グローバルサウスにおける非米ドル決済と通貨多極化の現状:CIPS、BRICS、レアアース戦略が示す構造変化
中国CIPSの機能強化と人民元決済の拡大:非米ドル化の推進力
2026年3月3日の報道によると、多国籍企業からの多様なクロスボーダー決済ルートへの需要増加が、中国の人民元建て国際決済システム(CIPS)のさらなる拡大を推進しています。CIPSは人民元建て国際決済の主要プラットフォームとして、近年、規制の改善と人民元の国際利用の増加に支えられ、参加者ベースとサービス範囲を拡大してきました。2026年を前に更新されたCIPSの運用規則では、人民元と外貨の同時決済サービスを支援する混合決済構造が正式に設定されました。これにより、単一のクロスボーダー人民元決済はリアルタイムグロス決済で処理され、バッチ取引は時間指定ネット決済でクリアされることになり、決済リスクの軽減と流動性効率の向上が期待されています。2025年末までに、CIPSは124カ国・地域にわたる193の直接参加者と1,573の間接参加者を擁し、5,000以上の銀行機関にクロスボーダーサービスを提供しています。2025年のCIPSの決済取引額は180.2兆元(約26.4兆米ドル)に達し、その急速な拡大はグローバルな金融アーキテクチャの均衡化に影響を与えています。
サプライチェーンの多極化とレアアース戦略:経済圏ブロック化の兆候
2026年3月8日、日本、フランス、カナダがレアアース供給に関して米国主導の貿易圏に代わる代替案を検討していると報じられました。この動きは、直接的な非米ドル決済の動きではないものの、特定の戦略的資源において米国中心のサプライチェーンからの脱却を目指すものであり、経済的な多極化を進める兆候として捉えられます。これは、グローバルサウス諸国が非米ドル決済網の構築を通じて経済的自立とリスク分散を追求する広範なトレンドと関連しており、国際経済秩序の構造的な変化を示唆しています。
BRICS諸国における非米ドル化の進展と課題
BRICS諸国は、米ドルへの依存を減らし、世界の金融システムを再構築するため、2026年から2027年までに共通のデジタル通貨を創設する計画を進めており、また2026年にはBRICS Payプラットフォームをローンチし、加盟国のデジタル通貨を相互接続し、SWIFTに代わる決済手段を提供することを目指しています。しかし、共通通貨構想には加盟国内での意見の相違が見られます。ブラジルのルラ大統領は、BRICS内では共通通貨の創設に関する提案はなく、議論もされていないと発言しています。また、インドの外務大臣は2025年3月に、米ドルが準備通貨として世界の経済安定をもたらしており、より多くの安定が必要であると述べました。インドの商務大臣も2月に、中国との共通BRICS通貨は「考えられない」と発言しています。このような背景の中、2026年にインドで開催されるBRICSサミットでは、加盟国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)の相互運用性に関する計画が議題となる予定です。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)の国際決済への影響
世界中で140カ国以上がCBDCを検討しており、特にグローバルサウスでは具体的な進展が見られます。2025年後半には、アラブ首長国連邦(UAE)がmBridge(複数中央銀行CBDCプラットフォーム)を利用した中国との取引を正式に開始しました。ブラジル中央銀行は2025年にDREX(デジタルレアル)をローンチする準備を進めており、中国との間で鉄鉱石輸出にDREXを使用する交渉を行っています。インド準備銀行(RBI)は2026年にe-ルピーのパイロットプログラムを全国的に拡大する予定で、e-ウォレットとの統合、KYCプロセスの強化、流通ネットワークの改善に焦点を当てています。これらの動きは、国境を越えた決済の効率化と非米ドル化に貢献しうると考えられます。
米ドルの現状と多極化への抵抗要因
米ドルは依然として世界の貿易インボイスの40-54%、SWIFT決済の約半分、全FX取引の89%で使用されており、各国は外貨準備の56%以上を米ドルで保有するなど、支配的な地位を占めています。既存のシステムが米ドルを中心に構築されているため、他の通貨への切り替えは費用がかかり、複雑であるという指摘があります。2025年にはBRICSの拡大や中央銀行による金購入により非米ドル化の動きが加速したものの、HSBCのアナリストによると、2026年初頭の市場ストレス下では資本が米ドルに回帰しました。米ドルの準備通貨としての地位は、その流動性、深さ、法的インフラ、そして大規模な代替手段の欠如に起因しており、当面その地位が揺らぐことはないとの見方も示されています。
[ Advertisement ]Reference / エビデンス
- MNCs drive expansion of China's CIPS - Chinadaily.com.cn 2026年3月3日、多国籍企業からの多様なクロスボーダー決済ルートへの需要増加が、中国のCIPS(Cross-Border Interbank Payment System)のさらなる拡大を推進していると報じられた。CIPSは人民元建ての国際決済の主要プラットフォームであり、近年、規制の改善と人民元の国際利用の増加に支えられ、参加者ベースとサービス範囲を拡大している。2025年末までに、CIPSは124カ国・地域にわたる193の直接参加者と1,573の間接参加者を擁し、5,000以上の銀行機関にクロスボーダーサービスを提供している。2025年のCIPSの決済取引額は180.2兆元(約26.4兆米ドル)に達した。
