北米巨大IT企業の独占禁止法と規制:2026年3月主要動向と法務戦略
北米巨大IT規制の最新動向:Google広告技術訴訟の進展とFTCの新たな焦点
2026年3月4日、Googleの広告事業に関する統合独占禁止法訴訟において、ニューヨーク州の裁判官は、Googleが反競争的行為を行ったことを争うことを事実上禁じる判決を下しました。この判決は、2025年4月にバージニア州の裁判所がGoogleがパブリッシャー向け広告サーバーおよび広告交換市場を独占し、連邦独占禁止法に違反したと認定した判断に基づくものです。これに続き、2026年3月5日には、FTC消費者保護局長のクリストファー・ムファリッジ氏が、公正で透明なチケット市場の確保、決済システムの健全性の保護、欺瞞的な定期購入への対策という3つの執行優先事項を概説しました。これらの動向は、北米における巨大IT企業に対する規制強化の動きを象徴しています。
米国における独占禁止法執行の現状:主要訴訟の進捗と司法の姿勢
米国の独占禁止法執行において、Googleの検索独占禁止法訴訟では進展が見られます。2025年9月、アミット・P・メータ判事は行動是正措置を課し、独占的配信契約を禁止し、限定的な検索データ共有を義務付けました。司法省によるChromeの事業分割要求は却下されました。2026年を通じて技術委員会がこれらの是正措置の実施を監督しており、2026年2月13日には連邦判事が司法省とGoogleに対し、監視委員会のメンバーの勤務形態と報酬を決定するよう命じました。Googleは責任認定判決の一部を控訴し、データ共有要件の延期を求めていますが、2026年2月3日、独占禁止法執行機関はGoogleの命令停止要求に反対しています。
Appleに対する司法省の独占禁止法訴訟は、2024年3月に提訴されました。2025年6月30日には、ニュージャージー州の連邦判事がAppleの却下申し立てを棄却し、訴訟の続行を許可しました。
Amazonに対するFTCの独占禁止法訴訟は、2023年9月に提訴されました。2024年10月には、連邦判事がFTCの訴訟の続行を許可しました。この訴訟では、Amazonが市場での地位を乱用してプラットフォーム内外で価格をつり上げ、販売者に過剰な料金を請求し、競争を阻害していると主張されています。
Metaに対するFTCの独占禁止法訴訟では、2025年11月18日に米国判事がMetaがソーシャルネットワーキングにおいて独占を保持していないと判断し、同社の事業に対する主要な異議申し立てを退けました。しかし、FTCは2026年1月21日にこの判決を控訴すると発表しており、MetaがInstagramとWhatsAppの買収を通じて、10年以上にわたりソーシャルネットワーキングにおける独占を違法に維持してきたと主張し続けています。
これらの事例は、司法が構造的措置よりも行動是正措置を優先する傾向や、連邦と州の間で独占禁止法執行の基準が分断されつつある状況を示唆しています。
カナダの規制動向:データ相互運用性とAIガバナンスの課題
カナダでは、巨大IT企業に関連する規制動向が注目されています。2026年2月4日に再提出された『Connected Care for Canadians Act(ビルS-5)』は、医療情報技術の相互運用性を義務付け、ベンダーによるデータブロッキングを禁止することで、カナダ人の電子医療情報へのアクセスを促進することを目指しています。また、2026年3月6日の記事では、カナダにおけるAI規制の現状が議論されています。包括的なAI特化型法案であるArtificial Intelligence and Data Act (AIDA) が2025年1月に廃案となった後、連邦政府はプライバシー法制、政策、投資を通じてAI技術の設計、開発、展開を規制する方針を示しています。これにより、カナダがデータガバナンスとAI規制において、特定のセクターに焦点を当てつつ、より広範な政策的アプローチを模索していることがうかがえます。
メキシコの独占禁止法改革:執行強化と企業コンプライアンスへの影響
メキシコでは、独占禁止法と競争政策の進化が進んでいます。2026年1月時点での改革の方向性として、国家独占禁止委員会(CNA)の権限強化、反競争的行為に対する罰金と罰則の大幅な増加、カルテル行為の刑事罰化が挙げられています。さらに、合併審査や調査期間の短縮化、集団訴訟や民事責任の促進も目指されています。これらの改革は、メキシコの競争法執行を国際基準に合わせることを目的としており、反競争的行為に対する罰則強化は、企業にコンプライアンスプログラムの導入または強化を促すインセンティブとなる可能性があります。COFECE(連邦競争委員会)による初のカルテル損害賠償請求集団訴訟の提起は、競争法の私的執行の新たな時代を示すものと見られています。これらの動きは、北米地域における規制環境の多様性を示す一例です。
