OECDグローバル・ミニマム課税の最新動向:簡素化措置、米国企業適用除外、日本の法制化進展

OECD、グローバル・ミニマム課税の簡素化パッケージ合意と米国企業の適用除外

経済協力開発機構(OECD)は2026年1月5日、BEPS包摂的枠組み(IF)の147メンバー国・地域が、グローバル・ミニマム課税(第2の柱)に関する新たな執行ガイダンスパッケージ「サイド・バイ・サイド・パッケージ」に合意したことを公表しました。このパッケージは、多国籍企業のコンプライアンスコスト削減と制度の確実性向上を目的としており、15%の最低実効税率とBEPS防止という核心目標を維持しつつ、簡素化メカニズムとセーフハーバー制度を大幅に導入し、各国税制の協調性を強化することを目指しています。

具体的には、恒久的な簡易実効税率(ETR)セーフハーバー、移行期間国別報告(CbCR)セーフハーバーの1年延長、実質ベースの税制優遇措置セーフハーバー、適格国向けの「サイド・バイ・サイド(SbS)セーフハーバー」、および最終親会社(UPE)セーフハーバーが含まれています。恒久的な簡易実効税率セーフハーバーでは、対象管轄区域の実効税率が少なくとも15%であれば、トップアップ税はゼロとみなされます。特にSbSセーフハーバーは、多国籍企業グループの最終親会社(UPE)が適格SbS制度を持つ管轄区域にある場合、その会計年度のすべての管轄区域において、所得合算ルール(IIR)および軽課税所得ルール(UTPR)に基づくトップアップ税がゼロとみなされることを選択可能とするものです。

2026年1月5日現在、米国はOECD中央記録で適格SbS制度を有する唯一の国として記載されています。これにより、米国に本社を置く多国籍企業は、第2の柱のIIRおよびUTPRの適用対象外となり、その海外補足税義務が大幅に軽減される可能性があります。米国財務省のスコット・ベッセント長官は同日、この合意を歓迎する声明を発表し、これは米国の主張に基づき、本社設立国で一定基準を満たす企業に対し、IIRおよびUTPRの不適用を認めるものであると述べました。他の国・地域も将来的に適格性が評価される可能性があります。

日本のグローバル・ミニマム課税国内法制化の進展

日本では、グローバル・ミニマム課税のうち所得合算ルール(IIR)が2024年4月1日以降に開始する会計年度から既に適用されています。これに加えて、令和7年度税制改正により、「国際最低課税残余額に対する法人税」(軽課税所得ルール、UTPRに相当)と「国内最低課税額に対する法人税」(国内ミニマム課税、QDMTTに相当)が法制化されました。これらのルールは、2026年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用される予定です。

さらに、国際課税システムの安定化等を目的として、グローバル・ミニマム課税と独自のミニマム課税制度を有する米国を含む一定の要件を満たす国の制度との共存等について、2026年1月5日に国際合意が成立しました。これを受け、2026年1月23日の閣議決定において、令和8年度税制改正で「グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置」が見直されることとされました。

多国籍企業の税務コンプライアンスと各国の動向

グローバル・ミニマム課税の導入に伴い、多国籍企業は税務コンプライアンスにおける対応が求められています。各国の動向としては、ドイツ税務当局が2025年末までに、「Elster」電子申告プラットフォームを通じて第2の柱(Pillar Two)に関する税務申告書を公開しました。適格国内最低税負制(QDMTT)、所得涵蓋原則(IIR)、および徴税不足支出原則(UTPR)は個別に申告する必要があり、GloBE情報申告書(GIR)と併せて提出することが求められます。

また、イスラエル財政部は2026年からOECDのBEPS原則第2の柱に従い、国内で事業を行う多国籍企業に対し、少なくとも15%の利益税を課すグローバル最低税負制を導入する計画を発表しています。しかし、イスラエルは現在のところ、姉妹会社や子会社に15%の税率を適用することを認めるIIR/UTPRの部分についてはまだ署名していません。

