グローバルサウスの重要鉱物争奪と国家戦略:供給網再編の最新動向
高まる重要鉱物資源の戦略的価値:国連と米国の最新動向
2026年3月5日、国連は重要鉱物資源を巡る国際競争における公平性を呼びかけ、安全保障理事会で「エネルギー、重要鉱物、安全保障」について議論しました。これに先立つ3月4日に報道された情報によると、米国は2026年2月4日に「2026年重要鉱物閣僚会合」を主催し、重要鉱物およびレアアースの世界市場を再構築する方針を打ち出しています。これらの動きは、電気自動車や再生可能エネルギー技術の普及に伴う需要の急増が、グローバルサウス地域における重要鉱物資源の権益争奪と国家間の戦略的連携を激化させている現状を浮き彫りにしています。
グローバルサウスの潜在力と公平な資源開発への国際的要請
国連貿易開発会議(UNCTAD)は、重要鉱物資源の需要急増が地政学および産業構造を再編し、資源豊富な途上国が新たなバリューチェーンの中心になりつつあると指摘しています。UNCTADは、これらの国々が未加工の鉱物輸出から現地での加工・付加価値化へと移行することで、経済的利益を大幅に増やせる可能性を示しており、コンゴ民主共和国のコバルト加工が2022年に輸出額を約3倍の60億ドルに増加させた事例を具体例として挙げています。また、国連は2025年6月に「エネルギー転換重要鉱物に関する行動指針」を発表し、人権、環境保護、公平な開発を推進する措置を提案しています。国際エネルギー機関(IEA)の報告によると、2024年にはリチウム需要が約30%増加したほか、ニッケル、コバルト、グラファイト、レアアースも6〜8%増加しており、これらの資源がエネルギー転換の鍵を握る重要性を強調しています。
米国主導のサプライチェーン強靭化戦略と多国間協力の推進
米国は2026年2月4日に「2026年重要鉱物閣僚会合」を開催し、54カ国および欧州委員会の代表を招集しました。この会合は、AI、ロボティクス、電池、自律装置の発展に伴い重要性を増す重要鉱物およびレアアースの世界市場が高度に集中しており、政治的強制やサプライチェーンの混乱の手段となり得るという認識に基づき、世界市場を再構築する目的で行われました。米国はこの会合において、アルゼンチン、クック諸島、エクアドルを含む11カ国と二国間重要鉱物枠組みまたは覚書(MOU)を締結し、価格課題への対応、公正な市場形成、優先供給網のギャップ是正、資金調達拡大の基盤を整備しました。さらに、鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)の後継として「資源の戦略地政学的関与に関するフォーラム(FORGE)」の創設を発表し、政策・事業両面での連携強化を図る方針を示しています。米国政府は、政府のみでは課題解決が困難との認識から、民間部門との緊密なパートナーシップにコミットし、採掘、精錬・加工、最終用途、リサイクル・再処理に至る各段階への投資を主導する方針です。
日本と欧州の重要鉱物確保に向けた戦略的アプローチ
2026年2月4日の重要鉱物閣僚会合においては、欧州連合(EU)、米国、日本が共同プレス声明を発表し、重要鉱物サプライチェーンの強靭性を共同で強化することで経済安全保障および国家安全保障を高めるための重要な措置を講じていることを表明しました。三者は、既存の国際協力とイニシアチブを基盤として、重要鉱物の貿易に関する行動計画を策定し、志を同じくするパートナーとの複数国間の貿易イニシアチブの可能性を検討する意向を示しています。これには、国境で調整される価格フロア、基準に基づく市場、値差に係る補助金、オフテイク協定など、協調的な貿易政策および制度的枠組みの構築可能性の検討が含まれ得ます。また、EUと米国は、今後30日以内に重要鉱物サプライチェーンの安全保障を強化する目的の覚書を締結することにコミットし、採掘、精製、加工、リサイクル分野のプロジェクト特定・支援、サプライチェーン混乱防止措置、研究・イノベーション促進、備蓄に関する情報交換の円滑化について協議を進める方針です。
グローバルサウスにおける権益争奪の背景と産業アナリストへの示唆
