中東情勢緊迫化と国連安保理の課題:地域同盟の変遷と国際安全保障の再考
国連安保理、ホルムズ海峡の航行安全巡る決議案を審議:修正経緯と大国間の対立
2026年3月、米国が議長国を務める国連安全保障理事会では、ホルムズ海峡の航行の安全確保を目的とした決議案が審議されています。この決議案は、バーレーンが主導し、135カ国が共同提案したものです。当初、国連憲章第7章に基づく武力行使容認の文言が含まれていましたが、ロシアと中国の反対を受け、防御的な海洋行動の調整を各国に促す内容へと大幅に修正されました。この修正は、ロシアと中国が拒否権を行使する可能性を考慮した妥協を反映しています。両国は、米国とイスラエルが戦争を開始し危機をエスカレートさせたと非難し、軍事作戦の即時停止を最優先すべきだと主張しており、安保理内における常任理事国間の地政学的対立が顕在化しています。
中東紛争が促す地域同盟の変遷と各国の戦略的再考
米国とイスラエルによるイランへの攻撃は、中東地域の力学に顕著な影響を与えています。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は2026年3月7日、イスラエルが直接介入と地域関係の構築を通じて中東を積極的に形成する「地域大国」になったと発言し、脅威への対応だけでなく状況を形成する戦略的転換を示しました。また、2026年3月8日にはイランから発射されたミサイルがイスラエルのテルアビブ上空で目撃されています。この紛争の激化は、湾岸協力理事会(GCC)諸国に対し、地域戦略と米国との関係を見直すことを迫る状況にあります。
同時に、広範な国際安全保障環境においても変化が見られます。日本は初の国産長距離ミサイルの配備準備を進めており、これは歴史的に国土防衛と同盟ベースの抑止に重点を置いてきた日本が、より攻撃的な抑止態勢へと移行していることを示唆しています。一方、英国は2026年1月に発表された声明で、1980年以来初めて中東に常駐する海軍プレゼンスを持たなくなることを明らかにしました。バーレーンを拠点とする英国海軍の掃海艇HMS Middletonは2026年3月にも英国に帰還する予定であり、これにより地域における安全保障の空白が生じ、新たな同盟関係の模索を促す可能性が指摘されています。
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- Russia and China block UN resolution calling for reopening of Strait of Hormuz 2026年4月7日、ロシアと中国は、ホルムズ海峡の状況に対処する国連安全保障理事会決議案を拒否権を行使して阻止しました。この決議案はバーレーンが提出し、11カ国が賛成、2カ国が棄権しました。ロシアと中国は安保理で拒否権を有しています。この採決は、米国とイスラエルによるイランへの攻撃に端を発した5週間以上の戦争の後に行われ、原油価格を高騰させ、世界で最も重要なエネルギー回廊の一つであるホルムズ海峡の交通を混乱させました。イランは海峡の通過を制限しており、世界のサプライチェーンとエネルギー市場に懸念を引き起こしています。
- UN Security Council to vote on resolution addressing Iran's threats to shipping in Strait of Hormuz - The National News 国連安全保障理事会は、ホルムズ海峡におけるイランの船舶への脅威に対処する決議案について採決を行う予定でしたが、武力行使の承認に対する反対により、大幅に内容が緩和されました。最新の決議案の主要な条項は、ホルムズ海峡を通過する商業航行の安全と保障を確保するために、船舶の護衛を含む防御的な海軍行動を調整することを加盟国に「強く奨励」するものです。この文言は武力行使の承認には至らず、ロシアと中国が拒否権を行使する可能性を考慮した妥協を反映しています。
- 国連安全保障理事会、湾岸諸国とヨルダンに対するイラン攻撃の停止を要求する決議を採択 2026年3月12日、国連安全保障理事会は、湾岸諸国とヨルダンに対するイランのミサイルおよび無人機攻撃を非難する決議を採択しました。この決議は、攻撃が国際法に違反し、「国際の平和と安全に対する深刻な脅威」をもたらすと指摘しています。理事国13カ国が賛成票を投じましたが、ロシアと中国は棄権しました。決議はイランに対し、代理勢力によるものも含め、近隣諸国に対する攻撃と挑発行為を「即時かつ無条件に」停止するよう要求し、湾岸諸国とヨルダンの主権と領土保全に対する強い支持を表明し、国連憲章第51条に基づく自衛権を再確認しました。
- 国連安保理、ホルムズ海峡を航行する商業船舶の防御措置認めず…ロシア・中国が拒否権を行使 2026年4月7日、国連安全保障理事会は、イランに事実上封鎖されているホルムズ海峡を航行する商業船舶の安全確保に向けた防御措置を認める決議案を否決しました。ロシアと中国が拒否権を行使し、米国、英国、フランスなど11カ国が賛成、パキスタンとコロンビアが棄権しました。決議案は、イランによる航行妨害に対し、各国が防御的措置を取るよう強く促す内容で、商船護衛に伴う限定的な武力行使を想定していました。当初案では国連憲章第7章に基づくより強力な武力行使容認を打ち出していましたが、ロシアと中国の反発を受け、表現が大幅に弱められました。
