2026年3月時点:グローバルサウスにおける重要鉱物権益争奪と米中戦略の交錯
グローバルサウスを巡る重要鉱物資源の権益争奪:米中戦略の交錯
2026年2月4日(3月4日報)、米国はパートナーおよび同盟国とともに「2026年重要鉱物閣僚会合」を開催しました。マルコ・ルビオ国務長官らが54カ国および欧州委員会代表を招集し、重要鉱物およびレアアースの世界市場の再構築を目指す方針が打ち出されました。米国は同日、アルゼンチン、クック諸島、エクアドルなど11カ国と二国間重要鉱物枠組みまたは覚書(MOU)を締結し、価格課題への対応、公正市場形成、優先供給網のギャップ是正、資金調達拡大の基盤整備を目指しています。また、鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)の後継として「資源の戦略地政学的関与に関するフォーラム(FORGE)」の創設を発表し、政策・事業両面での連携強化を図る方針です。バンス米副大統領は、重要鉱物の取引を純粋な「市場の価格競争」から切り離し、「政治的・安全保障的なルール」の下に置くことを目指す「重要鉱物に関する特恵貿易圏」の創設を宣言し、現在の国際市場が機能不全に陥っているとの認識を示しています。
これに対し、中国は2026年3月5日報の新たな5カ年計画において、人工知能(AI)や科学技術の革新を重視することで技術的優位性の確立を目指し、米国の貿易措置への対抗および国内経済の課題緩和に取り組むことを表明しました。この戦略は、デジタルの中核産業の強化、家計消費の拡大、そして特にレアアース資源における世界的なサプライチェーンでの重要な地位の維持を柱としています。
これらの動きは、電気自動車(EV)バッテリーや先端半導体、防衛装備品に不可欠な重要鉱物の供給網を巡る国際的な緊張関係を浮き彫りにしています。
グローバルサウス諸国の資源ナショナリズムと自律的戦略
グローバルサウス諸国も重要鉱物資源に対する自律的戦略を推進しています。サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)は、国内鉱業の強化に加え、アフリカ諸国との鉱業分野での連携や投資を積極的に進めています。2025年11月8日付の報道では、サウジアラビアがアフリカ11カ国(ザンビア、セネガル、ジンバブエ、コンゴ共和国、アンゴラ、南アフリカ共和国、ギニア、チャド、モーリタニア、モロッコ、エジプト)と鉱業分野のMOU締結に向けて交渉していることが明らかになりました。
主要消費国によるサプライチェーン強靭化と多国間連携
主要消費国は、中国への依存度を低減し、サプライチェーンを強靭化するための多国間連携を進めています。カナダ連邦政府は2026年3月2日、カナダ探鉱者・開発者協会(PDAC2026)大会において、重要鉱物生産同盟に基づき、新たに30件のパートナーシップおよび投資案件を発表しました。これにより、重要鉱物プロジェクトにおいて12の国際パートナーとともに12.1bC$規模の資金動員が見込まれています。これには、パナソニックエナジー株式会社と将来的なリチウム供給に関するオフテイク契約に向けたMOU締結も含まれます。
また、2025年3月には、日仏の企業が参画するフランス国内のレアアース精製事業に対し、経済産業省が約1.1億ユーロ、フランス政府も補助金や税額控除を含め約1億600万ユーロの資金拠出を決定しています。
市場への影響と産業アナリストへの示唆
現在の重要鉱物の国際市場は高度に集中しており、政治的強制や供給網の混乱に脆弱であるとの認識が各国政府の政策決定の背景にあります。米国は重要鉱物の取引を純粋な市場価格競争から切り離し、「政治的・安全保障的なルール」の下に置くことを目指しており、これは「管理された資源市場」への移行を示唆するものです。
2023年以降、中国が輸出規制を急増させたことにより、重要鉱物および原材料のサプライチェーンは厳しく精査されており、世界のサプライチェーンは代替供給源の確保を迫られています。特に精錬・加工工程における中国依存が極端に高い鉱物が多く、ボトルネックは「加工能力」に存在するため、代替サプライチェーンの構築には長期的なリードタイムが必要であると分析されています。
企業は鉱物レベルでの可視化とサプライチェーン・リスク管理(SCRM)の高度化が求められており、今後の市場動向を予測する上で、地政学的リスクと国家戦略の重要性が増していることに注目すべきです。