国境を越える規制の影響:EUデジタル市場法(DMA)の波及効果
北米の巨大IT企業に影響を与えるEUの規制動向も注視されています。2026年1月28日、欧州委員会はGoogleがデジタル市場法(DMA)の義務を遵守するのを支援するため、2つの手続きを開始しました。これには、Googleが第三者開発者にAndroid OSの機能(AIサービスGeminiを含む)との相互運用性を提供すること、および第三者検索プロバイダーに匿名化されたランキング、クエリ、クリック、閲覧データへのアクセスを許可することが含まれます。これらのEUの動きは、グローバルに事業を展開する北米の巨大IT企業の法務戦略に間接的かつ重要な影響を与えています。
まとめ:北米における規制環境の構造的差異と今後の展望
北米各国(米国、カナダ、メキシコ)およびEUの規制アプローチには構造的な差異が見られます。米国では、Googleの検索独占禁止法訴訟における行動是正措置の進展やApple、Amazon、Metaに対する訴訟の継続に見られるように、個別の訴訟を通じて競争環境の是正が図られています。また、連邦と州の間で独占禁止法執行の基準に分断が見られる状況もあります。一方、カナダは医療情報技術の相互運用性を促進する法案や、プライバシー法制、政策、投資を通じたAIガバナンスへの取り組みを進めています。メキシコは、国家独占禁止委員会の権限強化、罰金引き上げ、カルテル行為の刑事罰化など、独占禁止法執行の強化と国際基準への整合を図っています。EUのデジタル市場法(DMA)に基づくGoogleへの手続き開始も、国境を越えて北米の巨大IT企業に影響を与える重要な動きです。これらの多様な規制環境は、テック企業法務担当者にとって、地域ごとの法的要件への適応と、グローバルな規制動向を見据えた戦略的なコンプライアンスプログラムの構築が不可欠であることを示唆しています。
[ Advertisement ]Reference / エビデンス
- Google Ad Cases Show How Binding Government Judgments Shape MDLs 2026年3月4日、Googleの広告事業に対する統合独占禁止法訴訟において、ニューヨーク州の裁判官が、Googleが反競争的行為を行ったことを争うことを事実上禁じる重要な判決を下しました。これは、2025年4月にバージニア州の裁判所がGoogleがパブリッシャー向け広告サーバーおよび広告交換市場を独占し、連邦独占禁止法に違反したと認定した判断に基づくものです。
- FTC Updates (March 2-6, 2026) | Retail & Consumer Products Law Observer 2026年3月5日、FTC消費者保護局長のクリストファー・ムファリッジ氏がジョージ・メイソン大学アントニン・スカリア法科大学院で行った講演で、公正で透明なチケット市場の確保、決済システムの健全性の保護、欺瞞的な定期購入への対策という3つの執行優先事項を概説しました。
- Google Under Fire for Monopoly and Anti-trust Lawsuit - CourtTrax 米国政府はGoogleがオンライン検索市場を違法に独占しているとして独占禁止法訴訟を提起し、連邦裁判所はGoogleがシャーマン法第2条に違反していると既に認定しました。2025年には裁判官がより広範なアクセスと特定の契約制限を求める是正措置を課しましたが、Googleはその一部を控訴し、データ共有要件の延期を求めています。
- Looking Ahead on US Antitrust Enforcement and Tech: Will 2026 Deliver More of the Same? Google検索独占禁止法訴訟では、2025年9月にアミット・P・メータ判事が行動是正措置を課し、独占的配信契約を禁止し、限定的な検索データ共有を義務付けました。司法省によるChromeの事業分割要求は、AI企業の競争可能性を理由に却下されました。2026年を通じて技術委員会がこれらの是正措置の実施を監督します。
- Judge instructs DOJ, Google to hash out details of antitrust oversight body 2026年2月13日、連邦判事は司法省とGoogleに対し、Googleのインターネット検索独占に対する是正計画を実施する監視委員会のメンバーの勤務形態と報酬を決定するよう命じました。
