北米安全保障の変革期:メキシコとカナダの戦略的対応

メキシコ:カルテル対策における米国との安全保障協力の深化

2026年2月22日、メキシコ特殊部隊は米国からの情報支援を受け、ハリスコ新世代カルテル(CJNG)のリーダーであるネメシオ・オセゲラ・セルバンテス(通称エル・メンチョ)を殺害しました。この作戦は、2016年のホアキン・“エル・チャポ”・グスマン再逮捕以来、メキシコ政府にとって最も重要な戦術的成功と評価されています。

シェインバウム政権は、米国との情報関係を強化・深化させており、これにはCIAによるメキシコ国内のカルテル支配地域での航空監視拡大の容認や、ワシントンとメキシコシティ間の情報共有の増加が含まれます。また、シェインバウム政権はラファエル・カロ・キンテーロやオセゲラの兄弟を含む90人以上の高位麻薬密売人を米国に引き渡しています。これらの協力は、ドナルド・トランプ大統領からのフェンタニル密輸業者対策への強い圧力や、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の更新への影響を考慮したメキシコの戦略的対応の一環と見られています。

2026年3月6日には、米墨ハイレベル対話シリーズの初回セッションが開催され、両国は麻薬・武器密輸対策における協力の重要性を強調しました。米国大使館は2026年3月2日に発表した渡航情報で、大規模な治安作戦によってカルテル関連の暴力は沈静化したものの、犯罪や誘拐のリスクは依然として高く、メキシコ全体にレベル2の渡航勧告(注意を強化)を発令していると警告しました。

カナダ:防衛産業戦略の推進とNATO目標へのコミットメント

2026年2月17日、マーク・カーニー首相はカナダ初の国防産業戦略を発表しました。この戦略は、カナダのサプライヤーと資材を優先し、カナダのイノベーションと商業化に投資し、調達を合理化することを目指しており、これによりカナダの航空宇宙、サイバー、その他の産業が国内および信頼できるパートナーへの販売を拡大し、高賃金の雇用を創出することが期待されています。この戦略を通じて、カナダは国内サプライヤーの優先とイノベーションへの投資を通じ、米国を含む外国サプライヤーへの依存を減らし、戦略的自律性を強化する狙いです。

カナダ政府は、国防費を2025-2026会計年度にGDPの2%に、そして2035年までにGDPの5%に増やすという積極的な計画を提示しています。実際、カナダは2025-2026会計年度にGDPの2%を防衛費に充てるという目標をすでに達成しています。これは、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)近代化計画の一環として20年間で874億ドルを投資するなど、北極圏と北部地域におけるカナダのプレゼンスと能力を強化する継続的な投資によって支えられています。2026年3月2日に開催されたオタワ安全保障・防衛会議では「5%への道」がテーマとされ、連邦政府が今後10年間で国防費をGDPの5%に増やすという公約が強調されました。

北米防衛負担の政治的議論と広範な文脈

北米における防衛負担に関する政治的議論は、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が国防費を2035年までにGDPの5%に増やすという新たな公約を掲げている広範な文脈の中で位置づけられます。この目標は、米国とNATO同盟国間の国防費の格差を是正し、より大きな負担分担を促進することを目的としています。

カナダによる防衛費増額と国内産業強化の動きは、このような北米全体の防衛負担再編の動きの中で、その戦略的意義を増しています。長年の資金不足の後、軍隊を変革しようとするカナダの試みは、NATOの国防投資公約の論理を規模だけでなく戦略的志向においても反映しており、現代の防衛には強固な産業能力、強靭なインフラ、迅速な対応能力が必要であるという認識に基づいています。