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Reference / エビデンス

  • グローバル・ミニマム課税に係る実務対応ガイド | PwC Japanグループ PwC税理士法人は、2024年4月から日本で導入されたグローバル・ミニマム課税(国際最低課税額に対する法人税)について、申告実務に携わる企業担当者向けに実務対応ガイドを発行した。日本の法制度はOECDのモデルルールに沿って整備されており、2024年度および2025年度税制改正で追加の法整備が行われている。
  • 英国歳入関税庁、移転価格および迂回利益税に関する年次統計を発表 | EY Japan 2026年3月11日、英国歳入関税庁(HMRC)は、移転価格および迂回利益税(DPT)に関する2024-25年度の統計を発表し、移転価格による税収が33億8,700万ポンドへと大幅に増加し、前年度からほぼ倍増したことを明らかにした。
  • グローバル・ミニマム課税に関する令和7年度税制改正が施行(UTPR・QDMTT) | EY Japan 令和7年度税制改正に係る「所得税法等の一部を改正する法律」が2025年3月31日に公布され、原則として4月1日に施行された。グローバル・ミニマム課税に関しては、軽課税所得ルール(UTPR)が「国際最低課税残余額に対する法人税」として、また国内ミニマム課税(QDMTT)が「国内最低課税額に対する法人税」として、2026年4月1日以後開始対象会計年度から適用される。
  • 2026年3月期決算における税務上の留意事項 - KPMG International 2025年度税制改正では、国際課税の分野で「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税」についてOECDから公表されたガイダンス等を踏まえた見直しが行われた。また、事務負担軽減の観点から外国子会社合算税制の見直しも行われた。
  • グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置 - 財務省 2026年1月5日にグローバル・ミニマム課税と独自のミニマム課税制度を有する米国を含む一定の要件を満たす国の制度との共存等について国際合意が成立したことを受け、2026年1月23日、令和8年度税制改正において「グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置」が閣議決定された。
  • グローバル・ミニマム課税 - 東京共同会計事務所 グローバル・ミニマム課税の3つのルールのうち、所得合算ルール(IIR)は日本でも導入され、2024年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用されている。残る2つのルールである軽課税所得ルール(UTPR)と国内ミニマム課税(QDMTT)は、令和7年度税制改正で法制化され、2026年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用される。
  • グローバル・ミニマム課税関係 - 国税庁 令和5年度税制改正により、グローバル・ミニマム課税の所得合算ルール(IIR)に係る法制化として、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の創設等が行われた。また、令和7年度税制改正において、軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)に係る法制化として、各対象会計年度の国際最低課税残余額に対する法人税及び各対象会計年度の国内最低課税額に対する法人税の創設等が行われた。
  • 国际税收聚焦 - 普华永道 2026年1月5日、OECDはBEPS包摂的枠組み(IF)の147メンバー国・地域が、第2の柱グローバルミニマム課税ルール(GloBEルール)に基づく新たな執行ガイダンスパッケージ(「Side-by-Side Package」)に合意したことを公表した。
  • Pillar 2 Project Continues: Updates On The OECD - Forbes 2026年3月3日の報道によると、OECDのPillar Twoに関する「Side-by-Side Package」には、恒久的な簡易実効税率(ETR)セーフハーバーが含まれており、これにより、対象となる管轄区域の実効税率が少なくとも15%であれば、トップアップ税はゼロとみなされる。また、適格国内ミニマムトップアップ税(QDMTT)は維持され、最終親会社(UPE)が適格UPE制度を持つ管轄区域にある場合、UTPRトップアップ税は課されないUPEセーフハーバーも導入された。
  • Worldwide Tax Summary 2026年2月号 | PwC Japanグループ 2026年1月5日、OECDはBEPS包摂的枠組み(IF)の147メンバー国・地域が、第2の柱グローバルミニマム課税ルール(GloBEルール)に基づく新たな執行ガイダンスパッケージに合意したことを公表した。この「Side-by-Side Package」には、恒久的な簡易実効税率(ETR)セーフハーバー、移行期間国別報告(CbCR)セーフハーバーの1年延長、実質ベースインセンティブ(税恩典)セーフハーバー、適格国に係るSide-by-Side(SbS)セーフハーバーおよび最終親事業体(UPE)セーフハーバーが含まれる。SbSセーフハーバーは、適格国・地域に本拠がある多国籍企業が一定の適格性および選択要件を満たせば、国内外の全事業でIIR/UTPRのトップアップ税額がゼロになるもので、2026年1月1日以降に開始する会計年度に適用される。2026年1月5日現在、米国はOECD中央記録で適格要件を満たす唯一の国である。