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- 日米欧 |レアアース・レアメタルに特化した情報を配信 - レアリサ 2026年3月、オーストラリアと欧州連合(EU)は長年の交渉を経て自由貿易協定(FTA)で合意した。本協定は、重要鉱物を含む資源分野において、サプライチェーンの強靭化と投資環境の改善を目的とする重要な枠組みである。
- 中国によるレアアースの輸出規制 -各国の対応と今後の視座-(2026年4月) - PwC 2026年2月、トランプ大統領はレアアースやコバルト、ガリウムといった重要鉱物の備蓄のため、民間資本20億ドル分を含む形で120億ドルを投入する計画「Project Vault」を発表した。また、同年2月、ルビオ国務長官は重要鉱物に関する閣僚会合を主催し、日本を含む50数か国が参加した。日米首脳会談に合わせて発表された重要鉱物に関する日米政府文書では、南鳥島周辺海域のレアアース泥を含む海洋鉱物資源開発に関する協力等について、3つの文書が取りまとめられた。さらに、2025年3月、日仏の企業が参画するフランス国内のレアアース精製事業に対して、経済産業省は約1.1億ユーロの資金拠出を決定し、フランス政府も補助金や税額控除を含め約1億600万ユーロの支援を決定した。
- 「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」を発出しました - 財務省 日本と米国は2026年3月18日、「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」を策定した。この計画は、選定された重要鉱物に焦点を当て、国境調整されるプライス・フロアやその他の措置といった協調的な貿易政策およびメカニズムの実現可能性と策定について、他の参加国との間で議論することを目的としている。
- 米国、重要鉱物市場再構築へ「2026年重要鉱物閣僚会合」を開催 - CRDS 米国は2026年2月4日(3月4日報)、パートナーおよび同盟国とともに「2026年重要鉱物閣僚会合」を開催し、マルコ・ルビオ国務長官らが54か国および欧州委員会代表を招集して、重要鉱物およびレアアースの世界市場を再構築することを打ち出した。米国は同日、アルゼンチン、クック諸島、エクアドル等11か国と二国間重要鉱物枠組みまたは覚書(MOU)を締結し、価格課題への対応、公正市場形成、優先供給網のギャップ是正、資金調達拡大の基盤整備を目指す。また、鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)の後継として「資源の戦略地政学的関与に関するフォーラム(FORGE)」創設を発表し、政策・事業両面での連携強化を図る方針である。
- 日仏鉱物サプライチェーン合意、輸送再編へ - LOGISTICS TODAY 2026年4月1日(3月20日の日米首脳会談に続く形で)、高市早苗首相とエマニュエル・マクロン仏大統領は首脳会談を行い、レアアースの共同調達を軸とする「日仏重要鉱物協力ロードマップ」の策定で合意した。共同声明には中国を念頭に「重要鉱物に対する輸出規制は重大な悪影響を及ぼす可能性がある」との懸念が明記された。この合意の中核には、フランス南西部で建設が進む重レアアース精錬工場があり、日本も資金拠出を決定している。
- 脱石油を進める湾岸諸国のアフリカ鉱物資源を巡る動向 | 高まる経済安全保障リスク - ジェトロ サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)は、国内鉱業の強化に加え、アフリカとの連携や投資を積極的に進めている。サウジアラビアは、アフリカ11カ国(ザンビア、セネガル、ジンバブエ、コンゴ共和国、アンゴラ、南アフリカ共和国、ギニア、チャド、モーリタニア、モロッコ、エジプト)と鉱業分野のMOU締結に向けて交渉していると2025年11月8日付のSPAが報じた。
- 日米、重要鉱物開発で協力強化へ - ライブドアニュース - Livedoor 日米両政府は2026年3月19日、重要鉱物分野の協力強化に向けた文書を発表し、共同開発の対象として計13事業を例示、三菱マテリアルなど日本企業も参画する。
