グローバルサウス主導の通貨多極化:非米ドル決済網構築の現状と国際金融システムへの影響(2026年3月)

地政学的緊張と通貨多極化の加速:2026年3月時点の概観

2026年2月28日に勃発したイラン戦争を含む地政学的緊張は、世界の通貨市場に影響を与え、米ドルは当初軟化しましたが、安全資産としての需要からその後安定する動きを見せました。この地政学的リスクの高まりは、国際金融システムの不安定化を招き、米ドル以外の決済手段や通貨の多様化への関心を高める要因となっています。こうした背景のもと、BRICS諸国を中心とするグローバルサウスでは、非米ドル決済網の構築と通貨の多極化に向けた具体的な動きが加速しています。

BRICS主導の非ドル決済網「BRICS Pay」の進展

BRICS諸国は、SWIFTや米ドルを迂回し、加盟国間の現地通貨による直接的なクロスボーダー取引を促進するため、2026年中に「BRICS Pay」を段階的に導入する計画を進めています。この動きは、脱ドル化の具体的な進展を反映しており、すでに2024年には中国とロシア間の貿易取引の90%以上が米ドルを使用せずに決済されました。また、BRICSの新開発銀行(NDB)は、融資の3分の1を現地通貨建てで発行することを目指しており、BRICS諸国は米国債を売却し、金を買い増す動向も見せています。世界の金生産量の約50%をBRICS諸国が支配していると報じられる中、金に裏打ちされたBRICS+加盟国間の貿易決済用デジタル通貨「Unit」も2026年に試験運用されています。

中央銀行デジタル通貨(CBDC)と国際決済の新たな潮流

中央銀行デジタル通貨(CBDC)は、国際決済の多角化において重要な役割を担いつつあります。中国のデジタル人民元(e-CNY)は、2026年1月から利息付与制度を開始し、人民元の国際化と米ドル基軸通貨体制への対抗という戦略的意図を持って実用化を進めています。また、中国、タイ、香港、アラブ首長国連邦、サウジアラビアの中央銀行が参加する「Project mBridge」は、ブロックチェーン技術を活用し、現地デジタル通貨による即時かつ直接的なクロスボーダー決済を可能にしています。米国では2025年7月にGENIUS法が可決され、決済ステーブルコインの規制枠組みが確立されており、金融市場はこの動きを既存の決済業界への競争上の脅威と見なしています。

米ドル基軸通貨体制への影響と今後の展望

グローバルサウスのこうした動きは、米ドル基軸通貨体制に長期的な影響を与える可能性があります。2022年のロシア資産凍結を受け、2026年初頭までに世界の外貨準備におけるドルのシェアは58%を下回る水準に低下しました。さらに、サウジアラビアと米国の間の「ペトロダラー」協定が2024年6月に満期を迎え、更新されず実質的に終了したと報じられており、サウジアラビアは非ドル決済を受け入れる姿勢を示しています。これらの動向は、ドルの「法外な特権」と呼ばれる国際金融システムにおける優位性に変化をもたらす可能性を示唆しています。一方で、米ドルは依然として安全資産としての強い地位を保ち、既存のネットワーク効果も強固であるため、通貨多極化への移行は緩やかなプロセスとなると見られています。

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Reference / エビデンス