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Reference / エビデンス

  • U.S.-Mexico Cooperation After El Mencho | Lawfare 2026年2月22日、メキシコ特殊部隊はCIAから提供された情報に基づき、ハリスコ新世代カルテル(CJNG)のリーダーであるネメシオ・オセゲラ・セルバンテス(通称エル・メンチョ)を追跡し殺害しました。これはメキシコ政府にとって2016年のホアキン・“エル・チャポ”・グスマン再逮捕以来の最も重要な戦術的成功です。シェインバウム政権は米国との情報関係を強化・深化させており、これにはCIAによるメキシコ国内のカルテル支配地域での航空監視拡大の容認や、ワシントンとメキシコシティ間の情報共有の増加が含まれます。また、シェインバウム政権はラファエル・カロ・キンテーロやオセゲラの兄弟を含む90人以上の高位麻薬密売人を米国に引き渡しています。
  • Canada advances Defence Industrial Strategy to strengthen security, sovereignty and prosperity 2026年3月9日、カナダのジョリー産業大臣、マクギンティ国防大臣、フーア国防調達担当国務長官は、カナダの国防産業戦略の下で国立研究評議会(NRC)が9億ドル以上を投資すると発表しました。この戦略は、国防およびデュアルユース技術の開発を加速し、国内サプライチェーンを強化し、カナダの国防セクターを世界的に競争力のあるものにすることを目指しています。この初期投資は、カナダが2025-2026会計年度にGDPの2%を防衛費に充てるという目標達成に貢献します。また、カナダは2035年までにGDPの5%を投資するという新たな北大西洋条約機構(NATO)国防投資公約を達成する道筋にあります。
  • US and Mexico tout 'historic' security cooperation as DEA, Mexican officials meet in Washington 2026年3月18日、在メキシコ米国大使ロナルド・ジョンソンは、トランプ大統領とシェインバウム大統領の主導による両国間の「歴史的な協力」が具体的な成果をもたらし続けているとソーシャルメディアで述べました。メキシコ治安大臣オマール・ガルシア・ハルフッチも、ワシントンD.C.で米国麻薬取締局(DEA)長官と会談し、麻薬密売対策、武器密輸阻止、暴力削減のための二国間協力強化の重要性について議論しました。米国大使は、トランプ政権下で米国諜報機関がメキシコ当局によるエル・メンチョの居場所特定を支援したこと、および米国がメキシコ行きの銃器4,500丁と弾薬65万発を阻止したことを強調しました。
  • Bullets Not Hugs? Mexico's New Old Security Strategy - Stimson Center 2026年2月22日のカルテルリーダー「エル・メンチョ」殺害は、シェインバウム大統領の安全保障政策における変化を示唆しています。ロペス・オブラドール前大統領の「抱擁、銃弾なし」政策とは異なり、シェインバウム大統領は貧困対策を優先しつつも、ドナルド・トランプ大統領からのフェンタニル密輸業者対策への強い圧力に直面しており、今回の作戦はそのメッセージを受け取ったことを示唆しています。
  • Mexico's anti-cartel operations seek to prove to Trump it is serious about security, as World Cup looms | Chatham House 2026年2月22日、メキシコ軍は米国からの情報・諜報支援を受けて、ハリスコ新世代カルテル(CJNG)に対する大規模作戦を実施し、リーダーのエル・メンチョを負傷させ、後に死亡させました。シェインバウム大統領は、このような作戦とトランプ政権の要求への協力が、メキシコをより抜本的な米国の行動から守ることを期待しています。この成功した安全保障協力は、米国に対しメキシコが信頼できるパートナーであることを示し、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の更新に向けた対話と協力の基盤を築くのに役立つと見られています。
  • Canada advances Defence Industrial Strategy to strengthen security, sovereignty and prosperity 2026年3月19日、カナダのデビッド・J・マクギンティ国防大臣は、カナダの国防産業戦略を通じて、国立研究評議会(NRC)が9億ドル以上を投資すると発表しました。この投資は、量子技術の開発と商業化を支援することに重点を置いており、カナダ軍の将来の能力を解き放ち、国内で高賃金の雇用を創出することを目指しています。この戦略は、カナダの安全保障、経済的繁栄、および主要な産業能力を強化するために、国防産業基盤を強化する長期的な政府全体のアプローチを追求しています。
