2026年3月上旬 グローバルサウスにおける国際貿易の潮流:保護主義の動向と地域連携の深化
米国の保護主義的貿易政策の動向とグローバルサウスへの影響
米国財務長官は2026年3月5日、各国に一律10%で課している関税を週内に15%に引き上げる意向を示しました。これに先立ち、トランプ大統領は連邦最高裁判所による「相互関税」の違法判断を受け、別の法律に基づき各国へ一律10%の関税を課していました。同日、米国際貿易裁判所は、トランプ政権に対し「相互関税」で徴収された関税を企業に返還するよう命じましたが、政権は上訴する可能性が高いと見られています。こうした米国の貿易政策の動向は、グローバルサウス諸国の貿易環境に不確実性をもたらしています。
中国の貿易・投資協定推進戦略とグローバルサウスの連携強化
中国では2026年3月5日に第14期全国人民代表大会(全人代)第4回会議が開幕し、政府活動報告が発表されました。報告では、2026年の対外開放政策として、二国間および多国間の貿易・投資協定のさらなる締結推進が掲げられています。具体的には、デジタル経済パートナーシップ協定(DEPA)や環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)への加入交渉を積極的に進める方針が示されました。また、湾岸協力会議(GCC)、スイス、韓国、ニュージーランド、太平洋島嶼国、中央アジア、アフリカ諸国との自由貿易に関する協力強化、特に「一帯一路」共同建設国との投資協定交渉の加速が目標とされています。これらの取り組みは、デジタル貿易やグリーン貿易の発展も視野に入れており、グローバルサウスにおける経済連携の強化に寄与すると見られます。
アフリカおよびASEANにおける地域経済統合の進展
アフリカでは、2026年2月14日から15日にかけて開催されたアフリカ連合年次総会において、アフリカの経済発展におけるアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の重要性が再認識されました。総会では、税制メリットの整備などを通じて、アフリカ域内貿易の強化および二次加工体制の強化を目標とすることが合意されました。
一方、ASEANでは、2026年2月12日の報道により、同年の経済戦略が策定されたことが明らかになりました。この戦略は、貿易・投資のシームレスな域内統合深化、デジタル市場発展、中小零細企業(MSME)能力強化、グリーン経済移行加速、クリエイティブ経済推進という5つの柱から構成されます。貿易面においては、ASEANカナダ自由貿易協定およびASEANインド物品貿易協定(AITIGA)の改定交渉を年内に完了させることを目指しているとされています。
BRICSの拡大と現地通貨決済の推進
BRICSは現在、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、イラン、エジプト、アラブ首長国連邦、エチオピア、インドネシアの10カ国からなる国際会議体です。インドネシアは2025年に加盟し、これによりBRICSは拡大しました。BRICSの運営は加盟国による非干渉、平等、相互利益を基本としています。2023年8月の第15回BRICS首脳会議では、BRICS共通通貨の実現可能性を検討することが既に合意されています。
2026年の議長国であるインドは、加盟国間で現地通貨貿易とデジタル公共インフラの導入を促進することを目指しています。BRICS通貨プロジェクトは2026年の発表を目標としており、米ドルへの依存を減らし、ブロック内の経済的結びつきを強化するための戦略的なシフトとして、現地通貨貿易が優先されています。実際に、加盟国間ではルーブルや元などの現地通貨による二国間貿易決済が増加傾向にあります。
グローバルサウスにおけるグリーン金融協力の動向
中国人民銀行のLu Lei副総裁は、質の高いグリーン金融の発展を共同で推進し、世界の資本の流れをグリーン・低炭素セクターへと導くため、中国の金融機関が「一帯一路」パートナー国においてグリーン・低炭素投資を行うよう奨励されていることを表明しました。この取り組みは、グローバルサウス地域における持続可能な金融協力の進展に貢献すると期待されます。
[ Advertisement ]Reference / エビデンス
- トランプ新関税 15%に引き上げ 米財務長官「今週中の可能性」(2026年3月5日) - YouTube 2026年3月5日、米国財務長官は、各国に対する一律10%の関税を週内にも15%に引き上げる考えを示した。トランプ大統領は先月、連邦最高裁判所が「相互関税」などを違法と判断したことを受け、別の法律に基づき各国に一律10%の関税を課していた。また、米国際貿易裁判所は同日、トランプ政権に対し「相互関税」などで徴収した関税の企業への返還開始を命じたが、政権は上訴する可能性が高いと見られている。
