導権を取り戻す機会を提供する。多くのグローバルサウス諸国は、輸出制限などの政策を通じて、この機会を活かそうとしている。
- Mining News Summary March 2026 2026年3月31日の報道によると、日本のJOGMECと岩谷産業は、中国の加工インフラを迂回するため、フランスのレアアース精製プロジェクトに1億1000万ユーロを投資した。
- Critical Minerals Strategic Intelligence Report 2026: Energy Transition Acceleration Driving Unprecedented Demand - Opportunities in Lithium, Cobalt, Copper, Nickel, and REEs - GlobeNewswire 2026年3月12日の報告書によると、世界のエネルギー転換と技術ブームは、リチウム、コバルト、銅、ニッケル、レアアースなどの重要鉱物市場に大きな機会をもたらしている。供給リスクには、枯渇、独占、地政学的問題があるが、リサイクルや戦略的投資による多様化が成長の可能性を提供している。
- The EU-Mercosur agreement could tap a new source of critical minerals for the West | PIIE 2026年4月7日の分析によると、南米は膨大な鉱物資源を有しており、EU-メルコスール協定は西側諸国にとって重要鉱物の新たな供給源となる可能性がある。アルゼンチンはリチウムとホウ酸塩の世界最大の生産国の一つとして知られ、パラグアイもリチウムとマンガンの重要な埋蔵量を持つと推定されている。
- Lithium Miners News For The Month Of March 2026 | Seeking Alpha 2026年3月25日の報道によると、ジンバブエのリチウム輸出禁止措置が価格高騰と業界の変化を引き起こした。ジンバブエは2026年に世界の生産量の約7%にあたる124,000トンの炭酸リチウム換算(LCE)を供給すると予測されており、中国のスポジュメン輸入の約15%を占めている。
- The US's critical minerals club threatens an equitable clean energy transition 2026年3月9日の記事によると、Global Justice Nowのディレクターであるニック・ディアデン氏は、米国が提唱する「重要鉱物クラブ」が、クリーンエネルギー移行を阻害し、資源を米国のデジタルおよび軍事部門に転用するリスクがあると批判している。この貿易圏は、中国の鉱物サプライチェーン支配を打破し、米国のデジタルおよび軍事部門に必要な資源へのアクセスを確保することを目的としている。
- Critical Minerals Ministerial Introduces New International Cooperation Strategy - CSIS 2026年2月4日、国務省で初の重要鉱物閣僚会議が開催され、同盟国およびパートナー国55カ国の代表団が集まり、重要鉱物安全保障に関する協力を深めた。この会議では、Project Vaultの発表、新たな多国間フォーラムであるForum on Resource Geostrategic Engagement (FORGE) の発足、および13の新たな二国間重要鉱物枠組みおよび覚書(MOU)の署名など、いくつかの主要な発表があった。FORGEは、多様でレジリエントかつ安全な重要鉱物サプライチェーンを推進するために、政策レベルとプロジェクトレベルの両方で協力することを目的とした多国間協力である。
- 2026 Critical Minerals Ministerial - U.S. Mission to ASEAN 2026年2月4日、米国は54カ国および欧州委員会の代表団を招き、2026年重要鉱物閣僚会議を開催した。この会議では、安全でレジリエントな重要鉱物サプライチェーンを構築するための行動が取られ、新たな二国間枠組みや覚書の署名、米国政府による戦略的鉱物プロジェクト支援のための資金調達機会の発表、FORGEの発足が祝われた。
- Global Lithium Battery Industry Monthly Briefing: Key March 2026 Developments 2026年3月25日の報告によると、2025年後半の価格調整期間を経て、2026年3月に世界の炭酸リチウム市場は顕著な反発を見せた。バッテリーグレード炭酸リチウムのスポット取引価格は1トンあたり約24,000ドルに上昇した。この変化の主な要因は、中国によるバッテリー製品のVAT輸出還付縮小、2026年の定置型エネルギー貯蔵システム(ESS)導入の年間55%増という予測、および差し迫った構造的な供給不足である。モルガン・スタンレーは、2026年末までに年間最大80,000トンの供給不足が発生する可能性を予測している。
- 2026 outlook: Navigating volatility in Battery Raw Materials - Fastmarkets 2026年1月26日の見通しによると、コバルト市場は供給不足に陥っている。コンゴ民主共和国(DRC)が輸出割当制度を導入したことで、供給が厳しく制限されているためである。
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