  • Federal govt announces investment in defence innovation – March 9, 2026 - YouTube 2026年3月9日、オタワでの記者会見で、メラニー・ジョリー産業大臣は、国立研究評議会がカナダの国防産業戦略の下で約9億ドルを投資すると発表しました。この資金は、ドローンおよび航空宇宙技術への投資を含む予定です。
  • Prime Minister Carney launches Canada's first Defence Industrial Strategy to strengthen security, create prosperity, and reinforce strategic autonomy 2026年2月17日、マーク・カーニー首相はカナダ初の国防産業戦略を発表しました。この戦略は、カナダのサプライヤーと資材を優先し、カナダのイノベーションと商業化に投資し、調達を合理化することで、国防産業を変革することを目指しています。これにより、カナダの航空宇宙、サイバー、その他の産業が国内および信頼できるパートナーへの販売を拡大し、国防サプライチェーン全体で高賃金の雇用を創出することが期待されています。この戦略は、今後10年間で1800億ドルの国防調達機会と2900億ドルの国防関連資本投資機会を活用することを目指しています。この戦略は、2025-26会計年度に国防投資をGDPの2%に、2035年までにGDPの5%に増やすという目標を掲げています。
  • US defense spending would rise $445bn under Trump budget plan, with steep cuts elsewhere - The Guardian 2026年10月1日に始まる2027会計年度の提案の下で、国防費は2026年の水準から4450億ドル増の1.5兆ドルに42%増加する見込みです。この資金は、「米国が世界で最も強力で有能な軍隊を維持する」ことを目的としたプログラムに充てられ、国防製造産業基盤の拡大や、米国への攻撃を阻止するための宇宙ベース兵器システム「ゴールデンドーム」への資金提供が含まれます。また、この提案には、米墨国境をパトロールするための軍事装備と人員に約15億ドルの資金が含まれています。
  • Trump Asks Congress For $1.5 Trillion Defense Budget—After Teasing Medicaid, Medicare Cuts - Forbes 2026年4月3日、ドナルド・トランプ大統領は、2027会計年度の国防総省予算として1.5兆ドルを議会に要求しました。これは、国防総省のすでに記録的な2026年の支出計画から約40%の増加であり、トランプ大統領が社会サービスプログラムよりも国防支出を優先する姿勢を明確にしています。
  • Advancing Security Cooperation Between the United States and Mexico – High Level Dialogue Series 2026年3月6日、米州対話のメキシコプログラムは、政府、民間セクター、専門家コミュニティの主要な関係者を招き、新しい四半期ごとの非公開の米墨ハイレベル対話シリーズの初回セッションを開催しました。このセッションでは、米墨安全保障協力の現状と、協力のための最も実行可能な経路が検討されました。参加者は、持続的な協力には両国の政治サイクルを考慮し、関係と信頼が政策成果の基盤となるため、継続的な関与が重要であると強調しました。また、安全保障は貿易や移民、特に国境地域と切り離せないという中心的なテーマが挙げられました。効果的な協力には、違法薬物、武器の流れ、犯罪組織を支える金融ネットワークという「市場システム」に対処する必要があることも強調されました。
  • Be Smart When Visiting Mexico Over Spring Break 2026 - Vax-Before-Travel 2026年3月2日に発表された米国大使館のメッセージによると、メキシコでの大規模な治安作戦(2月22日)によって引き起こされた大規模な暴動は沈静化しましたが、犯罪や誘拐などのリスクは依然として存在すると警告しています。米国務省はメキシコに対し、全体としてレベル2の渡航勧告(注意を強化)を発令しており、6つの州はレベル4(渡航中止)に分類されています。