- 深海鉱物資源開発で協力覚書 日米首脳会談 重要鉱物など協力強化で一致 サプライチェーン強靱化で行動計画も - 環境新聞 日米首脳会談では、重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米行動計画が発表され、深海鉱物資源開発に関する協力覚書も締結された。これは、非市場的政策や慣行によるサプライチェーンの脆弱性を是正し、経済安全保障および国家安全保障を確保するために不可欠と強調されている。
- 中国依存をどう減らす?2026年の重要鉱物サプライチェーン最前線|株式会社KUMU Works 2023年以降、中国が輸出規制を急増させたことにより、重要鉱物および原材料のサプライチェーンは厳しく精査されており、世界のサプライチェーンは代替供給源の確保を迫られている。特に精錬・加工工程で中国依存が極端に高い鉱物が多く、ボトルネックは「加工能力」にあり、代替サプライチェーンの構築には長いリードタイムが必要である。
- サプライチェーンニュースレポート 2026-03-06 | Lanes 2026年3月5日報の中国の新たな5カ年計画は、人工知能(AI)や科学技術の革新を重視することで技術的優位性の確立を目指し、米国の貿易措置への対抗および国内経済の課題緩和に取り組んでいる。この戦略は、デジタルの中核産業の強化、家計消費の拡大、そして特にレアアース資源における世界的なサプライチェーンにおける重要な地位の維持を柱としている。
- 米国主導の「重要鉱物・複数国間貿易協定」が意味するもの覇権を巡る資源ルールの激変と日本企業への影響 - 株式会社ロジスティック 2026年2月4日、ワシントンで54カ国以上が参加する初の重要鉱物閣僚会合が開催され、バンス米副大統領が友好国との間で「重要鉱物に関する特恵貿易圏」の創設を正式に宣言した。米国は、重要鉱物の取引を純粋な「市場の価格競争」から切り離し、「政治的・安全保障的なルール」の下に置くことを目指しており、現在の重要鉱物の国際市場は機能不全に陥っているとの認識を示している。
- 日米、重要鉱物の供給網強化に行動計画 価格下限の導入に焦点 - ニューズウィーク 日米は2026年3月19日、中国への依存を低減させるため、重要鉱物やレアアースの代替調達先を開発する取り組みに関する行動計画を発表した。この計画では、特定の鉱物を対象とした価格下限措置の導入に焦点を当てる。
- Japan, the US, and Europe to cooperate on rare earth elements: Can they achieve a reduction in de... - YouTube 2026年3月25日放送のニュースで、日米両政府が深海鉱物資源開発に関する協力覚書を結んだことが報じられた。これは南鳥島周辺海域のレアアース開発などを加速させ、中国産レアアースへの依存からの脱却を目指すものである。
- 加:連邦政府、重要鉱物分野で30件の新たなパートナーシップを締結 - JOGMEC JOURNAL カナダ連邦政府は2026年3月2日付けのプレスリリースで、カナダ探鉱者・開発者協会(PDAC2026)大会において、重要鉱物生産同盟に基づき、新たに30件のパートナーシップ及び投資案件を発表した。これにより、重要鉱物プロジェクトにおいて12の国際パートナーとともに12.1bC$規模の資金動員が見込まれる。これには、パナソニックエナジー株式会社と将来的なリチウム供給に関するオフテイク契約に向けたMOU締結も含まれる。
- 【2026年3月27日】アフリカ関連重要ニュース|コーヒーと万年筆 - note 2026年3月26日報のニュースによると、タンザニアはパンダ・ヒル・ニオブ・プロジェクトで世界の主要ニオブ生産国となることを目指している。また、タンザニアとザンビアはTAZARA鉄道の鉱物輸送インフラ改善で合意した。ジンバブエはリチウムを含む未加工鉱物の輸出を禁止した。
- 【2026年3月22日】アフリカ関連重要ニュース|コーヒーと万年筆 - note 2026年3月21日報のニュースによると、コンゴ民主共和国(DRC)におけるコバルト輸出が実質的に停止した。
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