重要鉱物資源を巡るグローバル競争の最新動向:国家戦略とサプライチェーンの変革

導入:重要鉱物資源を巡る新たな国際秩序の胎動

2026年3月2日、カナダ政府はカナダ探鉱者・開発者協会(PDAC2026)大会において、重要鉱物生産同盟に基づき、産業界および国際的なパートナーとの間で30件の新たなパートナーシップおよび投資案件を発表しました。これにより、重要鉱物プロジェクトにおいて12の国際パートナーとともに121億カナダドル規模の資金動員が見込まれています。また、2026年3月5日には、中国政府が「第15次五カ年計画」案の中で希土類およびレアメタルを国家戦略資源と位置づけ、産業競争力とサプライチェーン安全の強化を進める方針を示しました。これらの動きは、グローバルサウスにおける重要鉱物資源の権益争奪と国家間の連携強化という国際秩序の新たな胎動を象徴しています。

グローバルサウスにおける権益確保競争の激化

グローバルサウス諸国が有する重要鉱物資源の戦略的価値が高まる中、米国はこれらの資源へのアクセスを確保するため、新たな国際枠組みや二国間協定を主導しています。2026年2月4日には、米国がパートナーおよび同盟国とともに「2026年重要鉱物閣僚会合」を初開催し、重要鉱物およびレアアースの世界市場を再構築する方針を打ち出しました。この会合では、鉱物資源安全保障パートナーシップ(MSP)の後継として、「資源の戦略地政学的関与に関するフォーラム(FORGE)」の創設が発表され、政策・事業両面での連携強化を目指しています。同日、米国はアルゼンチン、クック諸島、エクアドル、ギニア、モロッコ、パラグアイ、ペルー、フィリピン、アラブ首長国連邦(UAE)、ウズベキスタンを含む11カ国と二国間重要鉱物枠組みまたは覚書(MOU)を締結しました。これらのMOUは、価格課題への対応、公正市場形成、優先供給網のギャップ是正、資金調達拡大の基盤整備を目的としています。

サプライチェーン強靭化に向けた国家間連携と投資

中国への依存度低減を目指し、サプライチェーンの多様化と強靭化に向けた国家間連携と投資が活発化しています。2026年3月には、オーストラリアと欧州連合(EU)が自由貿易協定(FTA)で合意し、重要鉱物を含む資源分野におけるサプライチェーンの強靭化と投資環境の改善を目指す方針を示しました。また、カナダ政府が2026年3月2日に発表した新たなパートナーシップには、Regen Resources Recovery社とLinamar社の合成グラファイトプロジェクトにおける戦略的アライアンス、米Regeneration社とApple社およびMejuri社のオフテイク契約、そしてFrontier Lithium社とパナソニックエナジー株式会社による将来的なリチウム供給に関するMOU締結が含まれます。

中国の資源戦略と市場への影響

中国は希土類などの重要鉱物資源を国家戦略資源と位置づけ、その管理を強化しています。2026年3月5日、中国政府は「第15次五カ年計画」案の中で、希土類およびレアメタルを国家戦略資源として位置づけ、資源開発から新材料、先端技術に至るまでの産業競争力とサプライチェーン安全の強化を進める方針を明らかにしました。中国のレアアース輸出規制は、2026年3月現在も影響を及ぼしており、特にネオジム磁石の耐熱性向上に不可欠なディスプロシウムや、防衛・航空産業で戦略的価値の高いイットリウムといった重希土類の調達に支障が生じています。これにより、世界の市場において価格上昇や日本企業を含む調達元のコスト負担増加につながっています。

産業界の対応と今後の展望

重要鉱物のサプライチェーンはかつてないほど不安定であり、産業界は課題に直面しています。企業は自社製品に含まれる鉱物、代替部材の有無、そして中国由来鉱物が突然入手できなくなった場合の対応策を詳細に把握する必要があります。2026年は、中国依存からの脱却に向けて具体的な行動が求められる年であり、高度なサプライチェーン・リスク管理(SCRM)の導入と運用が不可欠となっています。

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