2026年3月北米インフラ投資最前線:米雇用統計と政策転換が示唆するもの
米国:インフラ投資の経済的背景と政策転換
2026年3月6日には米国の2月雇用統計が発表され、経済状況の最新情報が提供されました。このような経済的背景の中、米国ではインフラ投資の方向性に影響を与える重要な政策転換が見られます。2026年2月12日、米国環境保護庁(EPA)は、温室効果ガス(GHG)が公衆衛生および環境に脅威をもたらすとする2009年の危険認定を廃止する最終規則を発表し、これによりGHG排出を規制する連邦政府の権限が縮小されました。また、2026年2月2日には、戦略的クリティカルミネラル備蓄システム「プロジェクト・ヴォルト」が立ち上げられました。これは、100億米ドル規模の米国輸出入銀行による融資と約20億米ドルの民間資金によって支えられる制度です。これらの政策転換は、今後のインフラ投資、特にクリーンエネルギーや製造業関連プロジェクトの動向に影響を与えるものと見られます。
経済指標では、2026年2月のISM製造業PMIは52.4、ISM非製造業PMIは56.1でした。企業コメントでは、232条関税の影響により、米国産鉄鋼やアルミなどの素材価格が高騰し、需要と収益性を低下させているとの指摘があります。
米国連邦インフラ主要法の予算配分と執行状況
超党派インフラ法(IIJA)は2021年11月15日に成立し、2021年から2026年までのインフラプロジェクト向けに総額1.2兆ドルの資金提供を含んでいます。このうち、2024年3月中旬時点で約4,920億ドルがまだ配分されておらず、2024年8月時点では約60%が配分済みで、多くのプロジェクトが計画段階にあるとされています。バイデン政権下で民間企業が発表した製造業への投資額は、2024年3月中旬時点で6,760億ドルに達しました。IIJAは超党派の支持を得て可決されたため、共和党が政権を奪還しても撤回される可能性は低いと見られています。
インフレ抑制法(IRA)は2022年8月16日に成立し、気候変動対策への米国政府による過去最大規模の投資を定めています。関連して、2025年7月4日には「One Big Beautiful Bill Act (OBBBA)」が成立し、インフレ削減法(IRA)に基づくクリーンエネルギー関連税制が整理されました。IRAは、共和党政権下では撤廃よりも実施の遅れに直面する可能性が高いと見られています。
CHIPSおよび科学法(CHIPS法)は半導体製造への民間投資を促進しており、米国での半導体製造に係る民間投資は3,000億ドルを超えました。例えば、TSMCは2025年3月に米国事業拡大のため1,000億ドルの追加投資を発表し、総投資額は1,650億ドルとなりました。CHIPS法も超党派の支持を得て可決されたため、共和党が政権を奪還しても撤回される可能性は低いとされています。
製造業の投資も活発です。2025年1月から9月の間に、電子機器、医薬品、半導体業界などの企業は、米国の生産能力向上に1.2兆ドル以上の投資を行うと発表しました。これにより、米国の製造関連の民間建設支出は、2021年1月の762億ドルから2025年1月には約2,300億ドルへと約3倍に増加しています。
エネルギー政策の面では、2025年1月20日に発足したトランプ政権下において、エネルギー省のクリス・ライト長官は電力需要増大への対応方針として、原子力と火力発電を重視する「ベースロード電源とディスパッチ可能な電源の拡大」に重点を置くことを明言しました。これはデータセンターなどの大口電力需要に対応するためです。一方で、2025年1月21日にはクリーンエネルギー推進に関する12の大統領令が廃止されています。
また、クリーンテック投資における政府支援には変化が見られます。2026年2月18日に報じられた内容によると、米国連邦政府はクリーンテック投資において「選別」段階に移行しており、実行可能性や財政リスクを理由に、水素、二酸化炭素回収・貯留(CCS)、EV充電網、送電網、農業分野の脱炭素化事業など、総額数百億ドル規模のプロジェクトの執行停止や打ち切りを相次いで実施しました。
カナダ:2025-2026年度連邦予算とインフラ投資の展望
カナダでは、2025-2026年度連邦予算が2026年1月13日に承認されました。この予算では、カナダインフラ銀行の資本が350億ドルから450億ドルに増額され、より多くの「国家建設」プロジェクトへの資金提供が可能となりました。また、2025-2026年度の財政赤字は783億カナダドル(約574億米ドル)に増加しました。さらに、2026年2月26日には2026-27年度の歳出計画が公表されています。
[ Advertisement ]Reference / エビデンス
- 米国環境エネルギー政策動向 マンスリーレポート - ジェトロ 2026年3月5日に公開されたレポートによると、米国エネルギー省(DOE)は2月25日にジョージア州とアラバマ州の送電網強化のため、サザン・カンパニー社に過去最大となる合計265億ドルの融資提供を発表した。また、日米重要鉱物プロジェクト協力に関する共同ファクトシートが発表され、13件の支援対象プロジェクトが特定された。
- 米国 気候変動対応とクリーンエネルギー政策 - EnviX インフラ投資雇用法(BIL)は2021年11月15日に成立し、2025年以降5年間で総額1.2兆ドルを歳出予定で、このうち気候変動対策・クリーンエネルギー関連予算は5,500億ドルである。インフレ抑制法(IRA)は2022年8月16日に成立した。2025年2月時点でBILおよびIRAによる補助金が一時保留され、2025年1月21日にはクリーンエネルギー推進に関する12の大統領令が廃止された。