- DOJ Fights Google's 'Premature' Request To Stay Antitrust Order 02/03/2026 - MediaPost 2026年2月3日、独占禁止法執行機関は、Googleがユーザー検索データの一部を『適格な』競合他社と共有し、シンジケート検索結果と広告をそれらの競合他社に提供することを義務付ける命令の停止を求めるGoogleの要求に反対しました。
- Judge allows antitrust lawsuit against Apple to proceed - Courthouse News Service 2025年6月30日、ニュージャージー州の連邦判事は、AppleがiPhoneを競争から保護するために違法な障壁を築いたとする米国政府の訴訟を却下するAppleの要求を退け、訴訟の続行を許可しました。公判は2027年に設定される可能性があります。
- Judge Allows Justice Department's iPhone Monopolization Suit to Proceed | Mintz 2025年6月30日、ニュージャージー州連邦地方裁判所は、Appleがスマートフォン市場を独占または独占しようとしたとしてシャーマン独占禁止法第2条に違反したとする米国司法省の訴訟に対するAppleの却下申し立てを棄却しました。
- Amazon Antitrust Lawsuit Set for 2026 Trial - Inc. Magazine 2024年10月8日、連邦取引委員会(FTC)と18州およびプエルトリコは、Amazonが市場での地位を乱用してプラットフォーム内外で価格をつり上げ、販売者に過剰な料金を請求し、競争を阻害しているとして訴訟を提起しました。この訴訟の公判は2026年10月に予定されています。
- FTC's antitrust against Amazon moves forward with mixed ruling - TechHQ 2024年10月18日、連邦判事はFTCがAmazonに対する画期的な独占禁止法訴訟を進めることを許可しました。一部の州の主張は却下されたものの、訴訟の核心は維持され、公判は2026年10月に予定されています。
- Amazon Poised for Late 2026 Trial in FTC Monopoly Power Lawsuit - Bloomberg Law News 2024年2月14日、連邦取引委員会(FTC)による電子商取引大手Amazon.com Inc.に対する注目度の高い独占禁止法訴訟は、2026年10月に公判が開始される予定です。
- FTC antitrust trial against Amazon won't start until mid-2026, at the earliest | Retail Dive 2023年12月19日、連邦取引委員会(FTC)によるAmazonに対する独占禁止法訴訟は、早くても2026年半ばまで開始されない見込みです。
- Meta wins major US antitrust case and won't have to break off WhatsApp or Instagram 2025年11月18日、米国判事は、Metaがソーシャルネットワーキングにおいて独占を保持していないと判断し、同社の事業に対する主要な異議申し立てを退けました。この判決は、FTCがMetaにInstagramとWhatsAppの売却を強制する可能性があった訴訟において、Metaに有利な結果をもたらしました。
- FTC says it will appeal Meta antitrust decision - Los Angeles Times 2026年1月21日、連邦取引委員会(FTC)は、Metaに対する独占禁止法訴訟で2025年11月にMetaに有利に下された判決を控訴すると発表しました。FTCは、MetaがInstagramとWhatsAppの買収を通じて、10年以上にわたりソーシャルネットワーキングにおける独占を違法に維持してきたと主張し続けています。
- FTC v. Meta - Wikipedia 連邦取引委員会(FTC)対Meta Platforms, Inc.の独占禁止法訴訟は、MetaがInstagramとWhatsAppの買収を通じて独占力を蓄積したと主張しています。2025年11月18日、ジェームズ・E・ボアスバーグ判事はMetaに有利な判決を下し、FTCは2026年1月に控訴すると発表しました。
- Connected Care for Canadians Act aims to promote unobstructed access to electronic health information | Insights | Torys LLP 2026年2月4日に再提出されたカナダのビルS-5『Connected Care for Canadians Act』は、医療情報技術の相互運用性を義務付け、ベンダーによるデータブロッキングを禁止することで、カナダ人の電子医療情報へのアクセスを促進することを目指しています。
