欧州移民政策の動向:厳格化の模索と労働市場・人材戦略の課題
EU域内外での移民政策厳格化の動き
欧州連合(EU)圏内では、不法移民への対応を巡る政策の厳格化に向けた具体的な動きが見られます。複数のEU加盟国が、EU域外の第三国政府と、亡命申請を拒否された移民を収容する施設の設置について、既に交渉を開始している状況です。具体的には、ギリシャ、ドイツ、オランダ、オーストリア、デンマークがアフリカ諸国政府と協議を進めています。また、オーストリア政府はウズベキスタンとの間で移民協定交渉を開始することを承認し、チェコ共和国はNGOに対する規制を強化する新法案の準備を進めています。これらの動きに対し、NGOは人権リスクが高まることについて警告を発しています。
亡命申請の現状と政策実施計画
欧州における亡命申請の状況を見ると、2025年のEU+諸国における亡命申請件数は約822,000件に達し、前年と比較して19%減少しました。その中でも、アフガニスタン国民からの申請は増加傾向にあり、2025年には117,000件で最も多い申請国籍となっています。こうした背景の下、欧州連合亡命機関(EUAA)は2026年3月に、新移民・庇護協定の実施に向けた各国実施計画を更新しました。2026年2月時点で、EU+加盟国30カ国のうち28カ国がすでに計画を提出しているものの、ハンガリーとポーランドは計画を提出しないことを表明しています。
労働市場への影響と欧州の人材確保戦略
欧州が少子高齢化と労働力不足という構造的な課題に直面する中で、移民政策は労働市場に多角的な影響を与えています。欧州委員会は2026年1月29日、不法移民の防止や戦争・迫害からの保護に加え、EU経済の競争力強化のための「人材誘致」を主要目標とする新たな5カ年移民管理戦略を発表しました。この戦略では、スキルギャップや労働力不足に対応するため、既存のタレントパートナーシップの拡大や新規立ち上げ、そしてパートナー国との協力における人材誘致の完全統合の必要性が強調されています。実際に、移民はスペインの経済成長の47%を支えるなど、一部の国で経済的な重要な役割を担っています。
一方で、各国では移民政策の見直しが進められており、英国は2026年3月5日に移民規則の広範な変更を発表しました。これには、高庇護申請率の国籍に対する特定のビザ経路を一時停止できる「ビザブレーキ」メカニズムの導入が含まれています。これらの変更は、低スキル労働者の入国を厳格化しつつ、高スキル人材の誘致を強化することを目的としています。欧州は、不法移民対策と同時に、持続可能な経済成長のために戦略的な人材確保アプローチを模索している状況にあります。
[ Advertisement ]Reference / エビデンス
- Monthly Newsletter | March 2026 - Solidarity with OTHERS 2026年3月、欧州議会はEU域外に「送還ハブ」を設置し、亡命申請を却下された人々を本国送還前に収容する新法案を承認した。この法案は拘束の利用拡大と、加盟国が亡命希望者を第三国へ移送することを許可するもので、中道右派と極右政党の連携により389対206で可決された。NGOは人権リスクについて警告している。また、欧州連合亡命機関(EUAA)は、2026年6月に完全に施行される予定のEU移民・庇護協定の実施に向けた各国実施計画を更新した。2026年2月時点で、EU+加盟国30カ国のうち28カ国が計画を提出したが、ハンガリーとポーランドは提出しないことを表明した。オーストリア政府はウズベキスタンとの間で移民協定交渉を開始することを承認し、チェコ共和国はNGOに対する規制を強化する新法案を準備している。
- Parliament backs tighter migration rules despite divisions, approving the controversial returns regulation - Eunews 2026年3月26日、欧州議会は移民に対する取り締まり強化を支持し、欧州人民党と極右勢力による多数派が形成された。この法案は389票の賛成、206票の反対、32票の棄権で可決された。不法滞在の第三国籍者は、EU域外への送還に協力することが義務付けられ、非協力的な場合は最大24ヶ月間拘束される可能性がある。送還は、加盟国またはEUと第三国との間の合意に基づき、いわゆる「送還ハブ」を通じて行われる場合がある。
- EU lawmakers vote to make it easier to set up migrant detention centers outside the bloc 2026年3月26日、欧州議会議員は、EU域外に新たな移民収容センター(「送還ハブ」として知られる)を設置し、亡命申請を却下された人々を送還しやすくする計画を承認した。この措置は389対206で可決され、右派政党が極右グループと連携して成立させた。ギリシャ、ドイツ、オランダ、オーストリア、デンマークは既にアフリカ諸国政府と、亡命を拒否された移民を収容する施設の設置について交渉を開始している。人権団体は、この投票が「難民の権利にとって歴史的な後退」であると批判している。