グローバルサウスにおける重要鉱物資源の権益争奪が激化する背景には、エネルギー転換と技術ブームによる前例のない需要増大があります。国際エネルギー機関(IEA)のデータもその傾向を裏付けています。また、鉱物枯渇、資源独占、地政学、ESGといった主要な供給リスクも顕在化しています。リチウムの主要埋蔵量が南米に、コバルトの多くがコンゴ民主共和国に、ニッケル生産がインドネシアに集中しているなど、特定の地域への重要鉱物の集中は、資源分布の不均衡と市場の変動性をもたらしています。サプライチェーン確保のため、米国や中国を含む多くの国が南米やアフリカでインフラおよびエネルギープロジェクトに資金を提供しています。中国政府は、2023年のガリウム、ゲルマニウム、黒鉛への措置を皮切りに、近年各種の重要鉱物資源に関する輸出管理を強化しており、2025年4月にはレアアース7種に対する輸出管理措置を実施し、2026年1月には日本に対する規制も行いました。これに対し、米国政府は2026年2月に「Project Vault」計画を発表し、民間資本を含む120億ドルを投じてレアアースやコバルト、ガリウムといった重要鉱物の備蓄を進める方針です。また、2026年1月には商務省がレアアース鉱山開発企業に約16億ドルの投資を決定しています。産業アナリストは、これらの複雑な地政学的動向と、サプライチェーンの多様化および強靭化に向けた各国の戦略を注視する必要があるでしょう。
[ Advertisement ]Reference / エビデンス
- UN calls for fair play in the global race for critical minerals | UN News 2026年3月5日、国連は重要鉱物資源を巡る国際競争における公平性を呼びかけ、安全保障理事会で「エネルギー、重要鉱物、安全保障」について議論しました。国連貿易開発会議(UNCTAD)は、重要鉱物の需要急増が地政学・産業構造を再編し、資源豊富な途上国が新たなバリューチェーンの中心になっていると指摘。これらの国々が現地加工・付加価値化を通じて経済的利益を大幅に増やせる可能性があり、コンゴ民主共和国のコバルト加工が2022年に輸出額を約3倍の60億ドルに増加させた事例を挙げています。また、国連は2025年6月に「エネルギー転換重要鉱物に関する行動指針」を発表し、人権、環境保護、公平な開発を推進する措置を提案しています。国際エネルギー機関(IEA)によると、2024年にはリチウム需要が約30%増加し、ニッケル、コバルト、グラファイト、レアアースも6-8%増加しました。
- 米国、重要鉱物市場再構築へ「2026年重要鉱物閣僚会合」を開催 - CRDS 2026年3月4日、米国務省の発表を抄訳した記事によると、米国は2026年2月4日に「2026年重要鉱物閣僚会合」を主催し、54カ国および欧州委員会の代表を招集して、重要鉱物およびレアアースの世界市場を再構築する方針を打ち出しました。米国は同日、アルゼンチン、クック諸島、エクアドルなど11カ国と二国間重要鉱物枠組みまたは覚書(MOU)を締結し、価格課題への対応、公正な市場形成、優先供給網のギャップ是正、資金調達拡大の基盤を整備しました。また、鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)の後継として「資源の戦略地政学的関与に関するフォーラム(FORGE)」の創設を発表し、政策・事業両面での連携強化を図るとしています。政府のみでは課題解決が困難との認識から、民間部門との緊密なパートナーシップにコミットし、採掘、精錬・加工、最終用途、リサイクル・再処理に至る各段階への投資を主導する方針です。
- 2026 Critical Minerals Ministerial - United States Department of State 2026年2月4日、米国は「2026年重要鉱物閣僚会合」を開催し、54カ国および欧州委員会の代表が参加しました。米国は、AI、ロボティクス、電池、自律装置の発展に伴い重要性が増す重要鉱物およびレアアースの世界市場が高度に集中しており、政治的強制やサプライチェーンの混乱の手段となり得るという認識を示しました。米国は、新たな供給源の構築、安全で信頼性の高い輸送・物流ネットワークの育成、そして安全で多様化され、強靭なエンドツーエンドのグローバル市場への変革を目指しています。会合では、米国は新たな二国間重要鉱物枠組みや覚書(MOU)に署名し、戦略的鉱物プロジェクトを支援するための米国政府の資金調達機会を発表しました。また、「資源の戦略地政学的関与に関するフォーラム(FORGE)」の立ち上げを祝いました。
- Critical Minerals Strategic Intelligence Report 2026: Energy Transition Acceleration Driving Unprecedented Demand - Opportunities in Lithium, Cobalt, Copper, Nickel, and REEs - GlobeNewswire 2026年3月12日に発表された「Strategic Intelligence: Critical Minerals」報告書は、世界のエネルギー転換と技術ブームがリチウム、コバルト、銅、ニッケル、レアアースなどの重要鉱物に対する前例のない需要を牽引していると指摘しています。報告書は、鉱物枯渇、資源独占、地政学、ESGといった主要な供給リスクを挙げています。サプライチェーンを確保するため、米国や中国を含む多くの国が南米やアフリカでインフラおよびエネルギープロジェクトに資金を提供しています。また、世界の主要なリチウム埋蔵量が南米に、コバルトの多くがコンゴ民主共和国(DRC)に、ニッケル生産がインドネシアに集中しているなど、特定の地域への重要鉱物の集中が資源分布の不均衡と市場の変動性をもたらしていると述べています。