- China Tightens Control of Cross-Border Payments With New CIPS Rules - Coinpaper 中国はクロスボーダー人民元決済システム(CIPS)の運用規則を更新し、2026年を前に混合決済構造を正式に設定した。改訂された枠組みでは、単一のクロスボーダー人民元決済はリアルタイムグロス決済で処理され、バッチ取引は時間指定ネット決済でクリアされる。これにより、決済リスクが軽減され、流動性効率が向上する。これらの変更は、人民元の国際利用が拡大する中で、既存の慣行を正式化し、システムをグローバルな決済基準に合わせるものである。
- Inside Tehran's toll booth - Atlantic Council 2026年4月1日、CIPSは3月の1日平均取引量が1,340億ドル(9,204.5億元)に達したと報告した。3月中旬から下旬にかけて、1日あたりの取引額は1,300億ドル(約9,400億元)を超えて増加した。この取引量の増加は、2月28日に始まったイラン紛争の文脈で注目され、イランの石油決済がCIPSを通じて行われている可能性を示唆している。
- Trade Update - March 10, 2026 - Advocacy - California Chamber of Commerce 2026年3月8日、日本、フランス、カナダがレアアース供給に関して米国主導の貿易圏に代わる代替案を検討していると報じられた。
- New BRICS Currency Could Reshape Global Economy by 2026-27 - GoldSilver BRICS諸国は、米ドルへの依存を減らし、世界の金融システムを再構築するため、2026年から2027年までに共通のデジタル通貨を創設する計画を進めている。最近のサミットでは、貿易における現地通貨の使用と、金融の独立を支援する共通決済システム「BRICS Pay」の開発における進展が強調された。
- BRICS Currency Denied by Lula, But De-Dollarization Infrastructure Grows - Watcher Guru BRICS内では共通通貨の創設に関する提案はなく、議論もされていないとブラジルのルラ大統領が発言した。インドの外務大臣は2025年3月に、米ドルが準備通貨として世界の経済安定をもたらしており、より多くの安定が必要であると述べた。インドの商務大臣も2月に、中国との共通BRICS通貨は「考えられない」と発言している。
- How Would a New BRICS Currency Affect the US Dollar? | INN - Investing News Network 2026年にインドで開催されるBRICSサミットでは、加盟国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を連携させる「相互運用性」計画が議題となる予定である。
- CBDCs from BRICS+: a new chapter in global financial modernization - BRICS Brasil BRICS Payプラットフォームは2026年にローンチ予定で、加盟国のデジタル通貨を相互接続し、SWIFTに代わる選択肢を提供し、米ドルへの依存を減らすことを目指している。ブラジル中央銀行は2025年にDREX(デジタルレアル)をローンチする準備を進めており、中国との間で鉄鉱石輸出にDREXを使用する交渉を行っている。
- From Crypto to CBDCs: Digital currency and the future of global finance 2025年後半にUAEはmBridge(複数中央銀行CBDCプラットフォーム)を利用した中国との取引を正式に開始した。インド準備銀行(RBI)は2026年にe-ルピーのパイロットプログラムを全国的に拡大する予定で、e-ウォレットとの統合、KYCプロセスの強化、流通ネットワークの改善に焦点を当てている。
- The 'De-dollarization' Narrative Takes an Unexpected Twist | Presented by CME Group 2025年にはBRICSの拡大や中央銀行による金購入により非米ドル化の動きが加速したが、2026年初頭の地政学的緊張の高まりと市場のボラティリティ急増により、資本は米ドルに回帰した。米ドルの準備通貨としての地位は、流動性、深さ、法的インフラ、そして大規模な代替手段の欠如に起因している。
- De-Dollarization 2026: Why the World Still Trades in USD - And Who Wants Out - The Finance Lens 米ドルは依然として世界の貿易インボイスの40-54%、SWIFT決済の約半分、全FX取引の89%で使用されており、各国は外貨準備の56%以上を米ドルで保有している。既存のシステムが米ドルを中心に構築されているため、他の通貨への切り替えは費用がかかり、複雑である。
- 'Gold is behaving like a risk asset in 2026' but de-dollarization trend will drive further gains – HSBC | Kitco News HSBCの商品アナリストによると、2026年の金はリスク資産のように振る舞い、地政学的緊張の高まりとドル高の中で急落しているが、非米ドル化のトレンドは長期的な投資として依然として魅力的である。
Vantage Politics