マクロ経済分析:非米ドル決済網の進展と通貨多極化の最前線 2026年3月最新動向

CIPSの多通貨対応とグローバルサウス貿易の節目:非米ドル決済網構築の進展

2026年3月初旬、世界経済は非米ドル決済網の構築と通貨の多極化に向けた具体的な進展を観測しました。特に注目されるのは、2026年2月に施行された中国のクロスボーダー人民元決済システム(CIPS)における多通貨対応への規制変更と、義烏保税物流センターが達成した1日あたりの貨物取扱額の新たな節目です。

義烏保税物流センターでは、2026年3月初旬に1日の貨物取扱額が初めて3億元(約4,350万ドル)を超えました。これは、世界経済の不確実性の中でグローバルサウス間の貿易が強化され、世界経済の安定化に貢献している広範な傾向の一部を示しています。発展途上国の輸出の半分以上が他の発展途上国向けとなっており、従来の南北貿易ルートからのシフトが明確になっています。これら一連の動きは、国際決済システムにおける米ドル依存度を低減しようとする、より広範な潮流を裏付けています。

中国CIPSの機能拡張と国際的影響

中国のCIPSは、2026年2月に施行された事業規則の改訂により、その機能範囲を大きく拡張しました。この変更により、CIPSは人民元建て決済に加えて、香港ドルを含む多通貨決済に対応可能となりました。具体的には、オフショア人民元取引や中国人民銀行が承認するその他の業務を扱えるようになり、香港ドルなどの外貨によるクロスボーダー決済の運用ガイドライン作成が明示的に義務付けられました。

清華大学の教授による分析は、この機能拡張がCIPSを西側金融ネットワークの代替となる可能性を秘めていると指摘しています。中国政府は、CIPSを西側主導の国際決済アーキテクチャに対するより信頼性の高い代替手段として位置づける取り組みを強化しており、米国主導の金融ネットワークへの依存を減らし、中国の決済インフラの世界的役割を強化するという戦略的野心が反映されています。

多国籍企業は、通貨リスクの低減と流動性管理の改善のために、多様なクロスボーダー決済経路を求めており、これがCIPSの利用拡大を推進しています。2026年には、CIPSの取引が従来の貿易決済から金融市場決済、流動性管理、統合キャッシュマネジメントへと着実に拡大すると予想されています。

BRICS諸国の非ドル化戦略とデジタル通貨の動向

BRICS諸国は2026年に向けて非ドル化アジェンダを積極的に推進しており、複数の主要な取り組みが進められています。インドが議長国を務める中で、BRICS Payの拡大、金裏付け決済ツールであるBRICS Unitの導入、BRICS中央銀行デジタル通貨(CBDC)相互運用性フレームワーク、そしてBRICS新開発銀行(NDB)による現地通貨建て融資などが含まれます。BRICS Payプラットフォームは2026年の開始が予定されており、加盟国のデジタル通貨を相互接続し、SWIFTの代替を提供することで米ドルへの依存を減らすことを目指しています。また、BRICS+ブロックは世界のGDPの約40%、世界の石油生産の40%以上を占め、中国とインドはすでにロシアおよび湾岸諸国からのエネルギー輸入の50%以上を非ドル通貨で決済しています。

個別のデジタル通貨の動向としては、ロシアのデジタルルーブルが2025年1月に正式に開始され、段階的な導入が2026年9月まで進められる計画です。ブラジルは2025年にデジタルレアル(DREX)の開始を準備しており、中国との間で鉄鉱石輸出にDREXを使用する交渉を行っています。インドにおいてもe-Rupeeのパイロットプログラムが拡大しています。

しかし、BRICS内の非ドル化戦略には課題も存在します。2026年のBRICSサミットでは相互運用性計画が議題に上る予定ですが、インドは米ドルを世界経済の安定の源と見なしており、米ドルからの脱却に距離を置いています。BRICS加盟国間でも非ドル化に対する統一された見解はなく、経済格差や通貨評価の相違を理由にインドが共通通貨プロジェクトへの支持を撤回するなど、進展を阻む要因も客観的に認識されています。

広がる非米ドル決済の選択肢とグローバルサウスの台頭

非米ドル決済の選択肢は地域レベルでも拡大しており、ロシアの決済システムMirはその国際的な存在感を強めています。Mirは2015年に国内決済処理を強化するために設立され、イランは最近、Mirシステムとの統合を通じてShetabシステムをクロスボーダー利用に拡大しました。2024年10月現在、Mirはベラルーシ、タジキスタン、ベネズエラ、キューバ、モンゴル、ベトナム、アブハジア、南オセチア、イランを含む複数の国と地域で受け入れられています。ロシア中央銀行は、アフリカを含む新たな国々へのMirシステムの拡大計画を進めています。国内においては、2026年3月1日現在、ロシアのファスターペイメントシステム(SBP)が226の銀行で利用されており、458億件の取引と239.6兆ルーブルを処理しました。また、2025年第1四半期までに4億7650万枚以上のMirカードが発行されています。