- 「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」を発出しました - 財務省 2026年3月18日、日本と米国は、重要鉱物サプライチェーンの強靭性を確保するため、「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」を策定しました。この計画は、非市場的政策や慣行によって生じる歪み、特に経済的威圧を含むサプライチェーンの脆弱性に対処することを目的としています。両国は、選定された重要鉱物に焦点を当て、国境調整される価格フロアやその他の措置といった協調的な貿易政策およびメカニズムの実現可能性と策定について議論を進めるとしています。
- 深海鉱物資源開発で協力覚書 日米首脳会談 重要鉱物など協力強化で一致 サプライチェーン強靱化で行動計画も - 環境新聞 2026年3月19日の日米首脳会談において、高市早苗首相とトランプ米大統領は、脱炭素社会の構築に必要な重要鉱物に関する協力を一層強化することで一致しました。両首脳は、南鳥島周辺海域のレアアース泥を含む深海鉱物資源開発に関する協力覚書や、サプライチェーン強靭化の日米行動計画などの文書を取りまとめたことを歓迎しました。また、輸出規制を含む重要鉱物などの安定供給を脅かすあらゆる措置に反対することも確認しました。
- 日仏鉱物サプライチェーン合意、輸送再編へ - LOGISTICS TODAY 2026年4月1日、高市早苗首相とエマニュエル・マクロン仏大統領は首脳会談で、レアアース(希土類)の共同調達を軸とする「日仏重要鉱物協力ロードマップ(行程表)」の策定で合意しました。共同声明では、中国を念頭に「重要鉱物に対する輸出規制は重大な悪影響を及ぼす可能性がある」との懸念が明記されました。この合意は、3月20日の日米首脳会談に続くもので、2週間で米仏との間で鉱物の調達先を政府間で確定させた形となります。
- 欧州委、米国政府、日本政府が重要鉱物に関する共同プレス声明を発表 - CRDS 2026年2月4日にワシントンD.C.で開催された重要鉱物閣僚会合において、EU、米国、日本は共同プレス声明を発表し、重要鉱物サプライチェーンの強靭性を共同で強化することで経済安全保障および国家安全保障を高めるための重要な措置を講じていることを表明しました。三者は、今後30日以内にEUと米国間の重要鉱物サプライチェーンの安全保障を強化する目的の覚書を締結することにコミットし、採掘、精製、加工、リサイクル分野のプロジェクト特定・支援、サプライチェーン混乱防止措置、研究・イノベーション促進、備蓄に関する情報交換の円滑化について協議するとしています。また、既存の国際協力とイニシアチブを基盤として、重要鉱物の貿易に関する行動計画を策定し、志を同じくするパートナーとの複数国間の貿易イニシアチブの可能性を検討する意向を示しました。これには、国境で調整される価格フロア、基準に基づく市場、値差に係る補助金、オフテイク協定など、協調的な貿易政策および制度的枠組みの構築可能性の検討が含まれ得ます。
- 中国によるレアアースの輸出規制 -各国の対応と今後の視座-(2026年4月) - PwC 中国政府は、2023年のガリウム、ゲルマニウム、黒鉛への措置を皮切りに、近年各種の重要鉱物資源に関する輸出管理を強化しています。2025年4月には、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムのレアアース7種に対する輸出管理措置が実施され、これらを含む合金やレアアースを用いた製品も対象となっています。2026年1月には日本に対する規制も行われました。米国政府は、2026年2月にレアアースやコバルト、ガリウムといった重要鉱物の備蓄のため、民間資本20億ドルを含む120億ドルを投入する計画「Project Vault」を発表しました。また、2026年1月には商務省がレアアース鉱山開発企業に約16億ドルの投資を決定しています。
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