北米エネルギー政策の動向:米国の環境規制見直しとカナダの電力輸出審査強化

米国:環境規制緩和と政策の動向

2026年3月2日、米国環境保護庁(EPA)は、2009年に温室効果ガスが危険をもたらすとの認定を撤廃しました。これは、クリーンエア法に基づき連邦政府が温室効果ガスを規制するための法的根拠となっていましたが、この決定により、バイデン政権時代に導入された車両排出基準が無効化され、発電や輸送を含む主要セクターからの気候汚染を規制する連邦政府の権限が弱体化することになります。この決定は、すでに法的異議申し立てを引き起こしています。

カナダ:エネルギー輸出促進と規制の再調整

カナダエネルギー規制庁(CER)は、2026年3月7日、Powell River Energy Inc.が米国へ年間最大70万MWhの電力を30年間輸出する申請を「許可」プロセスに指定しました。これにより、CER委員会は裁量権を行使し、公聴会を開催したり、特定の条件を付与したり、あるいは申請を却下したりする柔軟性が得られることになりました。

北米におけるエネルギー政策の政治的調整と市場への影響

北米では、国内の環境目標とエネルギー輸出促進という目標の間で、政策の政治的な調整が見られます。米国では、重要な環境規制の法的根拠が撤廃される動きがあり、連邦政府の温室効果ガス規制権限が弱体化する可能性が示されています。一方、カナダでは、米国への電力輸出申請に対して、より慎重で裁量的な審査プロセスが適用されることが決定しました。

2026年3月に実施されたPew Research Centerの調査によると、米国の共和党支持者の間では、2020年とは逆転し、過半数が風力・太陽光発電よりも石油、石炭、天然ガスといった化石燃料を優先すべきだと考えていることが明らかになりました。民主党の風力・太陽光発電への支持は依然として高いものの、以前よりわずかに低下しています。これらの動きは、エネルギー政策が地政学的要因、経済的利益、そして国内の世論の変化によってどのように形成されているかを示すものとして、エネルギーアナリストにとって今後の動向を予測する上での基礎情報となります。

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Reference / エビデンス

  • Washington Update: Sustainable Energy & Infrastructure — March 2026 | ML Strategies 2026年3月2日、米国環境保護庁(EPA)は、クリーンエア法に基づく連邦政府の温室効果ガス規制の法的根拠であった2009年の危険認定を撤廃した。この決定は、バイデン政権時代の車両排出基準を無効にし、発電や輸送を含む主要セクターからの気候汚染を規制する連邦政府の権限を弱体化させるものであり、すでに法的異議申し立てを引き起こしている。
  • Canada Gazette, Part I, Volume 160, Number 10: ORDERS IN COUNCIL 2026年3月7日、カナダエネルギー規制庁(CER)は、Powell River Energy Inc.が米国への電力輸出を30年間、年間最大70万MWhまで行うとする申請を「許可」プロセスに指定した。これにより、CER委員会は裁量権を行使し、公聴会を開催したり、条件を課したり、申請を却下したりする柔軟性が得られることになった。
  • EPA Finalizes Historic New Renewable Fuel Standards to Strengthen American Energy Security, Support Rural Economies 2026年3月27日、米国環境保護庁(EPA)は、2026年および2027年の再生可能燃料基準(RFS)Set 2最終規則を発表し、過去最高の再生可能燃料混合義務量を設定した。これにより、バイオディーゼルと再生可能ディーゼルの生産・使用が2025年比で60%以上増加すると推定されている。また、この規則は再生可能電力をRFSプログラムから除外し、当初提案されていた外国産原料への制限を延期した。
  • US Oil Gas Export Policy Remains Open Despite Crisis - Discovery Alert 2026年3月20日時点の分析によると、米国は国内燃料価格の上昇や中東・東欧での地政学的紛争による供給懸念にもかかわらず、石油・ガス輸出制限を検討しておらず、戦略的継続性と世界エネルギー市場の安定を優先している。
  • Canada Eases Climate Rules In Bid To Boost Energy Investment - Carbon Herald 2026年3月30日、カナダ連邦政府とアルバータ州は、エネルギー投資と輸出能力を加速させるため、石油・ガスセクターの排出量上限設定や一部のクリーン電力規制を含む複数の気候変動対策を緩和する合意に達した。この合意は、アルバータ州が産業炭素価格設定枠組みを強化し、大規模な炭素回収・貯留(CCS)開発を支援することと引き換えに行われ、アジア市場へのパイプラインインフラ拡大と米国への輸出依存度低減を目指すカナダのエネルギー戦略の転換を示すものである。
  • Week ending March 21, 2026 – ESAA - Environmental Services Association of Alberta 2026年3月21日、カナダとアルバータ州は、アルバータ州における主要プロジェクトの建設を加速するための環境・影響評価に関する原則合意に達した。この合意は、主要プロジェクトに対して「1つのプロジェクト、1つのレビュー」アプローチを導入し、評価プロセスを合理化しつつ、強力な環境保護と先住民コミュニティの権利尊重を強化することを目的としている。
  • Canada's Energy Future 2026 2026年3月17日、カナダエネルギー規制庁(CER)は、2050年までの長期的なエネルギー供給と需要予測を提示する「カナダのエネルギーの未来2026」報告書を発表した。この報告書は、すべてのシナリオで電力需要が増加し、その大部分が再生可能エネルギー源から供給されると予測している。また、天然ガス生産の加速がカナダのグローバル輸出を強化する可能性も示唆している。
  • Americans' Shifting Views on Energy Sources, Policy in 2026 | Pew Research Center 2026年3月に実施されたPew Research Centerの調査によると、共和党支持者の間では、2020年とは逆転し、過半数が風力・太陽光発電よりも石油、石炭、天然ガスといった化石燃料を優先すべきだと考えている。民主党の風力・太陽光発電への支持は依然として高いものの、以前よりわずかに低下している。