アジア地域では、韓国とインドネシアがクロスボーダーQRコード決済サービス導入の動きを見せています。2024年7月に締結された覚書に基づき、両国は2026年2月にサービスの計画を発表しました。これにより、両国間の旅行者が両替なしで現地通貨で決済できるようになることを目指しています。

これらの動きは、発展途上国の輸出の半分以上が他の発展途上国向けとなっている「南南貿易」を強化し、世界経済の多極化に寄与しています。世界経済の不確実性が続く中で、グローバルサウス間の貿易の強化が世界経済の安定化に貢献する広範な傾向が確認されています。

米ドル支配への挑戦と今後の展望

2026年初頭現在、世界の金融システムは米ドルの緩やかな衰退、非ドル化の取り組み、そして中央銀行デジタル通貨(CBDC)パイロットプログラムを通じた移行という広範なトレンドのただ中にあります。J.P. MorganやMorgan Stanleyといった主要金融機関はドルに対して弱気な見方を示し、ユーロを支持する姿勢を見せています。地政学的緊張の高まり、インフレ圧力、通貨の変動といった要因が、中央銀行の準備金多様化アプローチを根本的に変化させており、多くの国がドル支配の貿易決済システムからの独立を求め、代替の準備通貨や国際取引のための有形資産を必要としています。その結果、中央銀行による金備蓄の増加が顕著です。

2026年には、関税の強制、財政的負担、制裁リスクが非ドル化の取り組みを再燃させており、明確な後継通貨が存在しない中で、多元的な通貨システムの形成が進行中である可能性が高いと分析されています。世界経済は、1945年のブレトンウッズ体制が反映していた力関係とは異なる、新たな多極的な秩序を反映する必要があるという見方が強まっています。

しかしながら、非ドル化の動きが進む一方で、米ドルは依然として強力な地位を保持しており、その支配的な役割が直ちに失われるわけではありません。非ドル化は長期的なプロセスであり、国際金融システムは今後も様々な課題と機会に直面し続けるでしょう。