- Closing Air Spaces and Cracking Alliances: Trump's Growing Problem with Allies - Middle East Monitor 2026年3月8日、イランから発射されたミサイルがイスラエルのテルアビブ上空で目撃されました。また、ネタニヤフ首相はアラブ諸国との地域同盟が「実用的な段階」に達していると主張しました。イランは米国による地上侵攻の可能性に備え、100万人の戦闘員を動員すると発表しています。
- Geopolitical Risk Brief: March 2026 | S&P Global 2026年3月、米国とイスラエルの中東戦争の目的と地域展開は、現在の戦闘ペースが少なくともさらに2~4週間続くと示唆しています。イランの新たな最高指導者モジタバ・ハメネイは3月12日、イランは地域の米軍基地への攻撃を維持し、ホルムズ海峡を封鎖すると述べました。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスの海上追跡データによると、3月1日から3月14日の間に、すべての船舶タイプの自動識別システム(AIS)による通過は、その前の10日間(2月14日~28日)と比較して96%減少しました。
- Weekly Geopolitical News Bulletin: March 7-14, 2026 - Mackinder Forum 2026年3月7日から14日の週の地政学的ニュースでは、米国とイスラエルによるイランへの攻撃が、危機をシャドーウォーから政権転覆を目的としたキャンペーンへと変貌させたと報じられています。また、日本が初の国産長距離ミサイルを配備する準備を進めており、これは歴史的に国土防衛と同盟ベースの抑止に重点を置いてきた国にとって大きな転換点となります。これは、日本がもはやミサイル防衛と米国の攻撃力だけに頼って中国や北朝鮮からの脅威に対処するのではなく、より攻撃的な抑止態勢へと移行していることを示唆しています。
- Israel isn't just responding to threats – it's reshaping the Mideast - Asia Times 2026年3月7日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「我々はイスラエルを地域大国に変えた。これには大胆さ、主導権、そしてリスクを冒す意欲が必要だ」と述べました。この発言は、イスラエルが脅威への対応だけでなく、直接的な介入と地域関係の構築を通じて中東の状況を積極的に形成しているという戦略的転換を反映しています。イスラエルは、シリアやイランに対する政策に見られるように、近隣諸国の安全保障と結束に影響を与える直接的な介入を行っています。
- Presidency of the United Nations Security Council March 2026 2026年3月、米国が国連安全保障理事会の議長国を務めました。
- Weekly Geopolitical News Bulletin: February 28 - March 6, 2026 - Mackinder Forum 2026年2月28日から3月6日の週の地政学的ニュースでは、米国とイスラエルによるイランへの攻撃が、地域における抑止の基準を「抑止の失敗」から公然たる政権戦争の論理へとリセットしたと指摘されています。これは、将来のエスカレーションが代理戦争や象徴的な攻撃から段階的に構築されるのではなく、キャンペーンの強度で始まる可能性があることを意味します。
- UN Security Council Adopts Resolution Condemning Iran's Retaliation Attack (March 12, 2026) - YouTube 2026年3月12日、国連安全保障理事会は中東情勢を巡る会合を開き、イランによる報復攻撃を非難する決議案を採択しました。この決議案は日本など135カ国が共同提案し、バーレーンが提出したものです。決議では、イランから中東各国への報復攻撃をやめるよう要求したほか、ホルムズ海峡の封鎖や妨害による脅しを非難しています。米国など13カ国が賛成した一方で、決議案が米国とイスラエルによる先制攻撃について言及がなかったため「不公平だ」として、ロシアと中国は棄権しました。イランは、採択が「安保理の信頼性に打撃を与えた。特定の加盟国の政治的意図を追求するための権限の乱用だ」と強く反発しました。
- Morning Briefing: March 7, 2026 - Anadolu Ajansı 2026年3月7日の朝のブリーフィングでは、ドナルド・トランプ米大統領がイランに対し「無条件降伏」を要求し、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が中東情勢の激化が「誰にも制御できない」事態に発展する可能性を警告したことが報じられました。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、イランのマスード・ペゼシュキアン大統領との電話会談で、即時停戦と外交的解決の必要性を再確認しました。
