グローバルサウス投資の岐路:中東情勢と資源戦略転換がもたらす市場変動とリスク
中東情勢緊迫化がグローバルサウスの投資環境に与える即時的影響
2026年3月、中東情勢の緊迫化が世界のエネルギー市場とサプライチェーンに深刻な影響を与え、グローバルサウスの投資環境に即時的な変動をもたらしています。米国とイスラエルによるイラン攻撃後のホルムズ海峡の事実上の封鎖リスクにより、原油価格は急騰し、世界的なインフレ懸念と景気減速懸念が強まり、新興国株式市場は月間で下落しました。中東での紛争激化、それに伴う石油・ガス価格の上昇、プライベートクレジットファンドへの警戒感などにより、主要な株式指数はすべての国で下落基調となりました。
こうした状況を受け、2026年3月6日には世界最大のコンテナ海運会社がインドおよび湾岸諸国からアフリカ諸国への貨物に対し、コンテナ1個あたり最大4,000ドルの「戦争リスク割増料金」を適用すると発表しました。中東紛争の激化は燃料と肥料の価格を高騰させ、世界の農家は損失リスクに直面しています。また、アルミニウム価格は2024年9月以来最大の週間上昇率を記録する見込みです。
国内経済への影響も顕在化しており、2026年3月の景気DIは前月比1.4ポイント減の42.9となり、2カ月ぶりに悪化しました。この大幅な下落は、中東情勢の緊迫化を受けた原油価格の高騰と燃料価格の上昇、および先行き不安が背景にあり、2年6カ月ぶりにすべての規模・業界・地域で悪化が確認されています。原油・LNG価格の急騰は、日本のエネルギーコストを直撃し、貿易立国としての脆弱性を改めて露呈させています。
グローバルサウスにおける資源戦略の多様化と投資機会
グローバルサウス諸国は、持続可能な発展を目指し、その資源戦略を多様化させています。例えば、2026年3月4日付のレポートによると、パキスタンはグリーンエネルギー政策への転換を進めています。同国は2030年までに全発電量の60%を再生可能エネルギーで賄うという野心的な目標を掲げ、風力、太陽光、小水力、バイオマスといった代替エネルギー源の促進を開始しており、特に屋根設置型太陽光発電が急速に普及しています。このような政策転換は、再生可能エネルギー分野で新たな投資機会を創出する一方で、既存の化石燃料関連投資には影響を与える可能性があります。
また、グローバルサウス諸国は国際連携においても自律性を高める動きを見せています。2026年1月6日、インドネシアは東南アジア初のBRICS加盟国となりました。これは前政権が見送っていた加盟方針を新政権が方向転換したものであり、インドネシアはBRICSの新開発銀行(NDB)に10億米ドルを拠出することも決定しています。こうした動きは、経済連携を多様化し、資源ガバナンスにおいて国際的な影響力を強化しようとするグローバルサウス諸国の傾向を示しています。
重要鉱物サプライチェーンの強靭化と地政学的リスク
先進国は、重要鉱物サプライチェーンの強靭化を急務としています。2026年2月4日には、ワシントンD.C.で開催された重要鉱物閣僚会合において、EU、米国、日本が重要鉱物サプライチェーンの強靭性を共同で強化することで合意しました。この合意に基づき、採掘、精製、加工、リサイクル分野のプロジェクト特定・支援を通じて、供給源の多様化を図る意向が表明されています。
重要鉱物の戦略的価値は高まっており、特に軍事転用可能な希少金属の安定供給が地政学的に重視されています。例えば、米国の国防権限法に基づき、2027年以降、米国防総省と契約する防衛産業企業は、中国、ロシア、イランなどで採掘・精錬されたタングステンを使用できなくなります。これにより、同盟国で製造されたタングステンの価値が高まり、希少金属が産業資材から防衛資材へと性格を変えつつあることが示されています。
このような先進国による重要鉱物確保の動きは、グローバルサウスにおける鉱物資源開発への投資を誘致する可能性がある一方で、「緑の植民地主義」といった批判につながる可能性も指摘されています。資源保有国と消費国の間の力学の変化は、地政学的リスクをはらみながら、グローバルサウスの投資環境に新たな側面をもたらしています。
2026年3月の新興国市場動向と今後の展望
