グローバル・ミニマム課税の最新動向:日本企業の実務対応とOECDサイド・バイ・サイド合意の影響

日本におけるグローバル・ミニマム課税の実務対応:2026年3月期決算の焦点

2026年3月上旬、日本の主要税務アドバイザリーファーム各社は、2026年3月期決算を迎える多国籍企業を対象に、グローバル・ミニマム課税(GloBEルール)の適用に関する実務対応ガイドや留意事項を相次いで公表しました。PwC税理士法人は3月6日に実務対応ガイドを、EY税理士法人は3月4日に令和8年3月期決算に関する留意事項を、KPMG税理士法人およびデロイト トーマツ税理士法人は3月2日にそれぞれ2026年3月期決算における税務上の留意事項を発表しています。これらの情報提供は、日本で2024年4月から導入され、2024年度および2025年度税制改正で追加整備されたGloBEルールの複雑な内容と、企業が申告実務で直面する検討事項や情報収集の必要性を整理しています。一連の動きは、国際法人税ルールが国内で具体的に浸透しつつあり、多国籍企業におけるコンプライアンス体制構築の重要性が高まっていることを示唆しています。

OECD「サイド・バイ・サイド・パッケージ」の合意と米国への影響

2026年1月、OECD/G20のBEPS包摂的枠組みを構成する147カ国・地域が、グローバル・ミニマム課税(Pillar Two)の協調的な運用を促進するための「サイド・バイ・サイド・パッケージ」に合意しました。このパッケージの主要な特徴の一つは、米国に本社を置く多国籍企業に対する「サイド・バイ・サイド・セーフハーバー」の導入です。これにより、特定の要件を満たす米国企業は、所得合算ルール(IIR)および軽課税所得ルール(UTPR)の適用対象外となります。米国財務省のスコット・ベッセント長官は1月5日、この合意を歓迎する声明を発表し、米国の投資と雇用創出を促進し、イノベーションにおけるリーダーシップと主権を保護すると強調しました。この合意は、かつてのトランプ政権下におけるPillar Twoへの懸念を背景としつつ、制度の複雑性を軽減し、多国籍企業のコンプライアンス負担を軽減することを目的としています。

Pillar One「Amount B」の進展と国際課税ルールの多層化

Pillar Oneの進展として、OECDは2026年2月17日、Pillar Oneの「Amount B」に関するFAQ(よくある質問)と、2026年版の価格設定自動化ツールを公表しました。Amount Bは、域内マーケティング・流通活動に対する独立企業間原則の適用を簡素化することを目的としており、特に低キャパシティ国におけるニーズに対応するものです。このAmount Bに関するFAQは、関係者からの技術的な質問に対応し、その一貫した適用を確保するために提供されています。Pillar Twoの進展と合わせて、国際課税ルールが多層的に進化している現状が示されています。

多国籍企業が直面する課題と今後の展望

グローバル・ミニマム課税の導入や「サイド・バイ・サイド・パッケージ」のような新たな国際合意は、多国籍企業に継続的なコンプライアンス上の課題をもたらしています。具体的には、複雑なルールの正確な解釈、必要なデータの収集と管理、申告プロセスの調整、そして各国税制との整合性確保などが挙げられます。OECDは引き続きガイダンスや関連ツールを提供し、各国での制度導入状況も進展していますが、国際課税環境には依然として不確実性が存在します。そのため、企業は国際課税ルールの動向を継続的に監視し、状況への適応が求められる状況が続いています。

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Reference / エビデンス

  • グローバル・ミニマム課税に係る実務対応ガイド | PwC Japanグループ PwC税理士法人は2026年3月6日、2024年4月から日本で導入されたグローバル・ミニマム課税(国際最低課税額に対する法人税)について、申告実務に携わる企業担当者向けに制度内容と対応ポイントを整理した実務対応ガイドを発行した。このガイドは、2023年度および2024年度、2025年度税制改正で整備されたOECDモデルルールに沿った法制度の複雑な点を解説し、2024年度から対応が求められる日本企業に対し、申告スケジュール、ルール適用における検討事項、収集すべき情報などを提供している。
  • 令和8年3月期法人税申告の留意事項 - EY EY税理士法人は2026年3月4日、令和8年3月期決算法人が法人税の確定申告を行う際に留意すべき事項を解説する情報センサーを公表した。これには、グローバル・ミニマム課税に関する項目も含まれており、税制改正に伴う取り扱いの変更点や、申告における注意点が説明されている。
  • 2026年3月期決算における税務上の留意事項 - KPMG International KPMG税理士法人は2026年3月2日、2026年3月期決算における税務上の留意事項に関するニューズレターを公表した。この中では、国際課税の分野において「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税」についてOECDから公表されたガイダンス等を踏まえた見直しが行われたこと、および事務負担軽減等の観点から外国子会社合算税制の見直しも行われたことなどが言及されている。
  • 2026(R8)年3月決算における税務上の留意事項 | デロイト トーマツ グループ - Deloitte デロイト トーマツ税理士法人は2026年3月2日、2026年3月期決算における税務上の留意事項を公表し、国際課税の分野ではOECD/G20「BEPS包摂的枠組み」で取りまとめられた経済のデジタル化に対応する税制改正に触れている。
  • Global Minimum Tax - OECD OECDは2026年1月、BEPS包摂的枠組みの147カ国・地域が、グローバル・ミニマム課税(GloBEルール)の協調的な運用に向けた「サイド・バイ・サイド・パッケージ」に合意したと発表した。このパッケージは、多国籍企業(MNEs)および税務当局のコンプライアンス負担を軽減するための簡素化された実効税率(ETR)セーフハーバー、移行期間CbCRセーフハーバーの1年延長、実体ベースの税制優遇措置セーフハーバー、および適格国向けのサイド・バイ・サイド(SbS)セーフハーバーとUPEセーフハーバーを含む。
  • ベッセント米財務長官、在米企業のグローバル・ミニマム課税適用外を歓迎する声明発表(米国) - ジェトロ 米国財務省のスコット・ベッセント長官は2026年1月5日、OECDが発表したグローバル・ミニマム課税の運用に関する「サイド・バイ・サイド」協定を歓迎する声明を発表した。この合意により、米国に本社を置く企業は、米国のグローバル最低税のみの対象となり、OECDの第2の柱(Pillar Two)は適用外となる。ベッセント長官は、この合意が米国の投資と雇用創出を促進し、イノベーションにおけるリーダーシップと主権を保護すると強調した。
  • Despite US exemptions, the show goes on for a global minimum corporate tax 2026年1月5日、トランプ政権からの圧力の下、146カ国が2021年の合意を修正し、米国多国籍企業がOECDの国別軽課税所得ルール(UTPR)から免除されることになった。これにより、グローバル・ミニマム課税の枠組みは継続されるが、米国企業は米国の最低法人税(Net CFC Tested Income: NCTI)の対象となる。
  • OECD releases Pillar One Amount B Pricing FAQs and 2026 version of the Pricing Automation Tool - Global Tax News Update OECDは2026年2月17日、Pillar OneのAmount Bに関するFAQと2026年版の価格設定自動化ツールを公表した。Amount BのFAQは、関係者から提起された技術的な質問に対応し、Amount Bアプローチの一貫した適用を確保することを目的としている。2026年版の価格設定自動化ツールには、Amount Bの2026年適用に必要な更新が含まれている。