- Overview, March 2026 Monthly Forecast - Security Council Report 2026年3月、米国が国連安全保障理事会の議長国を務めました。米国は「紛争における子供、技術、教育」と「エネルギー、重要鉱物、安全保障」に関する2つの主要イベントを主催する予定でした。また、イランに関する1737制裁委員会と、非国家主体による大量破壊兵器へのアクセスを防ぐための1540委員会の活動に関するブリーフィングも開催する計画でした。
- Wartime Purge: Army Chief Ousted — What Comes Next in the Iran War? 2026年3月25日、イランは敵対勢力が「戦略的敗北」に直面していると述べ、圧力下でのいかなる合意も拒否し、米国からの影響を受けない地域同盟を呼びかけました。イランは、敵対勢力の「戦略的権力」が崩壊したと宣言しています。
- Russia and China veto watered-down UN resolution aimed at reopening the Strait of Hormuz - San Francisco Chronicle 2026年4月7日、ロシアと中国は、ホルムズ海峡の再開を目的とした国連安全保障理事会決議案に拒否権を行使しました。この決議案は、両国が棄権することを期待して何度も内容が緩和されていました。採決は11対2(ロシアと中国が反対)、パキスタンとコロンビアが棄権という結果でした。この採決は、ドナルド・トランプ米大統領がイランに対し、戦略的な水路を開放し、午後8時(東部時間)の期限までに合意しなければ「文明全体が今夜滅びるだろう」という前例のない脅迫を発した数時間後に行われました。
- The UK's withdrawal from the Middle East: The time for a bold recourse of action 2026年1月に静かに発表された声明によると、英国は1980年以来初めて中東に常駐する海軍プレゼンスを持たなくなります。バーレーンを拠点とする英国海軍の掃海艇HMS Middletonは3月にも英国に帰還し、代替艦は発表されていません。これは、46年間続いた中東における英国のハードパワー維持政策を覆すものです。この2隻の艦船が中東から撤退したことは、英国のグランド戦略、外交政策、防衛外交、そして最も喫緊には、地域における国益を投射し国家安全保障を確保する能力に深刻な懸念を提起しています。
- UN Security Council resolves to immediately halt Iran's retaliatory attacks - YouTube 2026年3月11日、国連安全保障理事会は、米国とイスラエルからの攻撃を受けたイランによる中東各地への報復攻撃に対して即時停止を求める決議案を採択しました。日本などを含む135カ国が共同提案した決議案は、イランによる攻撃が国際法違反だとして「最も強い言葉」で非難し、攻撃を即時停止するよう求めました。安保理では15カ国のうち13カ国が賛成し、残るロシアと中国は棄権しました。
- 安保理、海峡通航の協調決議案を否決 (2026年4月8日掲載) - ライブドアニュース 2026年4月7日、国連安全保障理事会は、イランが事実上封鎖する要衝ホルムズ海峡での通航確保のため、加盟国の協調を「強く奨励」する決議案を否決しました。中国とロシアが拒否権を行使しました。
- 2026年3月6日の注目すべきニュース - The HEADLINE 2026年3月6日、イスラエル軍がイランへの攻撃作戦を第2段階に進め、地下にある弾道ミサイル関連施設を戦闘機で狙っていると報じられました。米軍と共同の空爆が開始から1週間近く続き、イスラエル軍はこれまでにイランの地上発射台を多数破壊したと説明しています。原油価格が急上昇し世界の株式市場が下落しており、企業や投資家にとって重要なニュースです。また、イラン周辺の緊張が高まり、日本政府が米国の支援要請を見据え自衛隊派遣の是非を検討していることも報じられました。
- ホルムズ海峡での防衛措置認める決議案、安保理で採決へ…ロシアが拒否権行使の可能性 2026年4月3日、国連安全保障理事会で、イランによる航行妨害行為に対して武力行使を事実上認める内容を含むホルムズ海峡での防衛措置を認める決議案が採決される見込みであることが報じられました。ロシアが拒否権を行使する可能性があり、採択されるかは不透明でした。決議案は、ホルムズ海峡や周辺海域での航行妨害行為に対し、各国が軍事行動を含む「防御目的のための必要なあらゆる手段」を講じることを認めることや、イランに船舶への攻撃や妨害の即時停止を求める内容が盛り込まれていました。当初案では国連憲章第7章に基づく措置として、より強力な武力行使容認を打ち出していましたが、中露の強い反発を受け、7章に基づく措置を削除し、防御目的に限定する内容に修正されました。
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