東アジア半導体サプライチェーンの行方:輸出管理の構造変化と各国戦略の多角的分析

米国、対中AIチップ輸出管理を条件付き緩和:「管理された相互依存」への転換

米国政府は、2026年1月15日からNVIDIAのH200やAMDのMI325Xなど特定のAIチップの対中輸出ライセンス方針を「原則不許可」から「個別審査」へと変更した。これは2026年3月5日の報道で伝えられたもので、2025年12月8日の発表に基づく措置であり、同月13日に最終規則が発表され、15日に発効した。これにより、中国向けAIチップの輸出が条件付きで再開された。この緩和策には、25%の関税や中国側の国産チップ購入義務、製品が米国内で一般に流通していること、米国内の供給を減らさないこと、中国向け総出荷量が米国顧客への総出荷量の50%を超えないこと、中国顧客が不正アクセス防止措置を講じていることなど、厳格な条件が伴う。これらの動きは、米中間の「管理された相互依存」への転換と見られている。ただし、NVIDIAの最先端チップである「Blackwell」は引き続き中国市場から締め出される状況にある。

中国の対日輸出管理強化:東アジア域内での緊張とサプライチェーンへの影響

中国商務部は2026年1月6日、「日本向けデュアルユース品目の輸出管理強化に関する告示」を発表し、日本の軍事関連ユーザー、軍事目的、および日本の軍事力強化に資する最終用途へのあらゆるデュアルユース品目の輸出を禁止する措置を講じた。この措置は、日本の要人発言への対抗措置とされている。さらに翌1月7日には、日本産の輸入ジクロロシランに対する反ダンピング調査を開始した。これらの動きは、東アジア域内における輸出管理を巡る地政学的緊張が高まっていることを示しており、地域全体のサプライチェーンの脆弱性への影響が懸念される。

東アジア各国の戦略的対応とサプライチェーン再編の動き

米中間の輸出管理政策の変動に対し、東アジア各国はそれぞれ独自の戦略で対応を進めている。中国は、輸出規制を受けながらも国内自給率の向上と人工知能(AI)分野への巨額投資を拡大する動きを見せている。一方、韓国はDRAMやNAND型フラッシュメモリ、AI向け高帯域幅メモリ(HBM)分野でリーダーシップを維持・強化する戦略をとっている。台湾は先端ロジック分野のファウンドリ投資を継続し、AIや高性能コンピューティング(HPC)向けの先端プロセス受託生産を拡大すると予測されている。

統計データから見る半導体市場の現状と将来展望

世界半導体市場統計(WSTS)などの予測によると、2026年の半導体市場はAIサーバー、EV、自動運転、産業オートメーションといった成長領域が市場を牽引すると見られている。2025年の世界半導体売上は7,722億ドルに達し、市場を牽引するのはアジア太平洋地域が約55%、米国が約33%を占めると予測されている。中国は輸出規制に直面しつつも、国内自給率向上とAI分野への巨額投資を背景に成長が見込まれており、中国国内で生産されるICの市場シェアは2021年の16.7%から2026年には21.2%に拡大すると予想されている。韓国はメモリ分野でその優位性を維持・強化し、台湾は先端ロジックのファウンドリ投資を継続することで、AI・HPC向け先端プロセスの受託生産を拡大すると予測されており、各国・地域がそれぞれの強みを活かした戦略的投資を進めている。

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Reference / エビデンス

  • 米国がAIチップの対中輸出を再開 米中は「管理された相互依存」に - EE Times Japan 2026年3月5日の報道によると、米国政府は2026年1月15日から、NVIDIAのH200やAMDのMI325Xなど一部のAIチップの対中輸出ライセンス方針を「原則不許可」から「個別審査」に移行した。これにより、中国向けAIチップ輸出が条件付きで再開されたが、25%の関税や中国側の国産チップ購入義務などの厳格な管理が伴う。「管理された相互依存」の動きと見られている。NVIDIAの最先端チップ「Blackwell」は引き続き中国市場から締め出される。
  • トランプ米政権、エヌビディア製半導体「H200」などの対中輸出管理を緩和(中国、米国) - ジェトロ 米国商務省産業安全保障局(BIS)は2026年1月13日、NVIDIA製半導体「H200」やAMD製半導体「MI325X」など特定の米国製半導体の中国・マカオへの輸出管理を緩和する最終規則を発表し、1月15日に発効した。この措置は、トランプ大統領の2025年12月8日の発表に基づくもので、H200などの輸出許可申請の審査方針を「原則不許可」から「個別審査」に変更する。ただし、製品が米国内で一般に流通していること、米国内の供給を減らさないこと、中国向け総出荷量が米国顧客への総出荷量の50%を超えないこと、中国顧客が不正アクセス防止措置を講じていることなどが条件となる。
  • 中国が日本向けデュアルユース材料の輸出禁止と日本産ジクロロシラン輸入調査へ 中国商務部は2026年1月6日、「日本向けデュアルユース品目の輸出管理強化に関する告示」を発表し、日本の軍事ユーザー、軍事目的、および日本の軍事力強化に資する最終用途へのあらゆるデュアルユース品目の輸出を禁止した。翌1月7日には、日本産の輸入ジクロロシランに対する反ダンピング調査を開始した。これらの措置は、日本の高市首相の台湾有事に関する発言への対抗措置とされている。
  • 米議会、対中半導体装置規制を日本含む同盟国に拡大へ-超党派法案 - Yahoo!ファイナンス 2026年4月2日、米下院の超党派議員は、半導体製造装置の対中輸出規制を強化する法案を提出した。この法案は、オランダのASMLや東京エレクトロンなどの企業による半導体製造装置の販売に関する既存の規制を強化し、日本やオランダなどの同盟国にも米国企業と同等の厳格な規制(中国の特定施設での装置保守・修理の禁止など)を課すことを目指している。
  • 対中規制強化へ超党派法案=半導体装置、日欧企業影響も―米下院 | 防災・危機管理ニュース 2026年4月2日、米下院で人工知能(AI)半導体製造に必要な装置や部品の対中輸出規制を強化する超党派法案が提出された。この法案は、半導体製造装置で強みを持つ日本やオランダなどの同盟国に規制強化での連携を促す内容を含み、成立すれば日本企業に影響を及ぼす可能性がある。中国の半導体関連技術・性能向上を阻止することが狙い。
  • 【産業動向】日本の半導体政策、先進・成熟とも強化の二重戦略軸に 台湾要人が指摘 - Semicon.TODAY 2026年3月26日の報道によると、台湾の童振源・駐シンガポール代表は、日本政府の半導体政策が、コロナ禍での短期的補助から制度化された長期支援へ移行し、先進ロジックと成熟プロセスを並行して強化する「二軸戦略」が軸になりつつあるとの見方を示した。
  • 【2026年】半導体市場の動向予測!世界や日本のシェア率、取り組みはどうなるのか? - Aconnect 2026年の半導体市場は、AIサーバー、EV、自動運転、産業オートメーションなどの成長領域と、各国の政策や地政学リスクが影響を与える。WSTSの予測では、2025年の世界半導体売上は7,722億ドルに達し、アジア太平洋地域が約55%、米国が約33%を占め市場を牽引する。中国は輸出規制を受けつつも国内自給率向上とAI分野への巨額投資を拡大し、韓国はDRAM・NANDおよびAI向けHBMでリーダーシップを維持・強化、台湾は先端ロジックのファウンドリ投資を継続し、AI・HPC向け先端プロセスの受託生産を拡大すると予測されている。中国国内で生産されるICの市場シェアは2021年の16.7%から2026年には21.2%に拡大すると予想されている。