- Canada approves 2025-2026 federal budget for next five years カナダの2025-2026年度連邦予算は2026年1月13日に承認され、今後5年間で総額2,800億カナダドル(約2,051億米ドル)の支出が計画されている。このうち、2026-2027年度から10年間で、州・準州の住宅、保健、教育インフラプロジェクトに172億カナダドル(約126億米ドル)が割り当てられる。2025-2026年度の財政赤字は783億カナダドル(約574億米ドル)に増加した。政府は今後5年間で約1兆カナダドル(約7,326億米ドル)の投資誘致を目指している。
- Department of Finance Canada's 2026-27 Departmental Plan
- 米国のインフラは選挙後も拡大し続ける見通し | Global X Japan インフラ投資・雇用法(IIJA)、CHIPS法、インフレ抑制法(IRA)に基づき、今後数年間で米国のインフラ・バリューチェーンに数千億ドルの資金が新たに投入される予定である。IIJAに基づく資金は、2024年8月時点で約60%しか配分されておらず、多くのプロジェクトがまだ計画段階にある。これらの法律は超党派の支持により、選挙後もほぼそのまま維持される見通しである。
- Federal Budget Highlights – CHG 2026 - Capital Hill Group カナダの2025年度予算では、カナダインフラ銀行の資本が350億ドルから450億ドルに増額され、より多くの「国家建設」プロジェクトへの資金提供が可能となる。
- 2026–27 Expenditures by Purpose - Canada.ca
- 製造業の復活が米国のインフラ支出を推進 | Global X Japan 2025年1月から9月の間に、電子機器、医薬品、半導体業界などの企業は、米国の生産能力向上に1.2兆ドル以上の投資を行うと発表した。米国の製造関連の民間建設支出は、2021年1月の762億ドルから2025年1月には約2,300億ドルへと約3倍に増加した。CHIPS法成立後、米国での半導体製造に係る民間投資は3,000億ドルを超え、TSMCは2025年3月に米国事業拡大のため1,000億ドルの追加投資を発表し、総投資額は1,650億ドルとなった。
- 米大統領選プレビュー:両党が合意に至りやすいインフラ開発 | Global X Japan インフラ投資・雇用法(IIJA)は、2021年から2026年までのインフラプロジェクト向けに1.2兆ドルの資金提供を含み、そのうち約4,920億ドルが2024年3月中旬時点でまだ配分されていない。バイデン政権下で民間企業が発表した製造業への投資額は、2024年3月中旬時点で6,760億ドルに達した。インフレ抑制法(IRA)は、気候変動対策に向けた米国政府による過去最大規模の投資であり、共和党政権下では撤廃よりも実施の遅れに直面する可能性が高いと見られている。IIJAとCHIPS法は超党派の支持を得て可決されたため、共和党が政権を奪還しても撤回される可能性は低い。
- 世界の政治・経済日程(2026年)(北米) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース 2026年3月6日に米国の2月雇用統計が発表される予定である。
- サステナビリティ情報開示のグローバル動向2026年3月号 | EY Japan 2026年3月9日に公開されたレポートによると、2026年2月12日、米国環境保護庁(EPA)は、温室効果ガス(GHG)が公衆衛生および環境に脅威をもたらすとする2009年の危険認定を廃止する最終規則を発表した。これにより、GHG排出を規制する連邦政府の権限は縮小される。また、2026年2月2日、米国は「プロジェクト・ヴォルト」を立ち上げ、100億米ドル規模の米国輸出入銀行による融資と約20億米ドルの民間資金によって支えられる戦略的重要鉱物備蓄制度を創設した。
- 米国経済マンスリー:2026年3月 ~スタグフレーションのリスクはまだ小さい~ | 前田 和馬 2026年2月のISM製造業PMIは52.4、ISM非製造業PMIは56.1であった。企業コメントでは、232条関税により米国産鉄鋼やアルミなどの価格が高騰し、需要と収益性を低下させているとの指摘があった。
- 米国クリーンテック投資の新潮流(1)政府支援後退で選別厳格化 - ジェトロ 2026年2月18日に公開されたレポートによると、米国連邦政府はクリーンテック投資において「選別」段階に移行しており、実行可能性や財政リスクを理由に、水素、二酸化炭素回収・貯留(CCS)、EV充電網、送電網、農業分野の脱炭素化事業など、総額数百億ドル規模のプロジェクトの執行停止や打ち切りを相次いで実施した。2025年7月4日に成立した「One Big Beautiful Bill Act (OBBBA)」により、インフレ削減法(IRA)に基づくクリーンエネルギー関連税制も大幅に整理され、一部の税額控除は2025年秋から2026年半ばにかけて段階的に終了する。
- AIとFERC (2026年2月5日 No.3716) | 週刊 経団連タイムス 2025年1月20日に発足したトランプ政権下では、エネルギー省のクリス・ライト長官が電力需要増大への対応方針として、原子力と火力発電を重視する「ベースロード電源とディスパッチ可能な電源の拡大」に重点を置くことを明言した。これは、データセンターなどの大口電力需要に対応するためである。
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