  • Canada to boost Arctic defenses, says it can no longer rely on others | World News 2026年3月12日、カナダのマーク・カーニー首相は、広大な北極圏の防衛を強化するために350億カナダドル(約4.1兆円)の計画を発表しました。これは、カナダが米国への依存度を減らそうとする試みの一環です。カナダは伝統的に、広大な北極圏の監視を米国の支援に依存してきましたが、トランプ大統領の関税やカナダ併合に関する発言が両国関係に緊張をもたらしています。カーニー首相は、「我々はもはやいかなる一国にも依存せず、より強力で、より独立した国を築く。この新しい計画により、カナダは北極圏の主権を守るための全責任を負う」と述べました。
  • GOVERNMENT CONTRACTING INSIGHTS: U.S.-Canada Defense Relationship Evolving 2026年、米国とカナダの防衛関係は進化する準備ができており、国境の両側の産業関係者の注目を集めるでしょう。カナダは長年の資金不足の後、軍隊を変革しようとしており、米国は新たな機会と競争を見出すかもしれません。カナダ政府の2025年予算は、国防費を2025-2026年にGDPの2%に、2035年までにGDPの5%に大幅に引き上げるという積極的な計画を提示しています。この野心的な資金提供の約束は、NATOの国防投資公約の根底にある論理を規模だけでなく戦略的志向においても反映しています。この公約は、現代の防衛には従来の軍事支出だけでなく、強固な産業能力、強靭なインフラ、迅速な対応能力が必要であると主張しています。
  • Canada achieves the 2% of gross domestic product defence spending benchmark カナダは2025-2026会計年度にGDPの2%を防衛費に充てるという目標を達成しました。これは、2022年6月に発表された北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)近代化計画の一環として、20年間で874億ドルの投資を行うなど、北極圏と北部地域におけるカナダのプレゼンスと能力を強化する継続的な投資によって支えられています。NORAD近代化計画の一部である320億ドルの計画は、北極圏の主権、インフラ、長期開発を強化し、北極圏防衛における米国への依存を減らしつつ、軍事および経済目的のインフラを強化することを目指しています。
  • STRATEGIC - CDA Institute 2026年3月2日に開催されたオタワ安全保障・防衛会議のテーマは「5%への道」であり、これはカナダの歴史における決定的な瞬間を反映しています。連邦政府が今後10年間で国防費をGDPの5%に増やすという公約は、カナダ軍の規模、構造、即応性、さらには国の経済とカナダ社会の未来に広範な影響を与えるでしょう。この投資増加は、カナダとその同盟国にとって地政学的緊張が高まる時期に行われます。
  • Global Defense Spending Surges, NATO Allies Commit to Increased Investment 2025年には、NATO加盟31カ国すべてがGDPの少なくとも2%を防衛費に充てるという公約を達成しました。2035年までに、NATO加盟国は国防費をGDPの5%に増やすことを約束しています。この目標は、米国とNATO同盟国間の国防費の格差を是正し、より大きな負担分担を促進するためのものです。
  • White House Requests Record $1.5 Trillion Defense Budget for 2026 | Cross Bay News 2026年6月3日(火)に発表されたホワイトハウスの提案によると、2026会計年度の国防予算として記録的な1.5兆ドルが要求されました。この提案は、世界的な脅威に対抗するための軍事力強化を目指していますが、国内の社会プログラムへの資金提供に関する疑問を提起しています。この前例のない要求は、米国史上最大の国防予算であり、国家安全保障への必要な投資と見なす住民もいれば、地方サービスや国内支出の優先順位への潜在的な影響を懸念する住民もいます。
  • イラン戦争で米国の国防費支出が大幅に増えるものと予想される状況で、ホワイトハウスが1兆5000億ドル(約2264兆ウォン)規模の来年度国防予算案を作成したと、ニューヨークタイムズ(NYT)などが4日(.. - MK 2026年4月4日(現地時間)、ニューヨークタイムズなどが報じたところによると、イラン戦争で米国の国防費支出が大幅に増えることが予想される中、ホワイトハウスは1兆5000億ドル規模の来年度(2026年10月~2027年9月)国防予算案を作成しました。これは現在の2026会計年度の国防予算より約40%増加した規模です。ホワイトハウスは、この国防費増額要求の規模について、「現在のグローバル脅威環境を認識し、韓国軍の戦闘準備態勢と戦闘力を回復するための水準」と説明しています。