- 中国、2026年はより多くの貿易・投資協定締結を推進(中国) | ビジネス短信 - ジェトロ 2026年3月5日から12日に開催された中国の第14期全国人民代表大会(全人代)第4回会議で発表された政府活動報告では、2026年の対外開放政策として、より多くの二国間および多国間の貿易・投資協定の締結を推進する方針が示された。これには、デジタル経済パートナーシップ協定(DEPA)や環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)への加入交渉の積極的な推進が含まれる。また、湾岸協力会議(GCC)、スイス、韓国、ニュージーランド、太平洋島嶼国、中央アジア、アフリカ諸国との自由貿易に関する協力、特に「一帯一路」共同建設国との投資協定交渉の加速が掲げられ、デジタル貿易・グリーン貿易の発展も目指すとしている。
- 令和8年3月5日 関係者各位 アフリカ連合日本政府代表部 経済・開発協力班 当代表部では、 2026年2月14-15日に開催されたアフリカ連合年次総会では、アフリカの経済発展におけるアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の重要性が再認識された。税制メリットなどの整備を通じて、アフリカ域内貿易の強化と二次加工の体制強化が目標とされている。
- BRICS - Wikipedia BRICSは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、イラン、エジプト、アラブ首長国連邦、エチオピア、インドネシアの10か国から成る国際会議であり、2025年のインドネシアの参加により10か国に拡大した。BRICSは加盟国による非干渉、平等、相互利益を基本としている。2023年8月の第15回BRICS首脳会議では、BRICS共通通貨の実現可能性を検討することが約束された。
- BRICS 2026 Summit in India: A New Era of Global South Economic Leadership - YouTube インドは2026年のBRICSサミットの議長国を正式に引き継ぎ、加盟国間で現地通貨貿易とデジタル公共インフラの導入を促進することを目指している。
- BRICS通貨の発表日:これまでの知見 - Gate.com BRICS通貨プロジェクトは2026年の発表を目指しており、米ドルへの依存を減らし、ブロック内の経済的結びつきを強化するため、現地通貨貿易を優先する戦略的シフトが中心となっている。加盟国間ではルーブルと元など現地通貨での二国間貿易決済が増加している。
- ASEAN・インド物品貿易協定の見直しと改善を促進する。 - Vietnam.vn 2026年3月30日、ASEAN事務局本部(インドネシア、ジャカルタ)でASEAN・インド物品貿易協定(AITIGA)第12回合同委員会(AITIGA JC 12)が開催され、ASEAN諸国とインドの代表がAITIGA協定の見直しと改訂に向けた交渉における未解決事項について協議・解決を行った。原産地規則(ROO)や税関手続き・貿易円滑化(CPTF)に関する作業部会も並行して開催された。
- ASEAN、2026年の経済戦略を策定、3月の経済大臣会合に提出(ASEAN、タイ) | ビジネス短信 2026年2月12日の報道によると、ASEANは2026年の経済戦略を策定し、3月に開催予定のASEAN経済大臣会合に提出する予定である。この戦略は、貿易・投資のシームレスな域内統合深化、デジタル市場発展、中小零細企業(MSME)能力強化、グリーン経済移行加速、クリエイティブ経済推進の5つの柱からなる。貿易面では、ASEANカナダFTAおよびASEANインド物品貿易協定(AITIGA)改定の交渉を年内に完了させることを目指している。
- Xinhua Silk Road:コンセンサスから行動へ、グローバル・サウスが国際的なグリーン資本の流れを牽引 - AFPBB News 2026年3月26日、北京で2026年グローバルサウス金融フォーラムが開幕し、30以上の国・地域の政府関係者、銀行関係者、ビジネスリーダー、国際機関の代表が集結し、より包摂的で持続可能な金融協力の強化に向けた連携を図った。参加者は、グローバルサウス諸国における強力な金融協力の必要性を強調した。
- Xinhua Silk Road:コンセンサスから行動へ、グローバル・サウスが国際的なグリーン資本の流れを牽引 中国人民銀行のLu Lei副総裁は、質の高いグリーン金融の発展を共同で推進し、世界の資本の流れをグリーン・低炭素セクターへと導くため、中国の金融機関が「一帯一路」パートナー国においてグリーン・低炭素投資を行うよう奨励されていると述べた。
Vantage Politics