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Reference / エビデンス

  • China's CIPS Expands as Global Payment Alternative | 2026 Update - News and Statistics ChinaのCIPSは、2026年2月に施行された規制変更により、人民元建て決済に加えて多通貨決済(香港ドルを含む)に対応するようになり、西側金融ネットワークの代替となる可能性を秘めている。清華大学の教授による報告書がこの動向を指摘している。
  • MNCs drive expansion of China's CIPS - Chinadaily.com.cn 多国籍企業は、通貨リスクの低減と流動性管理の改善のため、多様なクロスボーダー決済経路を求めており、これがCIPSのさらなる拡大を推進している。2026年には、CIPSの取引は従来の貿易決済から金融市場決済、流動性管理、統合キャッシュマネジメントへと着実に拡大すると予想されている。
  • How China opened the door to creating a direct rival to US payment systems 2026年2月に施行されたCIPSの事業規則の改訂により、オフショア人民元取引や中国人民銀行が承認するその他の業務も扱えるようになり、香港ドルなどの外貨によるクロスボーダー決済の運用ガイドライン作成が明示的に義務付けられた。
  • Inside Tehran's toll booth - Atlantic Council 2026年3月のCIPSの1日平均取引量は1,340億ドル(9,204.5億元)に達し、3月中旬から下旬にかけては1,300億ドルを超える日次観測が記録された。イランは最近、ロシアのMir決済システムとの統合を通じて、Shetabシステムをクロスボーダー利用に拡大した。
  • China pushes CIPS to compete with Western payment networks - Peachwire 中国は、CIPSを西側主導の国際決済アーキテクチャに対するより信頼性の高い代替手段として位置づける取り組みを強化している。これは、米国主導の金融ネットワークへの依存を減らし、中国の決済インフラの世界的役割を強化するという北京の広範な戦略的野心を反映している。
  • New BRICS Currency Could Reshape Global Economy by 2026-27 - GoldSilver BRICS諸国は、2026年から2027年までに共通のデジタル通貨を創設する計画を進めており、米ドルへの依存を減らし、世界の通貨システムを再構築することを目指している。
  • How Would a New BRICS Currency Affect the US Dollar? | INN - Investing News Network 2026年のBRICSサミットでは「相互運用性」計画が議題に上る予定だが、インドは米ドルからの脱却に距離を置いており、米ドルを世界経済の安定の源と見なしている。BRICS加盟国間でもこの問題に対する統一された見解はない。
  • BRICS Currency Launch Date: What We Know So Far - Gate.com BRICS共通通貨プロジェクトは2026年の開始を目指して進展しているが、インドの経済格差や通貨評価に関する意見の相違による支持撤回など、重要な課題も存在する。
  • BRICS De-Dollarization Agenda For 2026 Advances With Global Launch - Watcher Guru 2026年のBRICS非ドル化アジェンダは、インドが議長国を務める中で計画から実際の実施へと移行している。主要な取り組みには、BRICS Payの拡大、金裏付け決済ツールであるBRICS Unitの導入、BRICS CBDC相互運用性フレームワーク、BRICS新開発銀行(NDB)による現地通貨建て融資が含まれる。
  • Mir – Coverage, Adoption & Payment Details | PayAtlas Mirはロシアの決済カードシステムで、国内決済処理を強化し、外国ネットワークへの依存を減らすために2015年に設立された。トルコやアブハジアなど、ロシア人観光客が多い国々で受け入れが拡大している。
  • Brazil Prepares BRICS Common Currency Reveal in Historic Shift BRICS共通通貨構想は、ブラジルが2026年の開始に向けて主導しており、デジタル決済システムの進展や現地通貨決済の拡大が見られる。
  • CBDCs from BRICS+: a new chapter in global financial modernization - BRICS Brasil 2026年に開始予定のBRICS Payプラットフォームは、加盟国のデジタル通貨を相互接続し、SWIFTの代替を提供し、米ドルへの依存を減らすことを目指している。ロシアのデジタルルーブルは2025年1月に正式に開始され、2026年9月まで段階的に大規模な導入が進められる。ブラジルは2025年にDREX(デジタルレアル)の開始を準備しており、中国との間で鉄鉱石輸出にDREXを使用する交渉を行っている。
  • De-dollarisation 2026: Tariff war pushes countries to diversify | Policy Circle 2026年には、関税の強制、財政的負担、制裁リスクが非ドル化の取り組みを再燃させており、明確な後継通貨がないため、多元的な通貨システムが形成される可能性が高い。
  • Global Currency Reset: What It Means for Investors and Global Finance in 2026 2026年初頭、世界の金融システムでは、米ドルの緩やかな衰退、非ドル化の取り組み、CBDCパイロットプログラムを通じて移行が進行中である。J.P. MorganとMorgan Stanleyはドルに対して弱気な見方を示し、ユーロを支持している。
  • Stronger Global South trade helps stabilize world economy amid uncertainty 2026年3月初旬、義烏保税物流センターでは、1日の貨物取扱額が初めて3億元(約4,350万ドル)を超え、新たな節目に達した。これは、世界経済の不確実性の中で、グローバルサウス間の貿易が強化され、世界経済の安定化に貢献しているという広範な傾向の一部である。発展途上国の輸出の半分以上が他の発展途上国向けとなっており、従来の南北貿易ルートからのシフトを示している。
  • National Payment System | Bank of Russia 2026年3月1日現在、ロシアのファスターペイメントシステム(SBP)は226の銀行で利用されており、458億件の取引、239.6兆ルーブルを処理した。2025年第1四半期までに4億7650万枚以上のMirカードが発行された。
  • A Multipolar World: Why Asia No Longer Needs the Dollar - YouTube 2026年現在、BRICS+ブロックは世界のGDPの約40%、世界の石油生産の40%以上を占めている。BRICS+メンバー間の貿易のために設計された金裏付けデジタル決済手段である「Unit」の台頭が見られ、中国とインドはすでにロシアおよび湾岸諸国からのエネルギー輸入の50%以上を非ドル通貨で決済している。
  • Mir (payment system) - Wikipedia 2024年10月現在、Mirはベラルーシ、タジキスタン、ベネズエラ、キューバ、モンゴル、ベトナム、アブハジア、南オセチア、イランなど、ロシア国外の複数の国や地域で少なくとも1つの銀行によって受け入れられている。
  • Central Bank Gold Buying: Strategic Reserve Trends 2026 - Discovery Alert 地政学的緊張の高まり、インフレ圧力、通貨の変動が、中央銀行の準備金多様化アプローチを根本的に変化させている。多くの国は、ドル支配の貿易決済システムからの独立を求め、代替の準備通貨や国際取引のための有形資産を必要としている。
  • MIR Payment system and Russia sanctions ロシア中央銀行は、Mirシステムをアフリカを含む新たな国々へ拡大する計画を進めている。
  • A stable and smart BRICS route to de-dollarization - Asia Times 2026年の世界経済は、1945年のブレトンウッズ体制が反映していた力関係とは異なる、新たな多極的な秩序を反映する必要がある。
  • South Korea and Indonesia launch cross-border QR payments - The Paypers 韓国とインドネシアは、2026年4月1日からクロスボーダーQRコード決済サービスを開始し、両国間の旅行者が両替なしで現地通貨で決済できるようにした。これは2024年7月に締結された覚書に基づくもので、2026年2月に計画が発表された。
  • The Time of Petroyuan Has Come - Orinoco Tribune ペトロ人民元の成長は、中国が非ドル化で自国を守ろうとする意志だけでなく、世界経済の再編に基づく金融の多極化という自然な調整プロセスを反映している。