  • OECD發布Pillar Two雙軌制配套措施| 勤業眾信 - Deloitte 2026年1月9日、OECDはグローバル最低税負制(Pillar Two)の推進方向に関する合意を発表し、「Side-by-Side Package」(双軌制配套措施)を正式に発表した。このパッケージは、15%の最低実効税率とBEPS防止という核心目標を維持しつつ、簡素化メカニズムとセーフハーバー制度を大幅に導入し、制度の確実性を高め、多国籍企業のコンプライアンスコストを削減し、各国の税制の協調性を強化することを目的としている。このパッケージには、永久的な簡易実効税率避風港、移行期間国別報告避風港の延長、実質性租税奨励避風港、そして双軌制避風港が含まれる。双軌制避風港は、最終親会社(UPE)所在地国がOECDにより「合格国内税制」と「合格全球税制」の両方を持つと認定された場合、そのグループがこの避風港を選択でき、海外所得が他の税務管轄区域で課税されることを回避できる。現在、米国が唯一、双軌制避風港の条件を満たす国として中央名簿に記載されている。
  • 2026(R8)年3月決算における税務上の留意事項 | デロイト トーマツ グループ - Deloitte 令和8年3月決算においては、主に令和7年度税制改正の内容が初めて適用される。国際課税の分野では、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」で取りまとめられた「2本の柱」の解決策の実施に向けた取り組みにおいて、グローバル・ミニマム課税(「第2の柱」)について軽課税所得ルール及び国内ミニマム課税の法制化が行われた。
  • OECD发布支柱二并行安排方案,五大安全港破解全球最低税实操困境 - 新浪财经 OECD/G20包容性フレームワークは「並行アレンジメント」(Side-by-Side Package)一括方案を発表した。この方案は、15%のグローバル最低税の底線を堅持しつつ、各国税制の差異と企業のコンプライアンスに柔軟な適応空間を提供するため、分層分類のセーフハーバー設計を通じて、グローバル最低税実施過程における実務上の課題を解決することを目的としている。特に「並行メカニズムセーフハーバー」(SbSセーフハーバー)は、最終親会社所在地がすでに高水準の税制を確立している多国籍グループを対象とし、米国は企業代替最低税(CAMT)を導入しているため、唯一明確に資格を満たす管轄区域となり、その多国籍企業の海外補足税義務が大幅に軽減される。
  • Pillar Two Country Tracker - PwC 2026年1月5日、OECDはBEPS包摂的枠組み(IF)の147メンバー国・地域が、第2の柱グローバルミニマム課税ルール(GloBEルール)に基づく新たな執行ガイダンスパッケージ(「GloBE rules」)に合意したことを発表した。合意された「Side-by-Side Package」には、恒久的な簡易実効税率(ETR)セーフハーバー、移行期間CbCRセーフハーバーの1年延長、実質ベースの税制優遇措置セーフハーバー、適格国向けのSide-by-Side(SbS)セーフハーバー、およびUPEセーフハーバーが含まれる。
  • OECD Pillar Two Side-by-Side System and New Safe Harbors | Insights | Mayer Brown SbSセーフハーバーの下では、多国籍企業グループの最終親会社(UPE)が適格SbS制度を持つ管轄区域にある場合、その会計年度のすべての管轄区域において、IIRおよびUTPRに基づくトップアップ税がゼロとみなされることを選択できる。このSbSセーフハーバーは、2026年1月1日以降に開始する会計年度から適用可能である。2026年1月1日現在、米国は適格SbS制度を持つ唯一の管轄区域である。
  • 以色列財政部宣布將從2026年起,依照OECD國際稅制改革原則第二支柱,對跨國公司實施全球最低稅負制 イスラエル財政部は、2026年からOECDのBEPS原則第2の柱に従い、国内で事業を行う多国籍企業に対し、少なくとも15%の利益税を課すグローバル最低税負制を導入する計画を発表した。ただし、イスラエルは15%の最低税率原則(QDMTT)は受け入れているものの、姉妹会社や子会社に15%の税率を適用することを認めるIIR/UTPRの部分はまだ署名していない。
  • 国際税務新知 ドイツ税務当局は2025年末までに「Elster」電子申告プラットフォームを通じて第2の柱(Pillar Two)税務申告書を公開した。適格国内最低税負制(QDMTT)、所得涵蓋原則(IIR)、および徴税不足支出原則(UTPR)は個別に申告する必要があり、GloBE情報申告書(GIR)と併せて提出する必要がある。
  • ベッセント米財務長官、在米企業のグローバル・ミニマム課税適用外を歓迎する声明発表(米国) 2026年1月5日、米国財務省のスコット・ベッセント長官は、OECDの国際課税ルールの第2の柱であるグローバル・ミニマム課税の運用に関して、米国に本社を置く多国籍企業を適用外とした合意を歓迎する声明を発表した。OECDが合意を発表したパッケージの柱となる「SbSセーフハーバー」制度は、米国の主張に基づき、本社設立国で一定基準を満たす企業に対し、グローバル・ミニマム課税の定める所得合算ルール(IIR)および軽課税所得ルール(UTPR)の不適用を認めるものである。
  • 国際最低法人課税見直しで145カ国超が合意...トランプ反発のため米企業は例外 2026年1月5日、経済協力開発機構(OECD)と米財務省は、15%の法人税を適用することなどを規定した国際最低課税に関し、米企業を例外とする見直し案を受け入れることで世界145カ国超が合意したと発表した。これは、多国籍企業に不利益をもたらすとしてトランプ米大統領が反発したことを踏まえ、米企業を例外とする規定が盛り込まれたものである。
  • 2026(R8)年度税制改正:グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置 - Deloitte 2026年1月23日に「グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置」が閣議決定された。これは、国際課税システムの安定化等の観点から、グローバル・ミニマム課税と、独自のミニマム課税制度を有する米国を含む一定の要件を満たす国の制度との共存等について、2026年1月5日に合意が成立したことを受け、当該合意に則り、2026年度税制改正において見直しを行うこととされたものである。