- Returns of migrants from the EU to third countries have risen by 13 per cent - Eunews 2026年3月31日、EU統計局ユーロスタットは、2025年第4四半期にEUから第三国へ送還された人数が33,860人に達し、前年同期比で13%増加したと発表した。同時に、EUからの退去命令を受けた第三国籍者の数は6.1%減少した(117,545人)。送還の大部分(58.9%)は自発的帰還であり、41.1%が強制送還であった。トルコ、ジョージア、シリアの国民が送還された第三国籍者の大半を占めた。
- Europe seeks to increase deportations, quietly adopting Trump administration tactics - PBS EUは、アフリカなどの第三国に「送還ハブ」を設置し、移民の追跡、強制捜査、送還の権限を拡大しており、これはトランプ政権の戦術を静かに採用していると指摘されている。欧州委員会委員長のウルズラ・フォン・デア・ライエンは、これらの新措置が2015年の移民危機再発を防ぐと述べている。新たな政策は「移民・庇護協定」として2026年6月12日に発効する予定である。人権団体は、EU国境で移民が不法に押し戻され、法的保護が骨抜きにされていると警告している。
- Migration Update - Wilfried Martens Centre for European Studies 2026年3月26日、欧州議会本会議は、EUに滞在する権利のない人々の送還に関する新たな法的枠組みについて理事会との交渉開始を承認した。この決定は389票の賛成、206票の反対、32票の棄権で可決された。また、2025年のEU+諸国における亡命申請件数は約822,000件で、2024年より19%減少した。アフガニスタン国民からの申請は増加し、2025年には117,000件で最も多かった。スペインの経済成長の47%は移民の労働力によって説明されるという研究結果も示されている。
- Commission presents a five-year strategy on migration 2026年1月29日、欧州委員会は新たな5カ年移民戦略を発表した。この戦略は、不法移民の防止、戦争や迫害から逃れる人々の保護、そしてEU経済の競争力強化のためにEUに才能ある人材を誘致するという3つの主要目標を掲げている。これには、世界で最も先進的なデジタル国境管理システム(EES、ETIAS)の導入や、2026年6月からの外部国境での不法入国者全員のスクリーニングが含まれる。また、スキルギャップと労働力不足に対応するため、既存のタレントパートナーシップを拡大し、新たなものを立ち上げ、パートナー国との協力に人材誘致を完全に統合する必要があるとしている。
- Migration: the Civil Liberties Committee adopts a reform of EU return rules | News 2026年3月9日、欧州議会の市民的自由・司法・内務委員会は、EUに不法滞在する非EU国籍者の送還に関するEU政策の変更案を採択した。この採択は41票の賛成、32票の反対、1票の棄権で行われた。草案によると、送還決定は管轄の国家当局によって発行され、関連するEU加盟国を離れる義務を課す。送還は、加盟国とEUおよび第三国との間の合意に基づき、いわゆる「送還ハブ」を含む形で行われる場合がある。非協力的な送還者は最大24ヶ月間拘束される可能性がある。
- 英国公布2026年3月移民规则广泛变更声明 - VisaHQ 2026年3月5日、英国は移民規則の広範な変更を発表した。これには、高庇護申請率の国籍に対する特定のビザ経路を一時停止できる「ビザブレーキ」メカニズムの導入が含まれる。また、2027年3月26日以降、すべての就労ビザの定住申請者には、より高いB2レベルの英語能力が求められるようになる。これらの変更は、低スキル労働者の入国を厳格化しつつ、高スキル人材の誘致を強化することを目的としている。
- 世界民族热点每周动态(2026年3月9日至3月16日)-腾讯新闻 - QQ News 2026年3月9日から16日の週、EUの新たな「移民と庇護に関する協定」の関連条項が各加盟国で本格的な実施段階に入り、南欧の最前線国(イタリア、ギリシャなど)と中東欧諸国との間で難民割り当てを巡る外交摩擦が再燃した。複数の国際人権団体は、一部の国が国境で「迅速な送還」を実施する際に、少数民族移民の基本的な要求を無視していると批判する報告書を発表した。また、西欧諸国(フランス、ドイツなど)では、移民コミュニティにおける「並行社会」現象に関する政策議論が展開され、新移民とその子孫に対する共通言語教育と国家価値観の強化が提案されている。
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