- Canada still has no meaningful AI regulation - CCPA 2026年3月6日の記事は、カナダにおけるAI規制の現状について議論しており、AI技術の進歩にもかかわらず、意味のあるAI規制が依然として存在しないことを指摘しています。
- Canada's 2026 privacy priorities: data sovereignty, open banking and AI カナダの連邦政府は、以前提案されたAIおよびデータ法(AIDA)が2025年1月に廃案となった後、包括的なAI特化型法案ではなく、プライバシー法制、政策、投資を通じてAI技術の設計、開発、展開を規制する方針を示しています。
- Outlook 2026: Mexico Antitrust and Competition | Insights - Greenberg Traurig, LLP 2026年1月時点のメキシコの独占禁止法および競争政策の展望では、国家独占禁止委員会(CNA)の強化、反競争的行為に対する罰金と罰則の増加、カルテル行為の刑事罰化、合併および調査の期間短縮、集団訴訟および民事責任の促進が挙げられています。
- GT Advisory_Outlook 2026: Mexico Antitrust and Competition - Greenberg Traurig, LLP メキシコでは、反競争的行為に対する罰金の大幅な引き上げと手続き上の不遵守に対する罰則の強化を目的とした最近の改革が、企業にコンプライアンスプログラムの導入または強化を促すインセンティブとなる可能性があります。
- Outlook 2026: Mexico Antitrust And Competition - Mondaq メキシコでは、国家独占禁止委員会(CNA)の設立による独占禁止当局の強化、罰金と罰則の増加、反競争的行為の刑事罰化、合併と調査の効率化のための手続き改革、集団訴訟と民事責任の促進が、2026年の独占禁止法および競争政策の主要な展望として挙げられています。
- A new era for antitrust private litigation in Mexico / Events - Cuatrecasas メキシコでは、COFECE(連邦競争委員会)が国内初のカルテルによる損害賠償請求集団訴訟を提起し、関連する最高裁判所の判決や連邦経済競争法の改正により、損害賠償請求の行使が容易になることが期待されており、競争法の私的執行の新たな時代が始まると見られています。
- Enforcement of the Digital Markets Act | O-000016/2026 | European Parliament 2026年3月27日の欧州議会の文書によると、デジタル市場法(DMA)はEUにおける公正で競争的なデジタル市場を確保し、害が発生する前に不公正なゲートキーピング行為を防止するための調和された事前規制枠組みを確立しています。
- The EU Digital Markets Act (VOSTEN) - European Union 2026年3月9日、ゲートキーパー企業がデジタル市場法(DMA)への準拠に関する最新レポートを公開しました。
- European Commission Opens Proceedings for Google to Comply with Digital Markets Act 2026年1月28日、欧州委員会はGoogleがデジタル市場法(DMA)の義務を遵守するのを支援するため、2つの手続きを開始しました。これには、Googleが第三者開発者にAndroid OSの機能(AIサービスGeminiを含む)との相互運用性を提供すること、および第三者検索プロバイダーに匿名化されたランキング、クエリ、クリック、閲覧データへのアクセスを許可することが含まれます。
- Brussels faces pressure to close Google search case as DMA enforcement enters critical phase - https://eutoday.net 2026年3月17日、欧州の出版社、テクノロジー企業、スタートアップグループの連合が欧州委員会に対し、Googleの検索慣行に関するデジタル市場法(DMA)に基づく調査を迅速に終了するよう要請しました。
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