2026年3月の新興国株式市場は、中東情勢の緊迫化、原油価格高騰、および米国の利下げ観測の後退など複合的な要因により、下落基調で推移しました。中東での紛争激化に伴う石油・ガス価格の上昇は、多くの新興国にとって経済的重荷となり、投資家心理を冷え込ませる要因となりました。
しかし、中長期的な視点では、新興国経済には複数の「追い風」が存在します。IMFが2026年1月に発表した最新の世界経済見通しでは、2026年の世界の経済成長率見通しが上方修正され、新興国は相対的に高い成長率(2026年+4.2%)を維持する見込みです。また、多くの新興国の中央銀行が継続的に利下げを実施しており、これは国内経済を刺激し、株式市場の好パフォーマンスを支える背景となっています。
具体的な「5つの追い風」としては、「AI市場の拡大」「資源高」「中南米地域の政治改革」「米ドル売り、米国利下げ観測」「株価の割安感」が挙げられます。これらの要因は、2025年12月末から現在までの期間において、韓国、ペルー、タイなどの株価指数が日本や米国と比べて大きく上昇していることにも寄与しています。地域情勢アナリストは、これらの多面的な要因を総合的に評価し、短期的な地政学的リスクと中長期的な成長機会の両方を考慮した上で、グローバルサウスへの投資判断を行う必要があるでしょう。
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- 2026年3月の新興国株式市場 - ピクテ・ジャパン 2026年3月の新興国株式市場は、米国とイスラエルによるイラン攻撃を受けたホルムズ海峡の事実上の封鎖により原油価格が急騰し、世界的なインフレや景気減速懸念から月間で下落しました。
- 2026年3月6日の世界経済ニュースのハイライト - Vietnam.vn 2026年3月6日、世界最大のコンテナ海運会社がインドと湾岸諸国からアフリカ諸国への貨物に対し、コンテナ1個あたり最大4,000ドルの「戦争リスク割増料金」を適用すると発表しました。中東紛争の激化により燃料と肥料の価格が高騰し、世界の農家が損失リスクに直面しています。また、アルミニウム価格は2024年9月以来最大の週間上昇率となる見込みです。
- 先月のマーケットの振り返り(2026年3月) | 三井住友DSアセットマネジメント 2026年3月の主要な株式指数は、中東での紛争激化、それに伴う石油・ガス価格の上昇、プライベートクレジットファンドへの警戒感などにより、すべての国で下落しました。これにより長期金利が上昇し、金融環境が引き締まり、政策金利引き上げ観測が浮上しました。
- 2026年3月の景気動向調査 - 帝国データバンク 2026年3月の景気DIは前月比1.4ポイント減の42.9となり、2カ月ぶりに悪化しました。国内景気は、中東情勢の緊迫化を受けた原油価格の高騰と燃料価格の上昇、先行き不安から大幅に下落し、2年6カ月ぶりにすべての規模・業界・地域で悪化しました。
- 2026年3月|国際情勢レポート - いい政治ドットコム 2026年3月、中東情勢の激震(イラン最高指導者ハメネイ師殺害、ホルムズ海峡の事実上の封鎖)により、原油・LNG価格が急騰し、日本のエネルギーコストを直撃しました。これにより、日本の貿易立国としての脆弱性が改めて露呈し、エネルギー・物資の国内備蓄増強と多ルート調達体制の構築が安全保障政策の最重要課題となっています。
- 今月のチャート - 情勢次第で下振れと急反発のいずれの可能性もある 2026年2月末の米国およびイスラエルによるイラン攻撃後、ホルムズ海峡が事実上封鎖されるリスクを背景に原油価格が急騰し、情勢収束の目処は立っていません。
- For the first time in approximately four years, the government has begun releasing its oil reserv... - YouTube 日本政府は、イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖を受けてタンカーの到着が減少したため、2026年3月26日から約4年ぶりに国家石油備蓄の放出を開始しました。これは物流や産業を止めないための一時的な措置であり、ガソリン価格の値下がりには繋がらないとされています。高市総理は、エネルギー安定供給確保のため、資源外交や供給源の多角化に取り組むと強調しました。
