2026年3月:欧州デジタル規制の最新動向と企業法務の課題 ― DMA・CRAを中心に

欧州IT規制の最新動向:DMAコンプライアンス報告とCRAガイダンス案の発表

2026年3月9日、デジタル市場法(DMA)のゲートキーパー企業が更新されたコンプライアンス報告書を公表しました。これは、DMAの施行と遵守状況を把握する上で重要な進展です。また、これに先立つ3月3日には、欧州委員会がサイバーレジリエンス法(CRA)の適用に関するガイダンス案を公表し、意見募集手続きを開始しました。これらの具体的な動きは、欧州におけるIT規制の実施と進化が進行中であることを示しています。

デジタル市場法(DMA)の進展とゲートキーパーの責務

DMAのゲートキーパー企業は、2026年3月9日にDMA遵守に関する更新された報告書を公表しました。この報告書は、DMAが市場競争に与える影響や、ゲートキーパーが規則にどのように対応しているかを示すものです。また、DMAの施行は、市場参加者に具体的な影響を与えています。例えばAppleは、DMAがEU域内のAppleユーザーの体験を悪化させ、新たなリスクにさらし、Apple製品のシームレスな連携を妨げていると主張しています。これにより、EU域内では一部の新機能の提供が遅れる事態も発生しています。

DMAの適用範囲の可能性については、欧州委員会が2025年11月18日にクラウドコンピューティングサービスに関する市場調査を開始しています。この調査は、AWSやMicrosoft AzureがDMAのゲートキーパー指定基準を満たさない場合でも、重要なゲートウェイとして機能しているかを評価し、DMAがクラウドコンピューティング分野の競争力と公平性に対処できるかを検証することを目的としています。

サイバーレジリエンス法(CRA)の具体化と企業への影響

2026年3月3日、欧州委員会はサイバーレジリエンス法(CRA)の適用に関するガイダンス案を公表し、意見募集を開始しました。このガイダンス案は、CRAの適用範囲や実質的変更などの重要概念を明確化し、事業者のCRA対応を支援することを目的としています。CRAは2024年12月10日に発効しており、欧州委員会は、具体的なガイダンスを通じて、企業が適切な準備を進めることを期待しています。

多層化するEUデジタル規制:相互作用と「デジタルオムニバス」の動向

欧州のIT規制は、デジタル市場法(DMA)やサイバーレジリエンス法(CRA)に加えて、複数の法律が並行して展開される多層的な状況を呈しています。例えば、EUの「データ法(Data Act)」は2025年9月12日に施行され、ほとんどの規則が適用されています。この法律は、IoT製品やクラウドサービスから生成されるデータの取り扱いルールを定め、データ流通と活用を促進することを目的としています。

また、欧州委員会は2026年1月21日、EUにおける通信・接続ネットワーク分野の規制を近代化・簡素化・調和させることを目的とした「デジタル・ネットワーク法案(Digital Networks Act:DNA)」を発表しました。

さらに、欧州委員会は2026年初頭に、既存のEUデジタル法(GDPR、ePrivacy、データ法、AI Act、サイバーセキュリティフレームワークなど)の側面を合理化・整合させるための「デジタルオムニバス」パッケージを検討しています。

テック企業法務担当者が注視すべき今後の展望

欧州のIT規制環境は今後も進化し続けることが予想されます。テック企業法務担当者は、これらの複雑な規制環境に対応するため、継続的な情報収集とプロアクティブなコンプライアンス体制の構築が不可欠です。特に、欧州委員会が開始したDMAに基づくクラウドコンピューティングサービスに関する市場調査の動向など、規制当局の動きを継続的に監視する必要があります。

各規制の差異を正確に理解し、自社のビジネスモデルに与える影響を構造的に分析する視点が、欧州市場で事業を展開する上で重要となるでしょう。

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Reference / エビデンス