- The widening impact of the blockade of the Strait of Hormuz: The government will begin releasing ... 2026年3月24日、政府はホルムズ海峡の事実上の封鎖の影響拡大を受け、3月26日から国家石油備蓄の放出を開始すると発表しました。これは経済活動への影響を最小限に抑えるための措置です。
- グリーンエネルギーにかじを切るパキスタンのエネルギー政策 | 地域・分析レポート - ジェトロ 2026年3月4日付の地域・分析レポートによると、パキスタンはグリーンエネルギー政策に転換しており、2030年までに全発電量の60%を再生可能エネルギーで賄うという野心的な目標を掲げています。風力、太陽光、小水力、バイオマスなどの代替エネルギー源の促進を開始し、特に屋根設置型太陽光発電が急速に普及しています。
- 2025年インドネシアの十大ニュース(アジ研・インドネシアグループ) - アジア経済研究所 - ide-jetro 2026年1月6日、インドネシアはBRICSに正式加盟し、東南アジア初の加盟国となりました。これはジョコウィ前政権が見送っていたBRICS加盟をプラボウォ新政権が方向転換したもので、12月1日にはBRICSの新開発銀行(NDB)に10億米ドルを拠出することが発表されました。
- 欧州委、米国政府、日本政府が重要鉱物に関する共同プレス声明を発表 - CRDS 2026年2月4日、ワシントンD.C.で開催された重要鉱物閣僚会合において、EU、米国、日本は重要鉱物サプライチェーンの強靭性を共同で強化することで合意しました。今後30日以内にEUと米国間で覚書を締結し、採掘、精製、加工、リサイクル分野のプロジェクト特定・支援を通じて供給源の多様化を図る意向が表明されました。
- 深海鉱物資源開発で協力覚書 日米首脳会談 重要鉱物など協力強化で一致 サプライチェーン強靱化で行動計画も - 環境新聞 2026年3月19日、高市早苗首相とトランプ米大統領は日米首脳会談で、エネルギー安定供給の確保や重要鉱物、AIを含む先端技術など経済安全保障分野の協力を一層強化することで一致しました。南鳥島周辺海域のレアアース泥を含む深海鉱物資源開発に関する協力覚書やサプライチェーン強靭化の日米行動計画が取りまとめられ、両国は輸出規制を含め重要鉱物などの安定供給を脅かすあらゆる措置に反対することを確認しました。
- 韓国で採掘する「世界最高」のタングステン、利益は米国へ…鉱山売却が終わりではない 米国の国防権限法に基づき、2027年以降、米国防総省と契約するすべての防衛産業企業は、中国、ロシア、イランなどで採掘・精錬されたタングステンを使用できなくなります。これにより、同盟国である韓国で製造されたタングステンの価値が高まり、希少金属が産業資材から防衛資材へと性格を変えつつあることが示されています。
- 【鉱物資源ウェビナー】脱炭素の名の下に進むリチウム開発の負の実態~アルゼンチンでは今 2026年4月2日に開催されるウェビナーでは、グローバルノースの国々がグローバルサウスの資源を略奪する「緑の植民地主義(グリーンコロニアリズム)」という構造が議論されます。特にアルゼンチンでのリチウム開発現場で起きている環境・社会・人権問題に焦点が当てられます。
- 利下げを追い風に好パフォーマンスを上げる新興国 - 東証マネ部! IMFは2026年1月に発表した最新の世界経済見通しで、2026年の世界の経済成長率見通しを前年比+3.3%に上方修正し、新興国が相対的に高い成長率(2026年+4.2%)を維持する見込みです。多くの新興国の中央銀行が継続的に利下げを実施しており、2026年も継続的な利下げが見込まれることが新興国株の好パフォーマンスの背景となっています。
- 株式ストラテジスト大川智宏さんが解説 「新興国株には5つの追い風が吹いている」 - 野村證券 新興国株には「AI市場の拡大」「資源高」「中南米地域の政治改革」「米ドル売り、米国利下げ観測」「株価の割安感」という5つの追い風が吹いていると指摘されています。2025年12月末から2026年3月11日までの期間で、韓国、ペルー、タイなどの株価指数は日本や米国と比べて大きく上昇しています。
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